第32話 2/24 告白の協力者
2023年2月24日 金曜日
放課後
今日も卒業式の練習だけだったので、帰りは午前中だ。
平野さんを除く4人で帰ることになった。
「ねえ、明日ってどこ集合にする?」
奥川さんは俺たち3人に話を始めた。
「いつものバス停のところで良いんじゃないのか?」
「そだね!」
「凛ちゃんと優気もそれでいい?」
「おっけーだよ‼」
「俺も大丈夫だよ」
「場所は、どこの水族館にする?」
島田さんはどこがあったっけーと言いながら頭を悩ませていた。
「まあ、ここら辺なら海の心水族館しかないんじゃないのか?」
鉄平が素早く教えた。
「まあ、そうだね」
「それじゃあ、そこに決定だね‼」
島田さんは元気よく俺たちに笑顔を向けながら言った。
「いいんじゃない」
奥川さんも賛成のようだ。
「俺も良いよ」
「俺も」
俺と鉄平にも特に異論はなかった。
「後は桜ちゃんが来れたら完璧だね‼」
「だな」
「平野さん、最近大丈夫かな。入試は何とか来れたみたいだけど、休みが増えてない?」
「そうだね……」
さっきまで明るかった奥川さんはどこか暗くなったように感じられる。
「まあ、桜ちゃんならきっと大丈夫だよ‼」
対照的に島田さんの方は平野さんの話題に対して明るくなったみたい。
俺たちは信号機が青になったのを確認して渡ると、奥川さんの家の前まで来た。
「それじゃあ、私はここで」
「おう」
「またね」
「また明日」
そう言うと、奥川さんとはここでお別れとなった。
俺たち3人はじゃんけんの結果、まずは島田さんの家まで行くことになった。
「もうすぐ卒業だねー」
最初は3人とも無言だったけど、島田さんは何も考えていないような感じで話を振った。
「そうだな」
「そうだね」
俺たちはそれに対して相槌を打った。
「ねえ、2人はこのまま卒業でもいいと思う?」
「良いも何もあと数日で俺たちは卒業だろ」
「そうだけど‼」
島田さんは少し身振り手振りを使って何かを表現していた。
「何が言いたいんだ?」
「何かもっとこう欲しいよね」
島田さんもはっきりとは決まっていないらしい。
「何かって何を?」
思わず俺も奥川さんに聞いた。
「それを今から考えようよ!」
「今週に水族館と花火があるだろ」
「もっと、青春らしいことは無いの⁉」
島田さんは目をギラギラさせてこっちを見ていた。
いや、そんな目をされても何かする予定は……。
俺の思考が一瞬止まった。
そして、鉄平を見るといつもの余裕そうな表情でこちらを見ている。
「どうしたの優気?」
「いや、別に……」
「あれ、鉄平もどうしたの?」
「何でも無いぞ」
鉄平は必至に笑いをこらえているようだ。
「うーそーだー‼」
「いや、本当だよ」
俺は島田さんと目を合わせることができなかった。
目を合わせると、全てを見透かされるような気がしたから。
「何かあるでしょ‼」
やはり、これでは島田さんは納得してくれないようだ。
鉄平は目で何か合図を送っている。
いや、口で言えよ!
「なあ、優気。別に話をしてもいいんじゃないか?」
俺の心の声を察したのか、鉄平は思っていることを口に出した。
「いや、それは……」
俺は、少し考えこんだ。
「島田にも協力してもらえばいいだろ」
鉄平は追い打ちをかけるかのように俺にアドバイスをした。
「優気のお願いなら何でも協力するよ‼」
島田さんは、協力するつもりらしい。
まだ、何も言っていないのだけど。
まあ、言っておいた方が何かの時に助けになるかもしれないし……。
「分かった。教えるよ」
俺は、平野さんが好きだということも含めて昨日のことを全て話した。
数分後
「そうだったんだ‼それなら、私が協力してあげるよ‼任せて‼」
「ありがとう」
やっぱり好きな人のことについて話すのは恥ずかしい。
でも、島田さんは決して笑ったりしなかった。
話したこと自体に後悔はない。
「それで、告白はいつにするんだ?」
「それは、、」
チャンスは土曜日と日曜日の2回。
正直、自分でも悩んでいた。
「それなら、日曜日が良いんじゃない?」
「そうかな」
「だって、花火の後で告白とか絶対に心に響くよ‼」
「確かに……」
それは一理あるな。
「それに、土曜日失敗したら日曜日花火どころじゃないだろうし」
「だな」
「よし、日曜日に決定!」
そう言えば、そのことをすっかり忘れていた。
俺は、この勢いに任せて決めた。
流石に、もし振られたら次の日仲良く遊ぶなんてできない。
「明日香ちゃんについてはうまい具合に2人から離しておくからね‼」
「ありがとう」
「がんばってね‼」
島田さんは、俺のために真剣に話を聞いてくれた。
そのことがすごく嬉しかった。
でも、島田さんにも話してしまったからには失敗は許されない。
振られたら、きっとみんな気まずくなってしまうだろう。
最悪の場合は卒業後に会いづらくなるなんてことも考えられる。
「それじゃあ、私はここで‼」
元気よく家へと向かう島田さんを、手を振りながら見送った。
俺は、鉄平には見えないように明後日に向けての決意を固めた。
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