第19話 闇狩り
傾斜地にある駐車場の最上部に集合したのは、山梨県内の各地を知り尽くした地元グループの当然の戦略である。
『魔豹は左に、飢狼は右にそれぞれメンバーを連れて動け。甲州会でも南商でも、先に着いた奴らを潰せ。白虎は俺とここで待機、万が一に備え、魔豹と飢狼への援護だ』
不死グループの4天王のうちにも序列はあるようだ。指示を出す獅子王がトップに君臨する連合体である。
40人ほどのグループのうち、15人居残り部隊をおいて20台ほどの巨大バイクで繰り出してきている。何としても今夜の食料を略奪するつもりのようだ。
「どこに敵がいるか分からねえが、この駐車場に先に着いた奴らからぶち殺せ。銃は使うな。いつものように弓、斧、刀、ナイフで息の根を止めろ。指示と連絡はいつも通り無線機で行う」
「了解、魔豹隊8人左に移動する」
「ラジャー、飢狼隊8人右に移動」
各グループに1人、この闇の中でも暗視可能な赤外線ゴーグルを装備している。
駐車場最上部に獅子王と白虎王の部隊9人を残して、2つの部隊は闇の中に消えていった。
不死グループが体制を整えた後、概ね30分後、駐車場入口に数台の車のライトが確認された。
闇に囁きが流れる。
『本部から豹へ、本部から狼へ、いま車3台入口通過。左の建物付近に停止。たぷんこちら目指して移動開始すると思われる。豹は正面から攻撃、狼は至急移動し奴らの背後から襲え』
「豹、了解」
「狼、ラジャー」
夢子が大神と別れ闇の中を進む。待ち構える魔豹隊に向かって・・・・・
赤外線ゴーグルを着けた隊員が闇の中を歩く夢子の姿を確認し、魔豹王に小声で伝えた。
「リーダー、若い女がこちらに向かって歩いて来ます」
「お前バカか、この時間で闇の中だ。女なら幽霊か化物しかいるはずがねえ。よく確認しろ」
「いや間違いありません。若くてとびきりの女です」
「幽霊でも化物でも構わねえ。上玉なら捕まえて、みんなで食っちまおうぜ」
「おーやっちまおう・・・・・」
小声ではあるが下品な囁きがまだ終わらぬうちに、黒い闇が妖しく蠢き、赤外線ゴーグルの男が血しぶきを上げて倒れた。
「なんだ?」
「おい、どうした?」
闇が再び動き、斧を手に持つ男の首が消える。生臭く甘い血臭が闇に漂う。
「敵襲だ。用心しろ」
何度も死線を潜り抜けてきた落ち着いた声が流れる。魔豹王を含め残る6人もそれぞれ武器を構える。
闇の中から見惚れるような身体をピッタリとした黒Tシャツと黒のミニスカ姿の夢子が現れた。
「お待たせしちゃったかな」
カーボン製の黒色刃の匕首を背後に隠したまま、暗闇の中でも煌めくような笑顔を浮かべた。
「誰だお前は?」
魔豹王の質問には答えず、近くで身構える男2人の喉を一瞬に切り裂く。
倒された男たちは、数え切れぬほどの敵を倒してきた凄腕の戦闘員なのだ。その2人が一声も発せず、血潮を吹いて倒れる。
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