第15話
すみれさんは確実に年老いていました。
最初は耳が遠くなり、足腰が弱くなり、そして目が見えなくなりました。ずっと寝てる事が増えてきました。私は自分から進んですみれさんの介護を始めました。その頃父と母も祖母の介護をしていたので
私一人ですみれさんの介護とソラの世話をしていました。すみれさんが年老いたといってもソラも元気とはいえもう10歳は超えてます。
ソラは弱っていくすみれさんの隣を離れようとはしません。私と同じようにすみれさんの介護をしているようでした。すみれさんの目となり耳となりすみれさんをサポートします。
すみれさんは年老いても最後まで食欲だけはあったので、私はドックフードをお湯でふやかし柔らかくしてすり潰し介護食を作りました。水もトロミを付けて誤飲を防ぎました。
ソラはすみれさんが先に食べないと自分は食べません。すみれさんもソラの分は残します。そうやってすみれさんとソラはずっと過ごしてきたから…。
ソラにとってすみれさんはお母さんであり師匠でした。すみれさんにとってソラは我が子であり弟子でした。何をするにしてもすみれさんがソラにやってみせていたからです。
そのうちソラもすみれさんの介護食を食べたがるようになりました。
多分すみれさんが食べていたからですね。一緒がいいと思ったのでしょう。
すみれさんの足腰が弱ったから散歩は二人一緒ではなくなりました。すみれさんが歩くスピードは遅くなりソラとは一緒に歩けなくなりました。
ソラはそれでもすみれさんが先に散歩に行かないと行きたがりません。すみれさんの散歩にどれだけ時間がかかっても待っていました。
すみれさんは途中で休み休みで約一時間かかって散歩をしました。足腰が弱くなって立てなくなっても散歩に行きたがりました。
私はできるだけすみれさんが自分の足で歩けるようにさまざまな胴輪などを工夫して散歩に行きました。すみれさんは何度も足腰が立たなくなり、へにゃっと座り込んでもしばらくすると自分から立とうとし私はそれを支え二人でゆっくりゆっくり散歩を毎日3回欠かさず行きましたよ。
でもとうとうすみれさんは完全に立てなくなりました。そうしてすみれさんはオムツをする事になったのです。すみれさんがオムツをするようになったらソラは自分もオムツをするとききません。まだソラは自分で歩けます。散歩に行けます。でもすみれさんが散歩に行けなくなったらソラまで散歩に行くのを嫌がるようになりました。
どこまでもすみれさんと一緒が良かったソラ。
そして何年かの介護の末、ある年の1月になったばかりの夜。
私とすみれさんとソラはいつものようにみんなで布団に入り寝ました。
しかし夜中にフッと目が覚めてすみれさんを見るとすみれさんは息をしていませんでした。
慌てて両親を電話で呼んで、すみれさんの身体を撫で続けました。
私と両親、ソラに見守られてすみれさんは17歳という長寿を老衰という形で終えました。
まるで眠ったような安らかな顔で逝きました…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます