第31話 留学生の王子様1

学園に向かう馬車の中。

今日も仲良くお兄様と一緒だ。

お兄様は今日もお美しい。


「お兄様、何をご覧になっていらっしゃるのですか?」


「ああ、本日から隣国のライル殿下が学園に留学生として半年間勉強に来られるんだ」


「そういえばお兄様が以前お父様とお話をしていらっしゃいましたね」


「本当は半年後だったはずが、予定を早めて欲しいという事になってね。学園側の準備の為に少しお待ちいただいていたそうだ。それで本日からという事になったんだ。だから資料を見返しているんだよ」


「まあ!本日からですか!」


「メリアーナと同じクラスだからね。後でお会いするから妹がいるとお伝えしておくよ」


「はい。王子様だなんて緊張しますわ」


人見知りメリアーナには難問だし、芽衣にとっても難問だわ。

え?王子様って何を話せばいいの??

次元が違い過ぎるんだけど。

…そういえばメリアーナもこの国の王家の親戚だったわ。


お父様は今は領地でのお仕事に力を入れているのよね。

王宮でのお仕事は昔散々やらされたからいいんだ!って。

だから王宮へはたまに行くくらい。

お母様と一緒の時間も作りたかったみたいね。

なのでメリアーナもあまり王宮には行かないのよね。


「ライル殿下には可愛い妹だからく・れ・ぐ・れ・も!よろしくお願いいたしますと伝えておくからね」


「は、はい」


これは元イチオシ社女子達に協力をお願いしよう!

うまく会話ができるとは思えない!


学園に着くとお兄様は早々に学園の先生と留学生の元へと向かった。

私は登校してきたレイ様と会ったので、レイ様が私の教室へと送ってくれている。


「ああ、ライル殿下の留学は以前からお話があったね。急遽本日からになったそうだね」


「はい。私と同じクラスだそうで、緊張いたしますわ…」


「あまり無理はしないでね」


手をギュッっと繋いでくれた。

ニコリと私の好きな笑顔で安心させてくれる。


「じゃあ、また放課後にね」


「はい。ありがとうございました」


はぁ。今日も癒される笑顔だわ。

朝から会えるなんて嬉しいかも。


「……?」


自席に着くと違和感を感じた。

早速元イチオシ社女子達に話をした。


「予定が早まったみたいね。ブランカ王国のライル殿下よね」


「メリアーナ様がお話をする機会も増えると思いますわ。できるだけ協力いたします」


「何故か!不自然に私の隣の席が空いてるのよ!助かります!」


何故!?わざわざ私の隣に!?

昨日まで座ってた人は?その人だけ席替え?

元イチオシ社女子頼りにしてます!!


先生と一緒にひとりの男子生徒が入ってきた!

王子様ですね!!

皆が一斉に注目した。


さすがロイヤルファミリー!!

注目されるのに慣れているのね。

平然としているわ!


少し長めの輝くような金色の髪、茶色の瞳、体格は細身でスラリとした美男子だわ。

お兄様とはまた違うタイプの美形ね。


「本日からこの学園で半年間勉強させていただきます。ライル・ジャンドルです。よろしくお願いいたします」


皆が、特にご令嬢方がため息をついた。

なんていうか、気品溢れる佇まいね。


「お隣の席だね。ライルだ。よろしくね」


やっぱり王子様がお隣の席だった。

座る前に挨拶してくれた。


「は、は、はい。ク、クリスク公爵家メリアーナと申します。よろしくお願いいたします」


人見知り発動でめちゃくちゃどもりつつ無事(?)挨拶終了。

メリアーナの緊張がヤバい。

初対面の人と上手く話せないのに何故隣!?


そして、隣の王子様は黒板ではなく、頬杖をついてメリアーナを見ながらニコニコしているのだが。


「……」


き、気づいていないフリをしよう。

うん。それがいい。

王子様、お勉強してくださいね。


「…ねぇ。メリアーナ嬢ってとても可愛いね」


「!!?」


なっ!何を言い出すの!?

緊張で固まってた体の首をギギギと少し隣に向ける。


教室内が少し騒がしくなった。

しかし、皆が王子様の次の言動に注目している。


「今度私とデートしない?」


「!!!?」


目を見開いて固まるしかできなかった。

オーディエンスは大興奮だ。

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