第30話 取引完了

 1時57分、仲田のスマホが着信する。相手は甲州会の幹事長の市村からである。


 「南商の仲田さんかい?甲州会の市村だ。予定通り3分後に駐車場に到着する。そちらは特に問題ないか?」


 「ご苦労さん。オレたちは駐車場の高台で待機中だ。既に障害は壊滅してある。全く問題はない。オタクの車が到着したら、合図としてライトを3回点滅する」


 「了解。オレたちはアンタのところの合図の後に、ライトを2回点滅する」


 「オーケーだ、了解した」


 約束の2時ピッタリに駐車場入口に6台の車のライトが浮かぶ。甲州会の連中の到着だろう。


 一度全ての車のライトが消灯された。こちらから3回点滅を送る。入口から2回のライト点滅を確認。間違いない甲州会だ。


 南商グループが待つ駐車場の高台に6台の車が到着した。トラック2台とジープ4台の構成だ。


 ジープのドアが開き12人の人影か闇に浮かぶ。先頭に立つ30代半ばと見られる男が幹事長の市村である。


 かって2度ほど顔を合わせたことがある。額にある大きな刀傷が、野獣のような顔つきをさらに際立たせている。


 「市村さん、お久し振りだね」


 「よお仲田さん、あっという間に南商のNo.2か。やり手だとは聞いていたが。若いのに出世が早いな」


 「ふっふふふ、オレも早く市村さんみたいな貫禄を付けたいもんだよ」


 「アンタもキレイな顔に似合わず、かなり戦闘力が高いと聞いてるぜ、そのうちお手合わせ願いたいもんだ」


 「いや、まだまだ市村さんには及びませんよ。それよりブツはあちらのトラックですか?」


 「おうトラック2台に2tずつで計4tだ。確認してくれ」


 「おう金井、お前らトラックのブツを確認しろ。市村さん、今夜の取引はキャッシュで2千万円、それでOKですよね」


 「取引額に変更はない。運搬用のトラックも予定通り1台20万円、2台で40万円で譲るぜ。ガソリンもたっぷり入ってるしな」


 トラックの中身の確認は済んだ。キャッシュ2040万円の受け渡しも無事終了。


 「そこらに転がってる仏さんは、アンタのところの兵隊がやったのかい?」


 「いやうちが頼んだガードの先生が片付けた。どこの連中かは分からないがな」


 「コイツらはたぶん、不死グループのヤツらだろう。戦闘力がかなり高いと聞いていたけどな。10人弱か」


 「いや他にも16人、ここの9人合わせて25人片付けた」


 「スゴイな、ちなみにガードはどこに頼んだんだ?」


 「大神探偵社ですよ」


 「おう南の魔人か、噂どおり凄まじいな。その魔人さんとやらは今、ここにいるのかい?」


 「ああ、今はオレの車に乗り込んでますよ」


 「そうかい、できればご挨拶させていただきたいけど構わねえかい。お顔も拝見したいしな。仲田さん、悪いけど呼んでもらえるかい」


 「いや市村さん、呼ぶのは無理だ。顔合わせしたいなら直接やってくれないかな」


 「なんだ、そんなに偉い先生なのかい。分かったよ、オレが行く」

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夜の帳が下りて 希藤俊 @kitoh910

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