第17話 2/11 デート?2 <お昼ご飯?>

 俺は、奥川さんの指示で海の心水族館の前まで来ていた。

 俺は一体何をやっているんだ……。

 奥川さんを待ちながらこの気持ちに何度苛まれたか分からない。

 てか、何で俺とデートなんだよ。

 奥川さんの恋愛事情には詳しくないけど、あの性格と容姿ならデート相手を探すのにも困らないだろうに。

 というより、普通に考えて俺とデートする理由に心あたりがない。

 まさか、奥川さんの本命のための練習台にされているのか。

 帰ろうかな。

 俺は携帯をポケットから出したことろで、両肩にばっと重くて柔らかい感触が伝わる。


「やっほ!待ったー?」


 奥川さんがやっと来た。


「まあ。15分くらい」


 俺がそう言うと、奥川さんはやれやれといった様子をしていた。


「やり直し」

「えーー」

「うそだよ!中に入ろっか!」


 奥川さんは俺の手をつかんで水族館の中へと連れて行った。

 こうやってさらっと手を繋げるところは流石だな。

 こういうのを異性の友達にさらっとできるのは素直に俺も見習いたい。

 そして、平野さんとやってみたい。



 まあ、どうせできないだろうけど‼











 俺たちは水族館の中へと入っていった。


「ねえ、見て。なんだかすっごく大きな魚がいるね!」

「そうだね。あれはジンベイザメかな」

「優気は意外と魚に詳しいんだね」

「まあね……」


 俺は、少し照れて軽くほほをかいた。

 魚の知識なんて日頃出すことがないからこういうときに褒めてくれるのはすごく嬉しい。

 俺は、ちょっと来てもよかったかなと思った。

 まあ、欲を言えば平野さんに言ってほしかったけど。

 流石に平野さんを2週連続でどこかに誘う勇気はない。

 結局、俺たちはその後もいくつかの水槽を2人で覗いた。











 

 時刻は14時くらいだろうか。

 俺たちは、なんだかんだ楽しんで3時間くらいは魚を見ていた。

そして、今は水族館の2階にあるフードコートに来ている。


「何にする?」


 俺は奥川さんに聞いた。


「優気のお任せで」


 奥川さんは少し上目遣いで挑発するように言ってきた。


「じゃあ、水で」

「からのー?」

「水」

「からのーー?」

「水」

「からのー――?」


 どうやら俺が水以外を言わないとこのやり取りは終わらないらしい。

 俺は近くにあったメニュー表を軽く見た。


「コーラでいいか」


 俺は、奥川さんの気持ちに根負けしたような態度で答えた。


「なんで飲み物なの!」


 どうやら不服らしい。


「いや、水以外も欲しいって言うから」

「メニュー表まで見たんだからもっとあるでしょ!」

「その結果がコーラ」

「もう!」


 奥川さんはそう言いながら少し怒りながらも笑顔を絶やすことはなかった。


「優気が選ぶのを楽しみにしとくからね!」


 俺は、もうなんでもいいやと思って分かったと言った。


「それじゃあ、俺が注文してくるから先に場所とってて」

「ありがと!」


 そういうと、奥川さんはテーブルの方へと向かった。

 結局、流れで昼ご飯まで食べているけど俺はこんなんでいいのだろうか。

 昨日、平野さんにあれだけ努力が大切だって言っておきながら自分が勉強していないってことじゃ示しがつかないような……。

 俺は、こんな感じのことを思いながら店員さんに注文をした。









「お帰り、優気!」

「ただいま」


 俺はそういうと、奥川さんの向かいの席に座った。


「何買ってきてくれたのー?」

「何だと思う?」


 俺は、絶対に分からないだろうと思って聞いた。

 一応、見た目からハンバーガーだということはわかるけど、中身までは流石に無理だろう。


「ハンバーガー」

「正解」

「やったー!」

「おめでとう」

「「……」」


 奥川さんは元気に声を上げて喜んだポーズをしてから止まっていた。


「え?」

「どうした?」

「いや、今の流れはハンバーガーの中身まで当てるべきだよね!?」

「まあ、奥川さんが喜んでいたから別にいいかなって」

「いやいや、もっと聞こうよ!」

「それじゃあ、何味だと思う?」

「フィレオフィッシュ‼」

「は?」


 俺は、思わず素の反応をしてしまった。


「正解でも不正解でもない『は?』ってなに??」


 奥川さんはすごく混乱しているようだった。

 いや、正直混乱しているのは俺の方だった。


「ちなみにどうしてフィレオフィッシュだと思った?」

「なんだか優気が食べたそうにしていたから!」


 マジか。

 当たってるぞ。

 すごいな。

 エスパーか?

 それとも、これが女の感ってやつなのか!


「それで、どうなのー?開けてもいい?」


 奥川さんはそう言いながら手前置いたハンバーガーを手に取った。


「どうぞ」


 俺は降参した動きをして言った。


「やったー!」


 奥川さんは無邪気な子供のようにハンバーガーの包みを開けた。

 入っていたのはチキンバーガー。


「は?(2分ぶり本日2度目)」

「あちゃー。チキンだったか!優気のことだから魚見た後は絶対に魚食べると思ったのになー‼」


 いやいやいや。


 確かに俺はフィレオフィッシュを2つ買ったはずなのだが。

 俺の方を開けてみる。

 中身はフィレオフィッシュだ。

 あれ……?

 店員さんのミスということか。


「流石は優気だね!完全にフィレオフィッシュ買ったと思ったよ‼」


 奥川さんはすごく感心した様子だった。

 俺はどういう反応をしていいのかわからず、まあねとだけ軽く言った。

 そして、俺はフィレオフィッシュバーガーを食べ始めた。


「そういえば、生きている魚を見た後でフィレオフィッシュバーガーを食べることに優気は抵抗ないの?」

「別に」

「私は、かわいそうだと思うなー」

「なんで」

「だって、この魚ってもしかしたら水族館で泳いでいたやつかなとか思っちゃうじゃん」

「いや、それはないでしょ」

「そうだけど!」


 奥川さんはチキンバーガーを食べながら抗議をした。


「ちなみに俺が奥川さんにフィレオフィッシュバーガーを買ったらどうしてたの?」

「優気のやつを半分もらっていた」

「俺もフィッシュだったら?」

「心の中でごめんなさいって言っておいしく頂く」

「結局、食べてるじゃん」

「まあ、細かいことは気にしないの!そんなことじゃ、桜ちゃんに嫌われるよ‼」


 奥川さんびしっとハンバーガーを持っていない左手で俺を指さした。


「分かってるって」


 俺はそう言ってフィレオフィッシュのハンバーガーを食べ始めた。







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