第29話 噂のふたり1

人の噂も75日だったわね。

という事は2ヶ月と少し?

長いわね。


私とレイ様が付き合っていて婚約間近という噂が流れている。

学園でふたりで話をしていたら注目される。

レイ様の近くを通るとなぜか気を使われてふたりにされる。

うーん。

まだ付き合ってもいないし、婚約もしていないのだが。

レイ様はそんな噂が流れていていいのかしら?



「いいんじゃない?むしろストライブ様のせいでしょ?」


恒例の元イチオシ社女子会での里英ちゃんの発言。


「そうね。噂が広まって喜んでいるんじゃないかしら?」


早苗様、そうなのですか?


「それにしてもストライブ様の攻め方が本当に凄まじいわね。爽やか系男子、どちらかと言うと草食系に見えるのに、実は積極的アピールの肉食系!」


「肉食!!?」


「やっぱり小さな頃から想いを寄せているという噂も本当で、それは前田さんの事だったんじゃないのかしら?」


「でも子供の頃に会ったことなんて…?」


無いと思うのだけど。


「元婚約者がいたし、芽衣の事を見ているだけだったのかもよ」


「うーん。でもこれからどうしたらいいのかしら?」


「付き合うんじゃないの?お互い名前で呼びあうし。それに泣いちゃうくらい好きなんでしょ?抱きしめられたんでしょ?」


「ヴッ…ゴホッ!」


またお茶が喉の変なとこ入った!

ハンカチで押さえる。


「ふぅ。泣いちゃったのは、よ、よく分からないのよ。レイ様の顔を見てたら…なんかポロッて」


モジモジしながら説明する。

レイ様の切なそうな瞳を見ていたら苦しくなって。

ドキドキしてどうしたらいいか分からなくて。


「そ、そしたらその後、レイ様がギュッて…」


更にカァーッと赤くなってモジモジしながら説明する。


「どんな顔して言ってるんだか」


里英ちゃんがあきれた顔をしてる。


「変な顔してる?」


顔をペタペタ触る。


「まぁ、そのうち分かるでしょう。とりあえず、今まで通りに接すればいいと思うわ」


早苗様がクスリと笑う。


「恋愛面ではメリアーナと芽衣は15歳以下ね。ストライブ様も苦労するわね。ダンスも踊ると思ったのに」


「…もうHPが限界でした」


「フレッド様が甘やかすから恋愛面からは遠かったんじゃないかしら?」


「それで?芽衣の『イチオシ』はまだ『お兄様』なの?」


「え?それはもちろん…よ」


もちろんお兄様が私の『イチオシ』よ。

でも今はなぜかレイ様の顔が浮かんでいる?


「うーん?」


「肉食系ストライブ様の本気攻めでもうすぐ気づくのじゃないかしら?」


「そうですね。ストライブ様は余裕なんてないって言ってましたしね。このままメリアーナの婚約者の座を勝ち取りにいくつもりですね」


里英ちゃんと早苗様がそんな話をしている時、私はまだ『イチオシ』について考えていた。

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