第51話 これからも永遠に1

家族や屋敷の皆がとても心配していて、しばらく学園は休んでいた。


あれからレイ様は毎日お見舞いに来てくれていて、いろいろな話をしている。

イチオシ堂の話をこの姿のレイ様とするなんて不思議な感じね。


「クスクス。それは私もだよ」


「そういえばレイ様、学園祭の時のパネル破りは迷わず『大福』のBを選んでましたね」


「そりゃあ、芽衣ちゃんは大福でしょ?」


「はい。大好きでしたから!でもレイ様が砂まみれになったらとヒヤヒヤしました」


「パネル破りのゲームの後に『こちらこそありがとう』と言っていたのはなんでですか?」


ちょっと気になっていたのだ。


「あの問題を聞いたときには、芽衣ちゃんがマスコットのことだけじゃなくて、イチオシ堂の和菓子のことも思い出していてくれているんだなと嬉しかったんだ」


「そうだったんですね…」


「そして、私のことも覚えていてくれて嬉しいよ」


向かいのソファーに座っていたレイ様が私の隣に移動した。

私の頬に手を添えて愛おしそうに微笑む。


「次は正式にご挨拶に伺うから…そうしたら君は私の婚約者だ」


抱きしめられてレイ様の喜びが伝わってくる。


「…はい」


私も嬉しい。

レイ様の背中に手を添える。

しばらくしてそっと離れたレイ様が私を見つめる。

レイ様の顔が近づいてきた…。

こ、これって!!

もしかして!!

恥ずかしくて俯いてしまった!


クスリと笑って私のおでこにキスをしてくれた。


「ではまたね、メリィ」


「は、はい…」


赤い顔でソファーにパタリと倒れる。

想いが通じ合ったレイ様は前より雰囲気がとても甘い。

私はそのたびに慌てちゃうけどレイ様が私に合わせてくれる。



「へぇー。そうなんだ」


「ふふふ。良かったわね」


里英ちゃんと早苗様がお見舞いに来てくれている。


「もう学園にも復帰するんでしょ?」


「うん。お兄様が特に心配しているんだけどね。もう体調も戻ったから。学園祭の片付けもできなくてごめんなさい」


「いいのよ」


「それにアイツは学園を退学してこの近くにもいないし、王都に来ることは禁止されているわ」


里英ちゃんがジャガー情報を教えてくれる。


「もう会いたくもないわ」


「あと、宮本専務の一本背負いも効いてると思うわよ。迫力があったもの!きっともう大丈夫よ!」


ぼんやりと見えていたような…。


「女の敵はマクラナ伯爵家が開発したネットでグルグル巻きにして騎士団に突き出してやったわよ!」


フンッと里英ちゃんが怒っている。


「きつく何重にも巻いてやったから、取れなくてしばらく苦しんだと思うわよ!」


「ヴァリテ様が感心していたわよ」


「いっぱい持って行ったネットを巻きつけるのをヴァリテ様も手伝ってくれたわ!」


「王宮騎士団の新たな武器になりそうね」


早苗様がクスクス笑っている。


「田口さんこそ、メリアのことを大事に思ってくれている友達なんだとクリスク様が感動されていましたよ」


「ふたりとも本当にありがとう」


「イチオシ社の社訓にもあるわよ!仲間を大切にってね」


「そうね。あったわね」


「ねぇ、聞きたかったんだけど、学園祭のゲームでどうしてお団子と大福の問題にしたの?レイ様が答えられないかもしれないのに」


里英ちゃんに気になっていたことを聞いてみた。


「メリアーナのどこが好きなのか聞いてみたら、前世で宮本専務が芽衣のことが好きな理由と同じだったのよ。それで分かったわ」


「え…」


『両手の手のひらの上で大福を大切そうに乗せて微笑むところ』


「!!」


「って言っていたわよ。でもメリアーナが階段から落ちて保健室に運んだときもとても心配していたし、愛おしそうに見ていたわね」


「レイ様…」


「きっと以前からメリアーナと前田さんに惹かれていたのね」


「今度宮本専務もお茶会に招待しましょ!」


「ふふふ。そうね。積もる話もあるわね」


「ではまた学園でね!」


「うん。ありがとう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る