第14話 難所
「まずは往路で軽く叩いて南商のお手並みを拝見してみるか?」
「そうですね。それで何人か倒せば復路はさらに楽になるでしょうから。何人位いかせますか?このところ戦争がないもんで、若い奴らは苛立ってますんで」
「そうかい、それじゃあなるべく若手を10人ほどぶつけてみるか」
「総長、若手って正隊員からですか?それとも準隊員でいきますか?」
「準隊員で十分だろう。正隊員はなるべく温存しとかないとな。捨て駒にはもったいないからな」
西多摩連合には、正隊員と準隊員に選別されている。年齢やキャリアで区別をしているわけではない。大学OBや地域住民、現役大学生であっても戦闘能力により区分されている。
隊員はA、B、C、Dの4段階に区分され、AとBランクのみ正隊員とし、CとDランクは準隊員として処遇される。さらにはその上位、Sランクは運営会議メンバーとして連合を仕切っている。
現在、運営会議は総長を含め6人てあるが、かって埼玉県組織との抗争で43人を倒した『皆殺しの柳川』と呼ばれる17歳の高校生が最年少である。
「おい柳川、お前はどう思う?」
「往路で皆殺しにすると取引自体が壊れちゃいますからね。脅す程度なら下っ端で十分でしょう」
「確かにその通りだな。血の気の多い若手を10人ほど当ててみるか。皆、それで異論はないか?」
「総長のおっしゃるとおりで結構です」
全会一致で運営会議は決定し、正隊員1人をリーダーに準隊員10人が3台の車に乗り込み闇の中に消えていった。
情報屋から40万円で確保したネタであったが、1つ抜けた情報があった。大神探偵社が協力しているという情報は、当初の情報料50万円から削られた10万円分であったのかは定かではないが・・・・・
立川から概ね52km、奥多摩の深山橋を左折し国道139号に入る。目的地である小菅もあと7kmほどである。
「先生の出番がなくて申し訳ないが、もう目的地も近い。特に何もなく無事に到着できそうですな」
何も事件が起きなかったことが一番の幸運だ。緊張はさほどしているつもりはなかったが、最後の難所と予想していた深山橋を渡りきり、目的地が目前となって仲田は肩の力を抜いた。
戦闘服の左右のズボンのポケットの中で、握りしめていたM18が手汗で濡れている。ポケットから両手を出して戦闘服の腿の上でそっと拭った。
「気を抜くな・・・・・」
重く掠れた声が3台の車の中に響き、車内の温度が急激に下がる。
深山橋を渡りきった道の暗闇に、大きな影が見受けられる。何かが車の通行を妨害している。仲田の声が飛んだ。
「おいお前たち、何かある。気をつけろっ」
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