第23話 推しの配信探索者がチームを組んでダンジョンに挑むようです 前編


「皆さんおはこんばんにちわ! 初めましての人は初めまして、配信探索者の真神英夢です」


 真神は何時ものジャージに黄金のガントレットとブーツ姿で配信の挨拶をする。


「今回俺はギルドからの要請で、長野県にあるダンジョンに来ています。事前の調査でここのダンジョンボスが超大型モンスターのダオロンだとわかったそうです」

『ダオロン!?』

『まじかよっ!?』

『名前検索したら、海外の都市を壊滅させたとかでてきたんだけど?』


 真神が今何処で何をしているかを報告すると、コメント欄がざわめく。


 ダオロンとは何か私も調べると、今から八年前に海外でスタンピードが発生し、ダオロンと言う超巨大な蛇のモンスターが暴れて地方都市を壊滅させたネットニュースが出てきた。


(なにこれ! 怪獣じゃないっ!!)


 ネットニュースのサイトにはダオロンの写真もあったが、高層ビルに巻き付く針ネズミのような無数の棘の生えた赤黒い鱗の蛇が写真に写っていた。 


 それが日本の長野県のダンジョンボスとして生息していることに恐怖を覚える。


「流石にソロでは倒せないので、今回助っ人をよびました!」

「レディースアーンドッ、ジェントルメェェーン! マイバンブーホースフレンドまがみんに頼まれてやってきた! 我輩がDr.ライフ三世であーる! えっへん!」

『濃いなー………』

『芸人?』


 真神が助っ人を呼んだと伝えた瞬間、ドローンカメラを掴んでピンクのアフロヘアーにデスメタルメイクの男性がドアップで自己紹介を始める。


「団ケツ力が売りの豪傑達が集まる探索者カンパニー【傑の穴】、世紀末裸者! 裸王!」

「同じく傑の穴メンバー! 心に七つの傷を持つ男、北東野健次郎!」


 続いてカメラに映ったのは最後の良心と刺繍されたビキニパンツだけの筋骨粒々のゴリマッチョ裸王と、パンチパーマにゲジゲジ眉毛、アサルトライフルを肩に担いだ健次郎が自己紹介を始める。


