第18話 不死グループ

 漆黒の闇の中に灯る蛍のような光。誰か居る。先頭を行く6人の隊員、そして後に続く3台の車も緊急停止した。


 体中に緊張が走る。仲田はポケットの中のM18を強く握りしめた。2号車の暗闇の中、ハンドルを握る金井が仲田に囁いた。


 「部長、誰かいるようです。自分が確認してまいります。しばらくこのままお待ちください」


 金井は空手、剣道ほか様々な武道も身につけた強力な戦闘員であり、実戦経験も既に3桁に及ぶ。


 「いや金井、オレも一緒に行こう。敵なら皆殺しだ」


 南商内部では知られてはいないが、会長の前澤と仲田の父親は、かってはともに最強のプロ戦闘員として活動していた仲間であった。


 幼少の頃から父親の厳しい修練を受け、S級の戦闘能力を持つ仲田を、前澤が父親に頼み込み、南商にスカウトしたことを知る者はいない。


 「いや部長に万が一にもケガをされたら、私の首が飛びますから、車でお待ちください」


 「気にするな。自分の身は自分で守る位のことは俺にもできる。さあ行くぞ」


 闇に包まれる温泉施設の駐車場に、南商の3台の車が到着した時に遡る。


 到着と同時にライトを消し、入口の出入りを見張れるように、建物から離れた片隅に駐めて待機した。


 2号車後部シートに座る巨大な人影が隣の美女に小さく囁く。


 「行くぞ・・・・・」


 ドアの開閉の気配さえ見せずに、闇の中に立つ。


 「私は左に、夢子は右に。最上部で会おう」


 南商のガードを引き受けた大神探偵社。この闇に包まれた広い駐車場に潜む、敵を排除するために動き出したようだ。


 2m先は見えない闇の中でも、まるで夜に生きる獣のように足音さえ立てず動く。


 南商の3台の車がこの駐車場に滑り込む40分ほど前のことである。20台を超えるバイク集団が駐車場の闇に消えた。


 荒れ果てた全国各地には、多数の人員を一定の規律をもってまとめた団体の他、数人から数十人の仲間が集まって作り上げた、愚連隊のようなグループも多く存在する。


 山梨県南部の南都留郡、富士吉田市、山中湖村周辺を根城とする、40人程度の暴走族が中心となって作られた『不死(ふじ)グループ』がある。


 常に多数のバイクで活動するグループで、戦えば必ず相手をひとり残さず皆殺しにする、最凶最悪のグループとして関東では名の売れた集団である。


 グループは『獅子王』、『白虎王』、『魔豹王』、『飢狼王』の4人のボスが率いる。4人のボスは銃で打たれても死なない不死身の男たちと恐怖伝説があるが定かではない。


 それぞれの団体やグループに必ず不死身の○○などと呼ばれる戦闘員が存在する。


 そのうちの大半が武道、格闘術に秀でた高度な戦闘力を有する者たちであるが、中には『改造人間』や『サイボーグ』と呼ばれる非合法の手術で身体の一部を改造された者もいると聞く。


 裏社会では、不死グループの4人の王は改造人間と噂されているが、詳細を知るものはいない。

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