第22話 連続攻撃
通常、女性が男に後ろから羽交い締め状態にされたら、まず身動きは不可能だ。ましてや魔豹王は全身の筋肉が強化された改造人間である。
さらには右腕を後ろ手に拗じられている状態では、まったく身動きなどできはしない。
「姉ちゃん、腕はなかなか良さそうだが、オレに捕まったら残念ながら逃げられやしねぇ。諦めてオレと楽しもうぜ」
後ろに拗じられた右腕がギリギリ痛む。無理に動こうとすれば骨が折れてしまいそうだ。
160cmの夢子を捕らえている魔豹王は、180cmをゆうに超える長身である。その魔豹王が夢子の右腕を、持ち上げるように捻り上げているため、夢子の体は爪先立つように不安定に浮き上がっている。
左手は夢子の胸をしっかりと握っているため、まったく身動きができない。
「あーん、お兄さん。そんなにムキになって、か弱い女の子の腕を拗じらないでよ。折れちゃいそうで、もう痛くて泣いちゃうから」
甘えた声で魔豹王に囁く姿は、まるで野獣に捕らえられた子鹿のようだ。
「痛いか?そりゃあ悪かったな。可愛い姉ちゃんがつまらねえ悪戯をすると、こういうふうにお仕置きしなくちゃならなくなる。よく覚えておくんだな」
「ね、お願いだから、もっとやさしくしてよ。これからはアタシ良い子になるから」
「ふっふっふ、とんだ悪戯娘だな。お前みたいないい女は、オレは嫌いじゃねえけどな」
獲物を咥えこんだような圧倒的有利な体制に余裕が生まれ、魔豹王の張り詰めた緊張感が心なしか緩む。
捻り上げた夢子の右腕も僅かに緩み、爪先立っていた両足がしっかりと地面を捉えた。
一瞬の緩みを見逃しはしない。魔豹王に胸を弄られながら、魔豹の下半身に密着した丸いお尻を思いきり前に引くと同時に、一気に後ろに叩きつけた。
夢子のお尻による打撃は、ボクサーのパンチを受けたような破壊力で魔豹の下半身に爆裂し、前屈みに体制を崩した魔豹の顔面に、夢子は後頭部をガシャッと激しく激突させた。
魔豹王の顔から血飛沫が上がる。夢子の後頭部の頭突きで鼻骨が砕けたかもしれない。しかし流石に戦いに慣れた魔豹王、捻り上げた右手は離さず、夢子の胸を掴んでいた左手のみ離した。
先ほど地面に落としたケーバー1218を、素早く拾い上げるためだ。
左半身に自由ができた夢子は体制をそのまま変えず、左足を後ろに振り上げ、踵で魔豹王の股間を蹴り上げる。
「ガシャッ」
激しい打撃音が響き、常人なら急所を潰され悶死するところであるが、魔豹王の股間には鋼鉄のカバーか仕込まれていたため、激しい衝撃を受けただけであった。
夢子の攻撃は続く。捻り上げられた右腕を戻しながら、股間を踵で蹴り上げた左足を振り戻し、後方回転を行い魔豹王の頭頂部に強力な蹴りを打ち込む。
夢子の頭部への蹴りを寸前でかわしながら、掴んでいた右腕は離し、瞬時に1mほどの間合いを取る。もちろん左手には、先ほど地面に落としたケーバー1218を握っていた。
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