第21話

ジャックラッセルテリア…飼いづらい犬種トップクラス。飼育放棄される犬種トップクラス。見た目と中身のギャップで保護犬になる確率トップクラス。


調べれば調べる程このおチビさんヤバくね!?生後2ヶ月の女の子で可愛らしい顔してるけど見た目と中身のギャップが激しいって、悩んでる私達の周りを走り回ってる姿見たら分かるよ。

返そうとしたけど返せなかったし、そもそも簡単に小さな命をあっちこっちに責任押し付け合うのは間違ってると思う。飼えないから保健所にやるなんて論外だ!…こんなおチビさんを保健所になんてやれない。そこまで鬼ではない。よしっ!どんな風に飼いづらいのか知らないが飼おう!!


私は周りで走り回っているおチビさんを見ながら覚悟を決めました。そうと覚悟を決めたらどう両親を説得するか…それが問題だ。

まず私と姉は母に電話して事情を話してみました。そしたら母はおチビさんの写真が見たいと言ったので写真を撮って送りました。写真を見た母は家に連れて来ても良いと何だかアッサリ承諾しました。

よしっ、母の許可は取った!後は父のみ!しかしそれが一番の問題だ!!


父に電話すると、案の定何の話も聞かずに「保健所にやれ!」と怒鳴りました。「もう犬は飼わないんだ!」の一点張りです。そこでもう姉と父の大喧嘩が始まりました。でも大喧嘩の最中に私でさえビックリした事が起きたのです。


なんと姉が大泣きしたのです。

今まで何でも両親の言う事を聞いていた姉の初めての抵抗でした。


その日は父と姉は喧嘩別れしたままでした。電話を切った姉はもう怒り心頭で「仕事を辞めてもこの子を連れて行けないなら実家には帰らない!」と言い切りました。宥めても無駄でした。

誰かが怒っている姿を見てると周りの人間ってどんどん冷静になりますよね?あの状態になりましたよ。とりあえず私は冷静になりました。

「片付けが終わったらおチビさんのご飯とかベットとか身の回りの物買いに行こう。そうしないとこのおチビさんがかわいそうだよ。」

私の言葉に姉は幾分か冷静になり、急いで片付けをしてペットショップに行きました。

私の今までの経験を聞いてとりあえず最低限必要な物を買うとアパートに帰ってきました。アパートにおチビさんを1人で置いておかないので連れて行きましたよ。その時おチビさんに洋服を買ったのです。あまりにも小さいし今は年末で寒そうだったから。姉はあれもこれもと買いそうになっていましたが私は本当に必要最低限の物しか買わせませんでした。

だって姉に「犬を飼うなら家に帰って来るな!」と言った父ですが絶対におチビさんが気になって姉に帰って来いと言うと思ったからです。


そしておチビさんに夢中の姉をよそにテキパキ部屋の片付けを終わらせて私は次の日実家に帰りました。実家に帰ると父はおチビさんの事を根掘り葉掘り尋ねました。父におチビさんの事情を全部話し、最後に「まだ生後2ヶ月になったばかりの片手に乗るくらいの小さな子を保健所にやる人間は人間じゃない」とトドメをさしました。父は考え込んでいましたね。


そして母とこっそり父がどのくらいで折れるか話し合ったのです。だって年末でもうすぐしたらお正月が来るのに姉が帰ってこないと言ったのですから。

父は昔から家族は揃って当たり前と思っている昔の人です。それなのにお正月に家族が揃わないとなると折れるに決まってます。

私は2、3日で折れると思っていたのですが、何と父は次の日には姉におチビさんを連れて帰って来いと電話していました。


はやっ!!


でも私は嬉しかったです。「私」以上に嬉しかったのは他の人格達全員でした。他の人格達の中にはまだペットロスの人格達も多くいたからです。

まして「私」からするとすみれさんとソラの記憶はあっても本当のお犬様に接した事が無いのです。

そう「私』は新しく出来た「私」なので実物のお犬様と接するのはあのおチビさんが初めてです。















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