第20話 推しの配信探索者が草刈り依頼を配信するようです 前半
「画面の前の皆さんおはこんばんにちわ! 初めましての人は初めまして、配信探索者の真神英夢です!」
私が推してるダンジョン配信探索者の真神さんの新作動画がアップロードされたので、私は早速視聴する。
何時もの挨拶と何時ものジャージに黄金の小手と具足と言うミスマッチ姿の真神さんをみて私はまってましたとばかりに拍手をする。
「今回俺は探索者ギルドからの草刈り依頼で千葉県にある海ほたるダンジョンに来ています。あ、草刈りと言うのはダンジョン内のモンスターを間引きしてスタンピードを起こさせない行為の名称です」
真神は自分が今何処にいるのか視聴者達に伝え、今回の配信目的を解説する。
「この海ほたるの海岸ダンジョンは特殊なフィールドで、ゲート入り口である浜辺以外は全部海になっており、生息するモンスターも水棲モンスターがメインとなります」
(うわ、きれー………)
ドローンカメラを海辺に向けると、観光名所のようなエメラルドグリーンの水面が広がる水平線が映し出される。
モンスターがいなければ風光明媚な観光名所になりそうな場所だった。
「他にもギルドの依頼を受けたと思われる探索者がいますね、あそこにいるのは別の配信者かな?」
浜辺にカメラを戻すと、鎧兜で武装した探索者の集団があちらこちらに見受けられる。
中には配信者なのかドローンカメラやカメラマンが担いでるカメラに向かってパフォーマンスしている配信者もいた。
「このダンジョンに生息するモンスターは基本水棲モンスターなのでこちらから海に潜って水中戦を行うか、海岸を徘徊する水陸両用の生態をもつモンスターと戦うかです」
『水中は可能な限りお勧めしない、あいつら頭いいのか酸素ボンベとか狙ってくるし、水中は動きが阻害される』
『えげつないな』
『海岸も油断したら海に引きずり込まれる』
真神が海ほたるダンジョンに生息するモンスターを解説すると、コメント欄ても海ほたるでモンスターと戦ったことのある探索者アカウントがコメントを書き込んでいく。
「海岸周辺は他の探索者が多いので獲物の取り合いになりそうなので、海に潜ります」
『え、大丈夫?』
『ジャージ姿で海に入る気?』
真神が海に潜ると宣言すると、コメント欄がざわつく。
「ちゃんとその為の準備してきてます」
真神はポケットから青色のスキルシャードを取り出して、視聴者に見せつける。
「これは伝手から手に入れた水中呼吸と、水中で陸上のように動けるスキルシャードです。あ、水中では喋れないのでテロップで会話しますので御了承ください」
『今検索したけど市販されてなかった。あれ試作品か個人製作の非売品』
『たまに真神さんの人脈どうなってるのか聞きたくなる』
真神がグリモアに水中呼吸などのスキルシャードを組み込んでいる間、シャードの出所やそれを手に入れた真神の人脈に対する考察などが書き込まれていた。
「では行ってきますね」
『いや、ジャージ脱げよ』
『そこは水中でも譲らないのか?』
真神はジャージ姿のまま海に入っていき、視聴者達が次々と突っ込みを入れる。
ドローンカメラは防水仕様なのかそのまま真神に付いていって海中に潜っていく。
水中に潜った真神を例えるなら、チープな合成張り付け映像のように水中を文字通り歩いている。
『うっわ、透明度半端ない』
『モンスターがいなければ絶好のダイビングスポット』
『海外でもモンスターさえいなければと言われる絶景のダンジョンあるよね』
まるでスキューバダイビングのプロモーションビデオでも見ているような水中映像に私は言葉を失って魅入る。
「!!」
水中を歩く真神は何かに気づいたように指を指す。
ドローンカメラが真神の指差す方向にカメラを向けると、数匹の魚が真神に向かって来ていた。
バスケットボールサイズの魚で、深緑の鱗と全身に生えた無数のトゲが特徴的な魚だった
【スパイクフィッシュ。水棲モンスターで、全身のトゲで攻撃してくる。背骨は武器の素材になる】
テロップで襲ってきた魚型モンスターの正体を解説する。
真神はボクシングスタイルに身構えると、襲いかかってくるスパイクフィッシュをジャブで迎撃していく。
スパイクフィッシュも怯むことなく、全身のトゲを駆使して攻撃するが、黄金の小手と具足によって攻撃が弾かれて真神にダメージを与えられず、次々と返り討ちされていく。
