第22話 王宮でパーティー1
試験の結果が出た。
今までで一番良い成績となり、学年別の順位はなんと15位!
前世を思い出してから勉強が疎かになっていて心配だったけど、むしろアップ!?
ストライブ様のおかげね!
お礼のイッチくんマスコットを心を込めて作った。
ストライブ様にお渡ししたくて、何よりお礼を伝えたくてストライブ様の教室に向かった。
こっそり教室の中を覗くとご令嬢達に囲まれているストライブ様が見えた。
…やっぱりモテるわよね。
あっ!あのご令嬢、くっつきすぎじゃない!?
それにあのご令嬢も!
ストライブ様が困ってるのが分からないのかしら!?
…困ってる…わよね?
ハラハラしながら廊下から覗き込んでいる私に声を掛けてくれる人がいた。
「フフッ。お呼びしましょうか?」
「!?」
「メリアーナ・クリスク公爵令嬢ですよね?私はレイの友人のアレックス・ヴァリテです」
長い赤い髪に黒い瞳の長身の男性だった。
「は、はじめま、まして…」
極度の人見知り発動!!
そうだった!一人で知らない教室に向かうとは!
人見知りメリアーナにはまだ早かった!!
カチーン!と固まってたらヴァリテ様がストライブ様を呼びに行ってくれた。
いい人だったー!
「レイ!可愛いお姫様が来てるぞ」
一斉に教室にいる人達がこっちを見た!
ストライブ様の周りにいるご令嬢達の目が怖い!
ビクッとして教室の扉の陰に隠れた。
怖いよー!!
「クリスク公爵令嬢!」
ストライブ様が近くに来てくれた安心感で、ホッとしたため息をはき、ふにゃりと笑顔が出る。
「!!」
ストライブ様の頬が少し赤くなった。
「…貸しだからな」
ヴァリテ様はポンッとストライブ様の肩を叩いてまた教室に戻った。
「…行きましょうか」
手で顔を隠していたストライブ様が連れて行ってくれたのは中庭だった。
「どうぞ」
空いているベンチにハンカチを敷いてくれた。
隣に座っていると勉強会の時にストライブ様の肩に寄りかかって寝てしまっていた時の事を思い出す。
『そろそろフレッド様が迎えに来ますよ』と起こしてくれて。
すぐ近くにストライブ様の顔があって驚いたわ!
蕩けるような笑顔で!!
私ってば肩と腕にくっついて眠りこけてたわ!!
温かくてとても良い香りがして…!!
思い出して顔が赤くなっていたら、ストライブ様が上着を掛けてくれた。
「え?あ、ありがとうございます」
暖かいわ。それにこの香り…このあいだも。
「風が少し冷たいので」
微笑みながらサラリと言う。
ベンチにハンカチを敷いてくれる事もそうだけど、こんな事お兄様以外にできる人がいるとは!
貴族令息ってやつは…。
さりげない優しさがとても様になってて格好いいけど!!
恥ずかしさを俯いて誤魔化す。
「クスッ。試験の結果の事ですか?」
恥ずかしがってるのがバレた?
余計恥ずかしい!
「は、はい。今までで一番良い成績を残す事ができました。ストライブ様、本当にありがとうございました」
お礼を伝えた。
「そ、それで…こちらを」
イッチくんマスコットをラッピングした包みを取り出す。
社交辞令で欲しいって言っただけかもしれないけど。
「あの可愛らしい人形ですね。嬉しいです」
受け取ってくれた!
良かった!
「あ、あとこちらも」
「これは?」
「私が焼いたクッキーです。先日はうちの料理人にお願いしたのですが、今回のクッキーは自分で焼いてみました」
「……」
「あまり美味しくないかもしれませんが料理人に教えてもらいながら作りましたので」
手作りしてお礼を伝えたかったのだ。
「ありがとうございます。…食べるのがもったいないですね」
私の手のひらの上にあるクッキーの包みを見ている。
「…本当に嬉しいです」
クッキーを私の手ごとストライブ様の両手で包み込み、私を見つめる。
「ストライブ様?」
眉を少し寄せた泣きそうで、切なそうな瞳。
どうしてそんな瞳で私を見るの?
また目が離せなくなる。
どうして?
ドキドキと心臓が煩い。
人見知りのドキドキとは違う感じ。
胸が甘い痛みで苦しいような…。
「クリスク公爵令嬢、お願いがあります」
「え?」
「今度の王家主催のパーティーであなたのエスコートをさせていただけませんか?」
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