第36話 学園祭4
講堂Aに着き入口前で予約席チケットを見せる為の列に並んだ。
学園祭は生徒の身内や知り合いも来ているので並んでいる人達も多い。
レイ様のお友達のヴァリテ様がチケットを受け取る係の列だった。
「メリアーナ嬢!」
「ヴァリテ様。もう始まるのではないのですか?」
ヴァリテ様もタキシード姿だ。
「私はまだなんだ。だから今はチケット係」
パチッとウィンクをした。
そんな仕草も様になるわ。
ヴァリテ様もご令嬢方に人気のようだ。
チケットを渡す時や近くを通るご令嬢が頬を赤く染めている。
「席はすぐに分かるよ!」
「そうなんですね。ありがとうございます」
なんかニヤニヤされたような?
座席番号付近にたどり着いたら
「レイ様…」
講堂Aの予約席、私の番号席には赤い薔薇の花束が置いてあった。
薔薇は5本でラッピングされていて可愛いリボン付きだ。
「予約席のチケットに座席番号が記入されてるから分かるのにねぇ」
早苗様が感心しながらも苦笑している。
「マメな人ねぇ」
入口で貰ったパンフレットを見てる里英ちゃん。
教室前で抱きしめられた事を思い出して、花束を抱えてまたドキドキした。
徐々に講堂の中が暗くなった。
そろそろだ!
あっ!レイ様が出てきた!
そして演奏が始まった。
え?これが素人なの?っていうくらい本格的!
さすが貴族が通う学園ね。
小さな頃から楽器を嗜んでいるのね。
私は苦手で小さい頃に挫折してしまったけど。
レイ様は前の方にいらっしゃるわ!
演奏姿が様になってる!
レイ様とヴァイオリン!
普段は可愛いのに今日はまた違う魅力が溢れているわ。
ホゥッとため息が出る。
あっ!ソロ演奏もあるのね。
各楽器毎に順番でソロで演奏するみたい。
皆様とてもお上手だわ!
ええ!?レイ様にスポットライトが!!
次はレイ様がソロ演奏するのね!
シンとする会場にヴァイオリンの音色が拡がる。
レイ様の表情を見て、レイ様の奏でる音を聴いていたら、なんだか切ない気持ちになった。
「綺麗な曲…」
素敵な音色が心に響く。
薔薇を胸の前で手に持ち、レイ様に見惚れる。
ソロ演奏が終わるとレイ様は真っ直ぐに私を見つめた。
一斉に拍手が沸き起こる!
「レイ様…」
またドキドキと胸が高鳴る。
心臓持つかな?
「これはまた、選曲が熱烈ねぇ」
「クスクス。本当に。5本の薔薇もね」
「選曲が?薔薇も?」
「後で教えてくれるわよ。きっと」
その後のプログラムも全て終わった。
素敵な演奏会は甘い余韻を残した。
講堂前でレイ様を待っていると、私がいる事に気づいた人達が
『パーティーで…』
『あ、あの曲の』
『ストライブ様の…』
なんて言いながら通り過ぎて行く。
「?」
なんだろう。
でも見られているのが恥ずかしい。
制服に着替えたレイ様が待ち合わせ場所に来た!
「メリアーナ!待たせてごめんね」
「いいえ。レイ様、お疲れさまでした」
レイ様のヴァイオリンの演奏を思い出す。
言葉が続かず数秒間ふたりで見つめ合ってしまった。
「ウォッホン!」
「!!」
「!?」
「では私達はここで失礼いたします」
「ストライブ様、素晴らしい演奏会でしたわ」
「お二人ともありがとう。良い学園祭を。ではメリアーナ、私達も行こう」
「はい」
学園の他のクラスの出展を見たりしながらいつもの花の温室へと行った。
最近はこんな時間がゆっくり取れていかなったから嬉しい。
でも並んで座ると緊張しちゃう。
久しぶりだからかな。
「レイ様のソロ演奏とても素敵でした」
「ありがとう。実はかなり緊張したんだよ」
「ええ!? そうは見えなかったです」
「…あの曲は君に捧げる為に演奏した」
レイ様が真剣な表情で私を見つめた。
「え…」
『あなたに出逢えた喜びを伝える』
「…!」
『生涯あなたを愛する』
「…っ!!」
「そう気持ちを込めて作られた曲なんだ。だから演奏するならこの曲をと決めた」
レイ様…。
「もう気づいていると思うけど」
「…」
レイ様の瞳から目が離せない。
「君が好きだ」
「!!」
「どうか私の事を考えて欲しい」
レイ様が切なそうな顔で私の頬に手を添える。
ヴァイオリンを演奏していた時と同じ。
あの切ない音色がまた聴こえてくる。
やがて、いつもより大人びた表情で微笑み、私の頬から手を離した。
「馬車まで送るよ」
そして、馬車までの道を手を繋いでゆっくり歩いた。
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