第26話 異常事態
驚きだった、かって一度でも止められたことなどなかった。常人の数倍、いや数十倍のパワーを出力する機械腕である。そしてチタン棒。
前腕などで止められるはずがない。人間の骨など粉々に破砕する。そのチタン棒が化物の魔人の前腕に止められた。
今まであらゆる物をブチ壊してきた。頭も、肩も、腕も、足も、肋骨も、車も、バイクも、金属製の防具も、岩さえも・・・・・
オレの愛用のチタン棒を止められるものなどなかった。それが止まっている。チタン棒を真正面から受けた前腕で。
金属じゃない、岩でもない、叩きつけたチタン棒が受けた感触は、間違いなく骨だ。骨なのになぜ砕けないのだ?人間じゃない化物の骨だからか?
答えの出ない疑問は即座に捨てて、再びチタン棒を振りかぶり化物に叩きつける。
「ガシャッ」
何なんだ、この野郎は?今度は右の掌でチタン棒を受けた。掌なのに裂けない、千切れない、粉砕しない。掌でしっかりと握りこまれた。
この化物野郎、ふざけんな、いったい何なんだ。握られたままゴリラのようなクソ力で右腕を引かれた。
態勢が崩れる。引かれた右腕の付け根に激しい衝撃が走り、自慢の機械腕が千切れて地面に重い音を立てた。
化物野郎が左手の手刀で、オレの右腕を根本からブチ切りやがった。チッ、勝負にならねえな化物相手じゃ・・・・・
化物が目の前に迫る。30cmほどの距離だ。熊か、ゴリラか、それとも機械人間を想像していたが、普通の人間の顔してやがるぜ、しかも結構シブいじゃねえか、化物のくせに・・・・・
心臓の鼓動さえも凍らすような重い掠れた囁きが、凍える耳に流れ込む。
「ゆっくり眠れ・・・・・」
激しい衝撃とともに視界全てが真紅に染まり、身体も心も闇の世界に開放された。
闇で満たされた駐車場の高台、不死グループの主力の9人は、南詔グループを前後から襲撃に向かった魔豹王隊と飢狼王隊からの連絡を待ちわびていた。
襲撃に向かった2隊からは、未だ何の連絡もない。闇の中に配置した2隊に攻撃命令を出してから、既に5分経過していた。
「取引時間まであと15分だ。甲州会か南商か先乗りしてきたヤツらのライトが見えて、豹と狼に攻撃命令を出してから5分経つが、何の連絡もない」
「攻撃命令から5分もあれば、通常なら当然相手を壊滅させているはずだな」
「何かあったな・・・・・」
「豹も狼も、そう簡単にはやられるような奴らじゃない。この短時間で奴らまでも倒されたとしたら、よほどのプロ集団か?」
獅子王と白虎王の会話が続く。魔豹王隊8人と飢狼王隊8人の計16人だ。全てを倒すとしたら訓練されたプロの戦闘部隊が、40人位は必要なはずだ。
オレたちが到着した時は、無人だったはずだ。敵など誰ひとりいなかった。間違いなく異常事態だ。
「敵の戦闘部隊がいるなら、ここも襲撃されるな」
獅子王の一言が終わると同時に、7人の部下が次々に襲われた。
「ガッ」、「ゴシャ」、「グシャ」
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