「クククク…………我が名は漆黒の堕天使、ネクロ」


 最後に骸骨の仮面にゴシックロリータ風のコートに色白の化粧をした性別不明の人物が中二病患者が喜びそうなポーズを取りながら機械で変声した声で喋る。


「こら、花子! ちゃんと自己紹介する時は仮面を脱いではっきり喋りなさいって何時も言ってるだろ!」

「あ、やめて! 仮面取らないで! あと僕のソウルネームはネクロなのっ! 花子ってシワシワネームじゃない!」


 ネクロが自己紹介すると、裸王がネクロの仮面を剥がそうとし、ネクロが必死に抵抗する。


『………あれ? 俺芸人さんの動画再生したっけ?』

『ダンジョン探索者の配信再生したら漫才が始まってた』


「かっ、かえせーっ! 僕の仮面返せーっ!!」

『めっちゃかわいい!!』

『素顔もそうだけど、声がすごいロリボイス!!』

『やべえ、リアル僕っ娘とかファンになりそう』


 裸王に仮面を剥がされたネクロの素顔はかわいい系アイドルをやれそうな外見だった。

 声もロリ系のアニメキャラが似合いそうな声でコメント欄ではネクロのファンが誕生していた。


「この五人でダンジョンに挑戦したいと思います。おーい、お前らダンジョンにはいるぞー」

『おい、真神のやつ普通に配信進めてるぞ!』

『多分これがこのメンバーの日常なんだろうなあ……』


 真神は裸王とネクロのじゃれあいを止めることなく声だけかけてダンジョンに突入すると、残りのメンバーも続いてダンジョンにはいる。


 ダンジョンは木々が鬱蒼と生い茂った森に囲まれたフィールドタイプのダンジョンだった。


「まずはネクロの兵と材料を集めたいから、雑魚を倒していくぞ」

「うむ、まかせるのであーる!」

「腕がなるな」

「ま、準備運動にはなるな」

「我が深淵の力に呑まれろ」

『あ、ネクロちゃんはそう言うキャラ付けね』

『仮面はずすと素が出るとかわかってるねー』


 ダンジョンに入った真神は各自に指示を出す。

 コメント欄ではネクロのファンになったと思われる視聴者達が盛り上がっていた。


「オークの群れを発見であーる!」


 ダンジョン内を探索していた真神達は灰色の肌に潰れた鼻に猪のような犬歯、豚のような顔立ちの筋骨粒々の人型モンスター、オークの集団を見つける。


「先手必勝であーる! ファイヤーボール!!」


 Dr.ライフはアフロからグリモアを取り出すと画面をスワイプするような操作をする。

 すると、グリモアの液晶画面から魔方陣が浮かび上がり、その魔方陣から炎の玉がオークに向かって吐き出され、着弾と共に大爆発を起こす。


『このDr.ライフと言う人、見た目は奇抜だけど、魔法の発動タイムが早い!』

『うちのメンバーでも発動にもう数十秒かかる。かなりいい魔法系のスキルシャード使ってるな』


 Dr.ライフの魔法をみて、コメント欄では考察が始まる。


「ブモオオオ!!」

「サイドチェストガード!!」


 Dr.ライフの魔法を生き延びたオーク達が両手斧を掲げて襲いかかってくる。

 オーク達に立ち塞がるように仁王立ちした裸王はいきなりボディビルポーズをとり、オークの攻撃を体で受け止めて筋肉で押し返す。


『は?』

『へ?(宇宙猫)』

『まって、オートガード発動してないのに跳ね返した?』

『え? 裸王さんはあの格好でまさかタンカー役?』


 オークの攻撃を筋肉だけで跳ね返すのをみてコメント欄では視聴者達の戸惑いの声が漏れる。


「仕留める」


 健次郎がアサルトライフルを構えると、銃口の先端に魔方陣が浮かび上がり、光弾が射出されてオーク達を撃ち抜く。


『グリモアガン!?』

『え、何それ?』

『しっているのかっ!? テリー雷電!!』

『いや、テリー雷電って誰だよ! グリモアガンと言うのは、グリモアをより攻撃に特化した最新兵器。オートガードの出力は堕ちるが、ライフが放った魔法みたいなのを凝縮して銃弾としてうちだす』


 視聴者の中に健次郎の武器の正体を知っている人がいて解説する。


『見た目は色物だけど、実力はあるな』

『類は友を呼ぶとはこの事だな』

『ワロタ』


 コメント欄でそんな話をしている間に戦闘は終了し、真神達はオークの死骸から魔石を回収する。


「ネクロ、頼んだ」

「深遠なる闇よ、我が呼び声に答えて僕となれ」


 真神は回収した魔石をネクロに投げ渡すと、ネクロは魔石を掲げながら呪文を唱える。

 すると、魔石が黒い廃液のように溶けて地面に滴り堕ちると、廃液の水溜まりからオークの骨格をしたスケルトンが這い出てくる。


『は?』

『なにそれ?』

『テリー雷電、あれは何か知ってる?』

『だから誰だよ! 多分レガシーアイテムじゃないかな? 魔石からモンスター呼び出すレガシーアイテムがあった記憶がある』


 ネクロが魔石から呼び出したオークのスケルトンを見て視聴者達は混乱している。


「次からは深淵の力の一部を見せよう」

「花子はスケルトンがないと何も出来ないからなあ」

「花子って言うな! 僕のソウルネームはネクロだ!」

「わかった、花子」

「ムキーッ!!」


 ネクロは兄である裸王に本名を呼ばれてソウルネームで呼べと抗議するが、聞く耳持たない裸王にたいして両手を振り回して駄々っ子パンチを繰り出すが、逆に裸王の筋肉の鎧で手を痛めてる。


「ダオロンとやりあうにはまだ足りない。もう少しモンスターを狩るぞ」


 真神が手を叩いて自分に注目させると狩りの再開を指示する。


「またオークか」

「闇よ、食らいつけ!」


 真神がまたオークの集団を見つけると、ネクロがオークの集団に指を向ける。

 すると、オークのスケルトン達が一子乱れず隊列を組んでオークに戦いを挑む。


『このネクロって探索者、真神とは違う方向でヤバい』

『モンスターを倒せば倒すほど味方が増える』

『こんな探索者がいるなんて聞いたことないぞ』


 視聴者達が言うように、敵を倒せば倒すほどネクロのスケルトンが増えていく。


「しかし、この戦法は採算度外視しないといけないのがたまにきずであーる」

「俺達探索者の収入源である魔石を消費してスケルトンを呼び出すからな」


 次々と増えていくスケルトンを見てDr.ライフが感想を漏らす。

 Dr.ライフの独り言が聞こえていたのか、裸王がボージングしながら魔石を消費するデメリットを伝える。


「よし、ある程度スケルトンや魔石は集まった。そろそろダオロンに挑むぞ。作戦は───」


 真神は準備が整ったのか、メンバーにダオロン戦の作戦を話し始めた。


  


 


 

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