第23話 2/15 島田さんの勘

2023年 2月15日 水曜日 第3週目


「ねえ、今日はみんなで食堂に行かない?」

「いいね‼」


 俺たちは、欠席の平野さんを除くいつものメンバー全員で食堂に行くことにした。






 俺たち4人は全員で食堂までの道を歩いていた。


「珍しいな。島田が俺たちを食堂に誘うなんて」

「まあね!」

「何かあったのか?」

「昨日のお詫び……」

「なるほどな。つまりは島田の奢りってことか」

「そうだよ‼優気は好きなの選んでね‼」

「ありがとう」

「俺はどうなるんだ?」

「えっ、自腹?」

「扱いの差がひどくないか?」

「冗談だって‼」

「ならいいんだ」

「明日香ちゃんが奢ってくれるから‼」


 そう言うと、島田さんは奥川さんの方をぽんぽんと叩いた。


「任せておいて!素うどんくらいなら奢ってあげる!」

「食堂で一番安いやつじゃねぇか!」

「税抜き150円もするんだよ‼」

「優気と差がありすぎるだろ!」

「まあ、それは日頃の行いの差ってやつかな」

「俺何か悪いことしたか⁉」


 何だかかんだで俺たちは食堂まで着いた。

 







放課後

「よっし!学校も終わったしみんなで帰ろう‼」


 島田さんが奥川さんに抱き着きながら俺たちのところにやってきた。


「いいぞー」


 鉄平が居眠りの罰としてやっている練習問題を書きながら答えた。


「ごめん!今日はちょっと寄らないといけないところがあるから」


 そう言うと、奥川さんは荷物をまとめて教室を抜けていった。


「えぇー‼」


 島田さんは不満のようだったけど、それを聞く前にさっと出て行ってしまった。

 俺たちは鉄平の課題の終わりを待つことにした。










「ねえ、絶対に奥川さん何か隠してるって‼」


 奥川さんが帰ってから10分くらい経った頃だろうか。

 島田さんは水筒の水を飲みほしてダンッと少し強めに机の上に置いて言った。

 俺も思わず体が反応した。

 土曜日のことは誰にも言っていない。

 やっぱり島田さんも奥川さんがおかしいと思うのだろうか。


「隠してるって何をだ?」


 それに対して鉄平は淡泊な声で聞いた。

 課題を片手に。



「分かんない‼」



「俺もお前の言いたいことが分からない」

「だって、理由も言わないであんなに急いで帰るのにはきっと訳があるはずだよ‼」


 島田さんは俺に向かってビシッと左の人差し指を突き付けた。


「普通に誰かと会う約束でもしていたんじゃない?」


 俺は、当たり障りのない質問に留めておいた。

 流石に、土曜日のことを他の人に話すわけにはいかない。


「誰かって誰?」


 まあ、当然そうなるよね。


「分からない……」


 俺は、こうやって返すことしかできなかった。


「普通に友達じゃねぇのか?」

「なら、学校の中で良いじゃん‼」


 そう言うと、島田さんは少し考えた表情をした。

 そして、両手をパンと叩いた。


「そうか‼」

「何か分かったのか?」


 もう、鉄平に関しては課題の合間に聞き流している程度だった。

 でも、俺は凄く真剣に答えを聞くことにする。

 だって、島田さんが気付いた今年次第では最近の奥川さんの言動の意味が分かるかもしれないし。


「それは……」


 俺は、ごくりと息を飲んだ。

 俺たち3人しかいない教室が静まり返った。


「彼氏だ‼」

「そんなまさか!?」


 俺は、思わずすぐに反応をしてしまった。


「そうかな!?てか、優気は反応早くない!?」

「えっ、そうかな?」


 思わず後ろに目を逸らした。


「何か隠しているの?」


 島田さんがこちらに迫り来る


「いや、別に……」


 俺は、少し椅子の一を後ろにずらした。

 やばいかな。

 島田さんはこのままだと絶対に話しをするまで解法してくれない気がする。


「それくらいにしとけ」


 俺のピンチを助けてくれたのは、課題を持った鉄平だった。


「課題が終わったから帰るぞ」

「待ってよ‼優気は何か知ってそうじゃない?」

「俺は別に……」

「本人が何も知らないって言っているんだし、何もないんだろうよ」


 俺は、何も言うことができない。


「まあ、優気がそう言うなら仕方ないね‼今はそういうことにしておいてあげる‼」


 そう言うと、島田さんは自分の荷物を持った。


「よし‼帰ろっか‼」

「そうだね」

「おう」


 俺たちは、3人でいつもの通学路を帰った。




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