第30話 2/22 受験と受験を終えて
2023年2月22日 水曜日
朝
俺は、いつもよりも1時間早く食事をとっていた。
理由はもちろん、受験があるから。
俺は、緊張感を持って最後の荷物の確認をするために自分の部屋へと向かった。
よし。忘れ物は無いな
俺は、自分の部屋で確認を終わらせた。
後は、携帯を持つだけだと思って机の上を見る。
ピロン
携帯の着信音が聞こえた。
誰だろう?
<メッセージアプリ>
リンーみんな頑張ってね!
ASUKA―ありがと
鉄平―任せとけ
優気―ありがとうね
さくらーありがとうね、凛!
内容は島田さんからの応援メッセージだった。
俺は、もう一度気合を入れ直して玄関へと向かった。
受験会場に着くと、そこには既に何人物人が来ていた。
みんな、それぞれ参考書を広げている。
こうやって見ると、みんな自分よりも頭が良く見える。
本命の公立受験ということもあって、緊張は私立受験の比でなかった。
それに、今回は近くに鉄平がいない。
メンバーそれぞれ志望校が違う。
でも、こんなことで不安になっていたら後でいつものメンバーに笑われてしまうだろう。
俺は、さっきのみんなからのメッセージを思い出しながらもう一度気合を入れ直す。
そして、今までの努力を信じて、使い古されたお気に入りの参考書を開いた。
昼
午前中に3教科が終わった。
残りは理科と社会だけだ。
正直、終わった教科の手応えは普通だった。
良くも悪くもない。
俺は、参考書を開いて理科の用語集を読み始めた。
放課後
ついに受験が終わった。
正直、最後の社会が終わった瞬間は叫びたい気分に駆り立てられた。
もう、テスト内容がどうだったかなんて気にならない。
だって、今までにないくらいの解放感があったから。
一夜漬けをする期末テストとはわけが違う。
俺は、解散の連絡を教室監督の先生から受けると、携帯の電源を真っ先に入れた。
そこには、いつもと見慣れたホーム画面があった。
そして、迷わずにメッセージアプリを開く。
けれども、誰もメッセージが送られていない。
そして、首を傾げた瞬間奥川さんからメッセージが届いた。
すると、それを皮切りにして他のみんなからも続々とメッセージが届いた。
<メッセージアプリ>
ASUKA―みんな、お疲れ!
さくらーお疲れ!
鉄平―おつ
優気―お疲れ様!
リンーみんなー、お疲れ様‼
鉄平―おう
リンーみんな、この後時間ある?
鉄平―俺は、大丈夫だ
優気―俺もいいよ
ASUKA―私もおけ!
さくらー私も大丈夫だよ
リンーよし、じゃあ取り敢えずみんなでお疲れ会しよう‼
鉄平―いいぞ
ASUKA―じゃあ、どこでする?
リンー学校近くにあるカフェで良いんじゃない?
ASUKA―おけ!
リンーじゃあ、場所が書かれた地図を送っとくね‼
鉄平―おう
メッセージはここで一区切りつけられた。
最初に思った感想は良かっただった。
返事がすぐに来たし、内容から察するに受験に大失敗した人はいなかったのだろう。
俺は、メッセージの内容を何度も思い返しながらカフェへと向かった。
俺は、家が通り道にあったので、集合場所のカフェに行く前に荷物を置いてきた。
そして、カフェに到着した時に俺以外の全員がいた。
「やっと来たね!」
「遅れちゃったかな」
「大丈夫だよ!」
島田さんが心なしかいつもより明るい声で迎えてくれた。
奥川さんは手を振って、鉄平は小さめにようと言わんばかりの手を出した。
それに対して、俺は手を少し大きめに振った。
「お疲れ様」
「ありがとう、平野さん。こちらこそお疲れ様」
平野さんも早速話かけてくれた。
けれども、平野さんとは昨日会ったけど、まだ最近会えていないこともあってぎこちなさも抜けていなかった。
こんな調子でいつか告白できるのか?
俺は、少し不安にもなったりした。
「それより、これからの話をしようよ!」
けれども、俺の不安をよそに島田さんは笑顔で話を始めた。
島田さんは私立受験で終わりだったとはいえ、みんなの受験で心配もあったのだろう。
「いいね!」
奥川さんは、いつもよりも明らかに明るく元気な声で返事をした。
奥川さんも島田さんの気持ちに気が付いていたところもあったのだろう。
その心配も今日で必要無くなる。
でも、正直元気よすぎな気もするけれど。
「ねえ、みんな何かしたいことある?」
島田さんはみんなの顔を一周して見た。
「私、水族館行きたい‼」
そして、誰が答えるよりも早く自分の質問に対して自分で答えた。
「自分で聞いておいて自分で答えるのかよ」
「いいじゃん!」
「まあ、別に俺は構わないけどな」
鉄平のいつもより確実に機嫌が良かった。
「私も」
「俺も」
「私もだね」
鉄平に追随する形で残りの俺たちも賛成した。
「それじゃあ、いつにする?」
「入試は終わったけど、平日は学校があるよね」
「そうだね」
「じゃあ、今週の土曜日はどう?」
「いいね!」
俺たちは、全員首を縦に振った。
「それじゃあ、土曜日に決定‼」
「せっかくなら日曜日も遊ぼうよ!」
「何する?」
俺たちは、それぞれにぱっとアイデアを出すことができなかった。
まあ、いろいろあったけど最近は勉強のことを考えることが多すぎた。
そのせいで、あまり遊びらしい遊びのアイデアがすぐには出てこない。
そうやって悩んでいると、平野さんが小さく手を挙げた。
「花火なんてどうかな?」
「花火?」
真っ先に反応したのは俺だった。
だって、まだ2月だし。
「花火は流石に、難しくない?」
奥川さんも少し厳しい表情をしていた。
そう言えば、平野さんは花火が好きだって前言っていた気がする。
「俺、花火の道具なら持ってるぞ」
「マジで!?」
「ああ。夏に親戚の子供と花火をやるつもりだったんだが、コロナでできなかったからその分なら家のどこかにあるはずだ」
「いいね!それ採用‼」
島田さんが左手でグッジョブの形をした。
「それじゃあ、日曜日は花火で決定だね‼」
そう言うと、早速島田さんは自分の携帯を出した。
おそらく、携帯のカレンダーに記録しているのだろう。
「それじゃあ、土日の予定はこれで決定だね‼みんな忘れないようにね‼」
「凛ちゃんにだけは言われたくないけどね」
奥川さんが島田さんに対して冗談めかして言った。
「ひーどーいー‼」
島田さんは、それに対して左隣にいる奥川さんの腕を軽くポンポンと叩く形で抵抗をした。
俺たちは、そのままカフェで2時間くらい雑談をして受験のお疲れ様会は解散となった。
俺たちは今までにないくらいにテンションで帰り道を歩いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます