第34話 学園祭2

「ふーん。それでまだ付き合ってないの?」


里英ちゃんが何で?って顔をしてる。


「えっと、だって」


「攻めつつも様子を見てるのかしらね」


里英ちゃんがクイズをまとめた用紙を確認している。


「けど、メリアーナ様の近くのポジションは掴んでいるわね」


経費を計算している早苗様、なんだか生き生きしてます。


教室の中でできる事を各グループ毎で作業をしている。

クラスのご令嬢が早苗様の方に用紙の束を持って近づいてきた。


「サナエラ様!こちらまとめてみました。確認をお願いいたします」


用紙を早苗様に提出する。


「……」


鋭い目つきで用紙を確認する早苗様。

パラリパラリと紙をめくる音がする。

なんだかピリピリしたオーラが漂ってきたわ。

イチオシ社時代の経理の早苗様が復活!?


ごくりと喉がなる。

あのご令嬢も不安そうに早苗様を見ているわ…。

懐かしいこの雰囲気!!


「…良くできています。あとはこちらを直してまた見せてください」


早苗様の目つきが柔らかくなったわ!


「は、はい!ありがとうございます!」


ご令嬢は笑顔になって戻って行った。


よ、良かったー!!

ハラハラしてしまったわ!!


早苗様は仕事には厳しいけど、とても人望の厚い人だ。

面倒見も良く、優しい人なのだ。

クラスのみんなも分かっているみたい。



日々、学園祭の準備で楽しい疲労感を感じつつ、もうすぐ完成する!

脱出ゲームの設営は職人さん達も見たことがないものだった為、不思議そうにしていたけど、里英ちゃんのマクラナ伯爵家が懇意にしている業者さんらしく

『お嬢様、またおもしろい物を考えましたね』

なんて言っていた。

里英ちゃんのお屋敷には他にも何があるのかな?



相変わらずライル殿下はやっぱり私がレイ様と一緒にいる時によく話掛けてくる。

楽しそうに…。

邪魔をするのが楽しいの??


レイ様もライル殿下を私に近づかせないようにいつも庇ってくれる。

逞しい背中にドキドキする。



そして、いよいよ明日から学園祭が始まる!

学園中からワクワク感が伝わってくる!


学園祭の実行委員の里英ちゃんは講堂と教室を行ったり来たり往復して確認をしていた。

みんなも里英ちゃんを信じて作業を進めている。

クラスの団結力も上がってきているみたい。


「ストライブ様よ。メリアーナ様」


講堂から戻ってきた里英ちゃんが私を呼ぶ。


「ストライブ様、ご協力ありがとうございました」


里英ちゃんがレイ様にお礼を伝えている。


協力ってなんだろ?

みんなの注目を浴びながら廊下へ出た。


「忙しい時にごめんね。少しでも会いたくて。これを」


「あ、ありがとうございます…」


薄いピンクと紫の薔薇の小さな花束とラッピングされた小箱を貰った。


「可愛いお花!」


私の好きな色だわ。


オーディエンスから『きゃあー!』と声がする。



「まったく。あれでどうしてまだ恋人じゃないの?」


「ライル殿下。…殿下には婚約者様がいらっしゃいましたよね?」


「マクラナ嬢。そうだよ。とても大切な婚約者がいるよ」


「では何故あのおふたりに?」


「大切な人と半年間離れなければならない寂しさ、分かるかい?オーレル嬢。そんな時に王宮のパーティーでイチャイチャしてるの見たらさ」


「もしかして…」


「仲が良いあのふたりにちょっとした嫌がらせさ」


「まあ!」


「あとは、レイへの助けになればってところだね。以前レイには私が婚約者とケンカをした時に仲裁してもらった事があってね。その恩返しもあるのさ。恋にはスパイスも必要でしょ?」


「クスクス。そうだったんですね」


「でもメリアーナ嬢って本当に鈍いね。少し邪魔をしたらすぐに気づくと思ったのにさ。ちょっとお手上げかも」


「乙女心は複雑なんですよ」


「あんなにレイしか見えてないのに…」


「本当に」



レイ様からの花束を抱きしめて微笑む。


「これは?」


お花と一緒にプレゼントしてくれた小箱には何が?


「メリアーナによく似合うと思うよ」


レイ様も優しく微笑む。


「今日は合同で演奏の練習があって、馬車まで送れそうにないんだ。クリスク家の迎えが来るまで待っているんだよ」


心配そうなレイ様の眼差し。


「また明日ね」


レイ様は私のストレートの髪を名残惜しそうに触って教室へと戻って行った。


「…」


また自分のクラスメイトの注目を浴びながら自席へ戻る。

花束で顔を隠して座る。


「毎日甘々ねー」


「牽制もしに来たわね」


里英ちゃんと早苗様が作業をしながら感心したように言う。


「メッセージカードもあるわよ」


「!!」


ドキドキしながらお花の中にあるカードを開くと


『大切な君へ』


「!!」


「これでまだ何も言われてないの?」


「…」


しばらく顔を上げられなかった。



今日の作業をすべて終わらせて各自帰宅する。

私もアルトさんが迎えに来てくれた。


馬車まで行く途中で誰かの視線を感じて立ち止まる。


「メリアーナ様?どうかされましたか?」


「…いえ、なんでもないわ」


気のせいかな?

すごく見られてたような?


でも最近は何かと注目されてるから視線に敏感になってるだけかな?

そのまま気にしないで屋敷に戻った。

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