第46話 お姫様を救え!5

ジャガーに掴まれていた腕がかなり痛い。

押し込まれた箱には体を丸める姿勢で入っていたが、大きく揺れるたびに体がぶつかったので肩や背中も痛い。

無事に出られるのだろうか?

本当にこのまま私をここに閉じ込めて暮らすつもり!?


部屋にはメイドがひとり。

でも扉の外にも誰かいるみたい。

どうにか逃げられる方法を考える。


夕食を一緒にとアイツが来たけど断固として行かなかった。

メイドがくれるお茶だって飲みたくない。

なぜか食べ物をやたら勧めてくる。

そんな物は何が入っているか分からない!


窓から見える外の景色はもう暗い。

この屋敷の外は森に繋がっているようだが、外に出られたとして迷うだけかもしれない。

しかもこの寒い季節に夜の森に入るなんて。

でも逃げないと!


コンコン


ビクッとして体が固まる。

アイツまた来たの!?


「メリアーナ!さぁ美味しいお菓子はどうかな?お茶も淹れよう」


笑顔で私の隣に座る。

イヤー!気持ち悪い!!


「いらないわ!」


メイドが淹れたお茶をジャガーが私に飲ませようとカップを近づけてきた。


「嫌っ!!」


手を振り払う。

お茶のカップが勢いよく床に落ちて割れた。


ガシャンッ!


「あぁ!火傷はしていないかい!? 」


ジャガーが私の手を取り確認する。


「手を見せてごらん。ああ良かった!大丈夫そうだね。新しくお茶を淹れよう」


うっとりとした目で手をゆっくりと撫でられる!

ヒェー!気持ち悪いんだってば!


ジャガーから距離を取りながら、割れたカップを片付けるための箒を持ってきたメイドをチラリと見る。


「僕のメリアーナ。君に会えなくて本当に寂しかったよ。最近やっと学園に復学したのに、なぜストライブのヤツなんかと一緒にいたんだい?悪い人だ…」


私の髪をすくい上げてギラリとした目で私を見る。

怖い!触らないで!


「君がひとりになる時に話かけようとしたんだよ。でも君はひとりの時間が短くてね」


ジャガーが悲しそうな表情でため息をつき首を横に振る。


「でもこれからは僕と一緒だよ」


ニヤッと笑いお菓子が並んでいるお皿からを何かをすくい取り、それを私に食べさせようと口元に持ってきた。


絶対にイヤー!!


ソファーの端まで逃げたけどもう後ろに動けない!

顔を背けて口に入れられないようにした。


「アイツとの噂なんてもう聞きたくない!君は僕と結婚するんだ!」


グイッと私に近付き、私の顎を掴み口を開けさせてスプーンを入れられた!


「ーーーッ!!」


表面にジャムのようなものが塗られていた。

甘みと苦味が口の中に広がる。


「うっ!」


変な味!!

慌てて口元を制服の袖口で拭う。


私は渾身の力を込めてジャガーを押し退けた!

割れたカップを片付けているメイドのところへ走り、箒を奪い取った。

そしてジャガーに向かって箒を両手で握り、構える!

箒の先はジャガーに向かっている。


「何の真似だい?」


乱れた息を整えつつ、心を落ち着かせる…。

ふぅと息を吐き、目を閉じて精神統一。


カッ!と目を見開く!


「日本の伝統武道、剣道!」


竹刀を構える体勢で箒を構える!

ちょっと短いけど、武器にはなるわ。


「遠い昔に習っていたのよ!」


芽衣は試合に出れることは少なくて、他の部員ほど剣道は上手くならず、しかも中学生までしか習っていないけど。

でも剣道の強豪校だった剣道部の厳しい稽古を必死に頑張っていたんだから!

なんとかなるはず!

ストーカーから逃げる為には戦うしかない!


「成敗してやる!」


メリアーナの体力じゃ無理かもしれない。

やつれててもジャガーは男性だし。

でもここから脱出してレイ様に会いに行く!!


ジャガーをキッと睨みつける!


レイ様!力を貸して!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る