第42話 お姫様を救え!1

コンテストに出場する事を里英ちゃんと早苗様に伝えた。


「それは大変ね。こちらは気にしないでいいですよ」


「そうよ!ストライブ様とメリアーナ様のおかげで賑わったわ!マクラナ伯爵家にも学園と契約した以外の注文がたくさん入りそうよ!」


学園とは契約済みなんだ。

今回の学園祭は里英ちゃんの商才が冴え渡ってるわね。


「片付けは明日の予定ですし、もう少しでこちらは終わりですのであとは大丈夫ですよ」


学園祭のイベントに関しては特に他人事ではないふたり。

ぜひ協力しなきゃ!と言ってくれた。


コンテストは講堂Aで開催される。

講堂Aの控え室へ向かいながら、急に出場する不安が募る。

メリアーナの人見知りは以前よりはマシになったが、まだまだだ。

大丈夫かな…?


「レイ様…緊張しますね」


「ごめんねメリアーナ。カタリナ様には昔からお世話になっているから断りきれなかったんだ」


ヴァリテ家とは昔から家族ぐるみで付き合いがあるそうだ。

3人は幼なじみらしい。


「いいえ。レイ様のお知り合いですもの。私も力になれることがあれば…嬉しい…です」


あれ?なんか最後におかしなことを!

頬を片手で押さえて俯く。


「ありがとう」


レイ様は嬉しそうに微笑みながら私の手を繋いだ。

レイ様の笑顔で不安が少し和らぐ。

きっと大丈夫よね。勇気が湧いてきた!



控え室は舞台の左右で男女別になっていた。

立候補者達は気合いの入った服装だ。

私達は今着ている学園の制服姿。

名前が呼ばれるまで控え室で待機する。


「ではメリアーナ、またあとで。話をしたいことがあるから終わったら花の温室に一緒に行こう」


「はい。では後程」


話って何だろう。

でもまた温室で一緒にいられるのね。

フフフッと笑みが出る。


控え室に入って暫くするとコンテストのスタッフである生徒が来て、このあとの流れを出場者に説明してくれた。

そしてコンテストが始まった!

それぞれ名前が呼ばれて控え室から出ていく。

持ち時間は5~10分程度で、自分の魅力をアピールするようだ。

たくさんの人が見に来ているようで歓声もすごい。

お化粧もバッチリでお洒落をしている出場者達は次々と舞台に出て行く。


舞台袖からチラリと覗く。

あっ!マイクを使っているわ!

きっと学園祭が始まる前に学園と契約したのね。

イチオシ堂の店舗スタッフ時代の里英ちゃんは販売スキルが抜群だったものねと感心する。


私は急遽決まったから最後に名前が呼ばれるらしい。

もうすぐだわ!

控え室の椅子に座り、ポケットに入れていたピンクのリボンつきのイッチくんマスコットを出して心を落ち着かせる。

大勢の前に出るって緊張するわ。

名前が呼ばれて舞台に上がったあとは、すぐ後ろに下がろうと決める。


ここは講堂Aだから昨日レイ様が演奏をした場所だ。

私も客席で見ていた。

思い出すと緊張とは別のドキドキがまた…。

イッチくんをギュッと両手で包み込む。


控え室には私だけになった。

次はいよいよ私ね。


バンッ!!


バタバタッ!!


「え!?」


急に裏口の扉が開き複数の足音がした。

後ろから口元に布をきつく当てられて頭の後ろで結ばれた!


「んん!!」


痛い!強い力だわ!!


「静かにしろよ。騒ぐとロクな事がないぞ」


え!?男の人の声!?


「早くしろ!」


大きな男の人が私の両手を背中の後ろで、そして両足も動けないように縛る。

大きな黒い布を頭からバサリと掛けられ体全体に巻きつけられた!


「よし!運び出すぞ!」


「おう!」


私は簡単に持ち上げられ、何か箱のような四角いものに押し入れられてしまった!


ガタン!!


箱にぶつかって痛い!


「おい!気をつけろ。傷つけないように言われただろ!」


え!?どういうこと!?


箱ごと持ち上げられたようで体も浮く。

運び出すって何処に行くつもり?


「!!」


何かの演出!?

でもこんなの聞いていないし、これってもしかして誘拐?

貴族の子供達が通う学園だし、あり得なくもない。

学園祭に紛れて荷物として運び出すつもり!?


どうしよう!!

何処まで行くの?

声も出せず、恐怖で震えて固まる。


バタバタと複数の足音が聞こえる。

何かの扉が開く音がしてまたバタンと閉まる。


「ここに固定しろ!」


私が入っている箱を何かに置いたようだ。


「急げ!!」


蹄の音が!?馬車に乗せられたの!?

急にガクンと馬車が動き出した!

嘘!?学園から離れてしまう!

レイ様!どうしよう!!



しばらく馬車は走り続けた。

どのくらい走っただろうか。

よく分からないが2~3時間は経過しているような感覚だ。


「気をつけろよ!怪我させたら報酬が貰えないんだからな!」


「へいへい。分かってるよ」


「お嬢ちゃんもかわいそうになぁ。あんな坊っちゃんに気に入られちまって」


複数の男達の低めの声が聞こえる。

坊っちゃん?


止まったと思ったら扉が開いた音がして、また体が浮いて運ばれる。


「この部屋に置けとの指示だったな」


ゴトッ!


何処かに置かれた。

こ、怖い!!


「俺達はここまでだ。行くぞ!」


バタバタと去っていく足音がした。



「……」


静かになった。


このあとはどうなるの?

視界は暗いまま、手足も縛られて身動きが取れない。

声を押し殺して泣くしかできないなんて!


ガチャリ…


扉が開いたような音がした!

こっちに向かって来てる足音もする!

レイ様!!お兄様!!助けて!!



ガタガタガタッ!


「!!」


箱の蓋が開いた音がして、私に巻きつけていた黒い布がバッと外された!


「ああ!私のメリアーナ!怖い思いをさせてごめんね」


「!!!」


驚きで目を見開く。

そこには元婚約者のジャガー・ダンテがいた。

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