第18話
「えっ…だって今日の朝イチでソラを迎えに行くって決めたじゃん!」
そう、私達家族は病院に電話をかけてソラの様子を聞いた後家族内でソラが良くならないようだったら明日ソラを看取る為に家に連れて帰ろうと話し合っていたのです。
家で看取る為に家に連れて帰る事は病院の先生にも伝えていたのです。
先生から治る見込みが低い事を聞かされていたからです。
だから私はソラを連れて帰って看病する気で満々でした。
それなのに…ソラ、死んじゃった⁉︎どういう事⁉︎
父の「ソラ…ダメだった…」に頭の中が真っ白にありました。そして「私」が一瞬で消え去りました。
そこからの記憶はありません。ただ泣きじゃくって慌てて病院に行った事は覚えています。
さすがにあまりにも急なソラの死に他の人格達も対応出来なかったようです。
他の人格達が残したノートにはソラはダンボールの棺に入れてあって、病院から連れて帰る際病院の全ての先生方やスタッフの方々が見送って下さったそうです。そして父と母はもう使わないであろうドッグフードやペットシート、オムツなどを病院に寄付したのだそうです。
小さい身体には大きすぎる段ボールの棺。
「私達」はその段ボールを抱きしめたままずっと帰り道車内で泣きじゃくっていたようです。
他の人格達がノロノロと自分達の役割を果し始めたのがソラを火葬している最中だったそうです。
「私」はしばらく作られませんでした。
ソラの急死が受け入れられなかったから…。思い残す事がたくさんあったから。ソラを病院の冷たいベッドで一人で逝かせてしまったから。
ソラの最後に間に合わなかったから。
すみれさんの時と違ってソラにはやってあげたい事がたくさん残っていたから。
思えばソラは大病はほとんどした事がありませんでしたが、てんかんの持病を持った子でした。
雷や車のクラクションなどの大きな音や人間には分からない些細な音で身体がビクッとなった時てんかんの発作を起こしました。
呼吸が荒くなり四肢がピーンと硬直して痙攣を起こして、酷い時は口から泡を吹いて…。
そんなてんかんの発作が起きた時すぐ発作の薬を飲ませて後は人間の子供がてんかんの発作を起こした時と同じように暗い場所で発作を起こしている時間を数えながら「大丈夫、大丈夫…」と言い聞かせながら抱きしめて発作がおさまるのを待つのです。
ソラをてんかんの発作が起きた時のように抱きしめれば病気なんて治るかもしれない…。目を開けてくれるかもしれない。
ソラ、まだ何もしてあげれてないよ?すみれさんみたいに介護も看病もしてないよ?
ソラを看取る為に何ができるかっていろいろ考えてたんだよ?
何で急にすみれさんの所に逝っちゃうの⁉︎
両親の話ではソラの様子を寝る前に電話で聞いたのだそうです。ダメだったらもう家に連れて帰るからと。その時はソラは頑張っているから様子を見ましょうと言われたのだそうです。
でも両親と話し合って私達は次の日の朝イチでソラを迎えに行くと決めていました。
そして夜中病院から「今、息を引き取りました…」という電話があったそうです。両親は今からソラを迎えに行くといったのですが、病院の方がもう夜中なので明日迎えに来てあげて下さいと伝えられたとの事。
そして朝、私にソラが亡くなった事を伝えた。
ソラは小さな小さなお骨になりました。すみれさんよりも更に小さなお骨になりました。
すみれさんが亡くなってたった3年後の事です。
ソラは急性腎不全で14歳で亡くなりました。
「私」が出来たのはソラが亡くなってから一週間後くらいの時です。
すでに納骨後でした。
私達家族はもうお犬様を飼わないと心に固く誓いました。
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