第13話

「寝た」つもりの意識不明の重体での一週間。

私は大学病院のICUで目を覚ましました。たくさんの機械が身体中についた状態で酸素マスクもしていて私は「何だここ⁉︎」と言って起きたのです。

見慣れた天井じゃない真っ白な部屋。

何やら変な音のする訳の分からない機械たち。

固定された酸素マスク。

目を覚ました私に気づいて慌てて部屋を出ていく看護師さん。

私には何が起こったのか分かりませんでした。だって私は「ただ寝た」だけなのだから。

しかしわたしが「寝てる」間に主人格である「私」が消えてしまっていました。

「私」が消えた私は話す事も家族の事もすみれさんやソラの事も記憶にありませんでした。

そんな私を先生や家族は意識不明だったショックだと思ったみたいです。でも実際には主人格である「私」が突然消えたからです。

「私」の消えた私は人間が出来る事ができません。

慌てて残された他の人格達総出で主人格である「私」を作り始めました。

その間私はICUを出た後、精神科の閉鎖病棟に移されました。そこで意識不明だった間の自分がどれほど危なかったのか、「寝る」前の事を質問されたり聞かされたりしましたが、主人格のいない私は話す事ができません。何も食べる事が出来ません。何も全く出来ませんでした。

先生の話や質問にも答えられませんでした。

そんな私は危うくそのままその閉鎖病棟に入院させられるところでした。しかし他の人格達が頑張って主人格である「私」を作り出しました。

主人格である「私」がいる私は今までの「私達」からの記憶を受け継いで他の人格達の助けもあってみるみる見た目には良くなりました。

家族の事やすみれさんやソラの事、「寝る」前のわずかな記憶を思い出し治った「フリ」をしました。

そして私は閉鎖病棟に1週間ちょっとで出て無事退院する事が出来たのです。

退院した私はしばらく姉のアパートに家族でいる事になりました。もちろんすみれさんやソラも一緒です。何故なら小さなど田舎の地域で救急車で救急搬送されると悪い意味で有名人になるからです。近所の人達から根掘り葉掘り聞かれるので落ち着いてまで家族で姉のアパートにいる事になったのでした。

アパートにいる間に主治医のいる病院にも行きました。主治医は私に会った瞬間に「私」が新しい「私」である事に気づきました。そして主治医は他の人格達に以前の「私」の事、新しい今の「私」の事、閉鎖病棟での私の様子などを聞いていましたが

私自身は全くの他人事で気持ち的にはスッキリしていました。なのでこの時何やら主治医が言っていましたが聞いていませんでした。

私的には生まれ変わった感じです。多分「私」が変わったからですね。

退院してからしばらくは家族は私に対して腫れ物に触るように接しましたが、すみれさんとソラは相変わらず以前の私と同じように…いや以前よりべったりくっつくようになりました。どこに行こうともついてこようとしました。寝る時も一緒です。どこにいても一緒でした。すみれさんやソラなりに心配したんだと思います。約2週間離れていたので…。

一ヶ月くらい姉のアパートにいましたが、私としては精神的に落ち着いたので実家に帰る事になりました。

実家に帰って近所の人達があれこれ聞いてきましたが私は「普通」にしていました。

すみれさんとソラの散歩をして、何か聞かれたら

「肺炎になった」と答えてやり過ごしました。そうするうちに私の周りも落ち着きました。落ち着くまでもずっとすみれさんとソラが私の側を離れませんでした。

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