第2話 不死身の魔人

 「井沢よ、『南商グループ』とかいった南のチンビラ達の状況はどうだ?」


 「まあ、もともとは地元の南口商店街50人程の自警団から立ち上がった素人グループですから。最近は随分と派手に構成員を増やしているようですが、せいぜい130人程度の戦力でしょう」


 「そうか、いつでもつぶせる組織だな」


 「しかし我々が南商つぶしにかかると、その隙をついて皇国の奴らが攻めてくるでしょう。だから南商をつぶしてる余裕は今の所ないですね」


 「当分の間、ウチと皇国と南商のにらみ合いが続くって訳か・・・・・」


 「ウチか皇国の戦力が、相手を大きく上回らない限り、この緊張関係は続くと思われます」


 「強力な戦闘能力のあるメンバーが欲しいところだな。半グレグループとか、格闘技集団とか、何かあてはねえのかい?」


 「ウチの捜索隊にも、会長の想いは充分に伝わっているはずですよ。昨夜も皇国とぶつかったのは、5人ほどの不良グループの取り合いが原因ですから」


 「それで皇国に遅れを取ったって訳か?」


 「いや不良グループの根城の前で、皇国とハチ合わせで火がついただけです。まだ不良グループの意思は、ウチか皇国か決まっちゃいないようです」


 「分かった。何とか人集めには力を入れねぇと厳しいようだな。井沢よ、引き続き頼むぞ」


 「承知しました。会長の喜ぶお顔が拝見できるようガンパリますよ」


 「それからあの食料確保はどうなってる?大量のコンビーフ缶を積んだトラックが見つかったと聞いたが」


 「たぶん関西地区の組織からの輸送だと思われますが、4t程度の量なので何とか押さえたいのですが・・・・・」


 「どうした井沢?いつものお前らしくないな。何か問題があるのか?既に皇国に押さえられたのか?」


 「いやそうではなくて、皇国もまだ手が出せない状態で・・・・・」


 「何だ歯切れが悪いな。ハッキリ言え」


 「いやそのコンビーフ。『南の魔人』が1枚噛んでいるもんで、ウチの戦闘隊の猪狩に任せているのですが、手間どっているようです」


 「またアイツか、何者なんだヤツは?」


 「詳しくは分かりません。特に組織を持っている訳ではないのですが、凄まじい戦闘能力があると聞いています。このところ噂の改造人間じゃないかと言われるほどです」


 「そんなに強いのか?それで魔人って呼ばれているのか?」


 「いや何しろ皇国も南商のヤツらも『魔人だけには関わるな』と噂していますから。『魔人に関わると命の保証はない』とも言われています。殺しても死なない『不死身の魔人』と恐れられています」


 「不死身の魔人か、そいつは興味深いな・・・・・」

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