スパイクフィッシュを倒した真神は死骸をグリモアに回収すると、ダンジョンの海のなかを進んでいく。
「っ!」
また何かに気づいたのか指差す方向には木造の沈没船があった。
『沈没船だ』
『お宝とかあるのかな?』
コメント欄が沈没船の発見に盛り上がる中、真神は沈没船に向かって進んでいく。
「っ!?」
真神が沈没船に向かっていると、沈没船にモンスターが住んでいたのか、船から次々とモンスターが現れる。
現れたのは槍を持った半人半魚の人型モンスター、全身をエメラルド色の鱗に覆われ、弾丸状の頭部には黒い目がギョロギョロとこちらを見ている。
それに追従するように青い皮膚のライオンの頭と前足、イルカの胴体をしたモンスターが威嚇するように牙を見せる。
【半魚人はクトーニア、ライオン頭はライオンフィッシュと言うモンスターです】
『ライオンフィッシュってまんまやん!』
『水棲モンスターにはこんなのもいるんだな』
クトーニアはライオンフィッシュに騎乗すると、ランスチャージを試み、ライオンフィッシュも前足の爪と口を大きくあけて噛みつこうとする。
真神は跳躍するように急浮上して二体の攻撃を回避する。
クトーニアとライオンフィッシュは真神を追いかけるように同じく浮上する。
真神はある程度浮上すると、今度はくるっと一回転して方向転換すると、急下降してクトーニアにラリアットで攻撃する。
真神の反撃にクトーニアは対応しきれず、首にラリアットを食らうとライオンフィッシュから落馬と言うか落魚と言えばいいのか、ライオンフィッシュから離れていく。
真神はそのままチョークスリーパーの形にもっていくと強引にクトーニアの首の骨を折る。
「っ!!」
クトーニアを倒したと同時にライオンフィッシュが体当たりしてきて、グリモアのオートガードが発動する。
ライオンフィッシュはそのまま前足の爪で引っ掻こうとするが、真神はその前足を掴みヘッドバットでライオンフィッシュの鼻っ柱を折る。
痛みに悶えるライオンフィッシュの鬣を掴むと真神は拳をライオンフィッシュの眼球にネジ込み、肘近くまで腕を押し込むとライオンフィッシュは痙攣して、仰向けになってゆっくりと浮上していく。
再度死骸を回収し終えた真神は沈没船へと向かって降りていくように泳ぐ。
沈没船の船底には穴が空いており、内部へと侵入する。
「んっ? 内部には空気があるようですね」
沈没船の内部は水没しておらず、空気もあった。
「内装は大航海時代っぽいな………」
船内は所々朽ちており、ボロボロの樽や箱などが散乱して足場が悪い。
「っと!?」
真神が沈没船の船内を探索していると、何処からかボルトが飛んできて、グリモアのオートガード機能で弾かれる。
「海賊のスケルトンか?」
矢が飛んできた方向に視線とカメラを向けると、そこには船乗りの格好をした五体の骸骨達がいた。
二体がクロスボウを構え、残り三体がカトラスと言う武器を構えてカタカタと骨を鳴らす。
「やりあおうか!」
真神は背中からプレデターの鈍器を取り出すとスケルトン達に向かって走り出す。
クロスボウを装填したスケルトンがボルトを放つと、真神は鈍器で打ち返す。
「おらっ!」
カトラスを持ったスケルトンの一体を鈍器で叩き割り、もう一体を横凪で吹き飛ばす。
生き残ったスケルトンがカトラスで突こうとするが、真神はブリッジするように体を反らして回避し、倒立する勢いでカトラスを持ったスケルトンを蹴りあけて頭を粉砕する。
クロスボウを持った二体のスケルトンは装填が間に合わないと判断したのか、クロスボウを投げ捨ててカトラスを抜く。
「これても食らいな!」
真神は鈍器をスケルトンの一体に向けて投げると、もう片方のスケルトンに向かって走り出す。
鈍器を投げられた方のスケルトンはカトラスで防御しようとしたが、真神の膂力で投げられた鈍器はカトラスごとスケルトンを粉砕する。
もう一体のスケルトンはカトラスで突いてくるが、真神はカトラスを避けてスケルトンの腕を掴むと一本背負いで投げ飛ばし、スケルトンの喉元を踵で踏み抜く。
「ふう………スケルトンはこれで全部かな?」
残心をといた真神は鈍器を拾い上げると、それで肩を叩きながら沈没船の船内を探索を再開した。
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