第21話 後ろを取られた
「姉ちゃん、見かけはまるでアイドルみてえに可愛いが、お前、プロの殺し屋か?それともプロの戦闘員か?どこの組織に雇われたんだ?」
ほんの数分の間に部下7人を倒された。しかも全員が何の抵抗さえできずに・・・・・
部下の7人の誰1人をとっても、通常の戦いで遅れを取るような奴らじゃねえ。今までの戦いでも、1人で10数人の敵を相手にしても、皆殺しにするような強者ばかりだった。
その腕自慢の部下たちが、まるでこどもの腕をひねるように倒されたのだ。まともじゃねえ。こいつは間違いなくプロの殺し屋に違いねえ。
魔豹王と呼ばれる男、山梨県内はおろか関東近隣まで名が売れた、最凶最悪の不死(ふじ)グループのリーダー4人のうちのⅠ人である。
体中に筋肉の強化改造がなされているサイボーグで、常人の10倍の筋力を出力できると言われている。
かって山梨県内の他組織との戦闘で、50人ほどの敵部隊をたった1人で、皆殺しにしたという噂さえある。
腰の後ろに携帯している武器は、KA-BAR KA1218。全長302 mm、刃長178 mm、重量318 g、米軍アーミーナイフだ。
ケーバー1218を腰から抜き、左手に無造作に構えた。
「可愛い姉ちゃんでも、化物でもいいからかかって来いよ。オレが相手になってやるぜ」
久しぶりに出会う強敵に、体中の血液が滾り筋肉が発熱する。まず化物を片付ける。可愛い姉ちゃんはそれからだ。もちろん簡単には殺しはしねえ。たっぷりと可愛がってから、天国に送ってやるぜ。
生首を喰らって口元を紅く染めた漆黒の化物の金色の瞳が、新たな獲物を見つけて妖しく光る。
「ダメだよ、クロは手を出したら。アンタはもうたっぷりと遊んだでしょ。このお兄さんはアタシの相手なんだから。アンタはあのイケメンくんのガードに戻ってあげてね」
まるで、高ぶった殺気さえも溶かしてしまいそうな甘い声が闇に流れ、一瞬にして獣は黒い闇に溶けて消えた。
「おいおい、オレもすっかりなめられたもんだな。可愛いお姉ちゃんが1人でお相手してくれるのかい。それなら物騒なナイフなんか要らねぇな」
冗談ではなく左手に握っていたケーバー1218を地面に落とした。
「あらお兄さんたら、おやさしいのね」
声の語尾が消えないうちに、夢子の姿が闇に溶ける。数mの距離を一瞬に移動し、魔豹の喉元を黒色刃がスッパリと切り裂いた・・・・・
ように見えたが、一瞬早く魔豹の姿が滲む。滲んで消えた。
伊達に筋力強化している訳じゃない。常人の数倍強化した筋力により瞬時に移動し、夢子の後ろを取る。
右手で夢子の匕首を握る右手を抑えた。左手は夢子の後ろから前に回し、ピッタリとした黒Tシャツに隠れた、思いのほか豊かな胸を掴んだ。
右手に少し力を加えて握っていた匕首を落とさせ、後ろ手に右手を捻る。もちろんたいした力は入れやしねえ。お姉ちゃんの腕を折っちまうからな。
「可愛い姉ちゃん、なかなかいい体してるじゃねぇか」
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