次の街へ
「ありがとうございました! リベルラさん!」
冒険者を指揮していた各部隊隊長らが集まり、皆が頭を下げてくる。
「ああ、もう良いんですよ別に……」
「はい! ありがとうございますリベルラ様!」
もう一度皆で頭を下げてきた……。困る……。
「いや、まじで驚いた!こんなにすごい人だったなんて!」
「でもなんで、今まで知られなかったんだ?」
「おい、それがよ、なんでもマンヒさんのスキル【盗賊の極意】で、リベルラさんのスキルの効果を盗んでいたらしいぞ!」
「何だって!?」
「じゃ、じゃあ何か。マンヒ様は今まで俺たちを騙してたってのか!?」
「そうなるぜ!」
冒険者達が隅っこに立ってるマンヒを睨む。
「い、いやっ違う!騙してねぇ! 俺もそんな効果だって知らなかったんだ!」
「そんなことあるか!」
「うわぁっ!」
マンヒが冒険者達に投げ倒された。
なんか大変なことになってるぞ、マンヒの奴……。
「嘘ついてんじゃねぇぞ!」
「おいマンヒ、てめぇは最低だ!」
「こいつを詐欺とギルドに対する不敬罪で捕まえるべきだ!」
「そうだ! 牢屋の中にいてもらおうぜ!」
マンヒが冒険者達に囲まれる。
「なっロッサ、お前から説明しろよ。知らないだろうがお前を罪を帳消しにしてやったんだぜ。俺ら仲間だろ?」
マンヒがこっちを見てる……。
……僕にすがってきている……。
「罪を無くしてくれたのか……」
「そうだ、感謝しろよ。仲間だからな」
「パーティに入れるために、仕方なくしたんだろ」
「おいおいおい、なんだよ、その言い方は……」
「助ける気なんてないね」
マンヒが驚愕した表情になって僕を見てきていた。
「ロッ、ロッサ! お前! お前ぇぇぇ!」
マンヒが冒険者達に縛られる。
必死に抵抗していたが、大勢で囲まれてはなすすべなく、あっという間にどこかへ連れていかれた。
◇
ガメーガンの戦いから2日が経過した。
平和になったラクマカの街で、冒険者達はこの2日間勝利の美酒に酔いしれ、今日も酔いしれるつもりらしい。
荷物をまとめ部屋を出て、階段を降りると、ギルド長と冒険者達がギルドのエントランスに集合している。
「ラクマカの街の名誉市民として、私としては一等地にリベルラ様の邸宅を建てるつもりでございます。なにとぞ受け取って貰えれば……」
「ギルド長まで、困りますよ……」
僕は申し出を断る。
「いえ、ギルド長、その邸宅はリベルラ様の別荘として、ありがたく使わしてもらいます」
ロザリンドさんが割り込んできて言った。
「ではリベルラ様に相応しいものにいたしますゆえ、ご期待くださいませ」
「心遣い、感謝いたしますわ、ギルド長殿」
「はい、ありがとうございます」
ロザリンドさんとギルド長の間で、なんか勝手に決まっている。
だいたい僕は、戦いの後にすぐに出発するつもりだった。
しかし皆は許してはくれない。
「リベルラ様は飲んでいかないのですか?どうして?」
「肉も大量にあるですぜ? ささっどうぞどうぞ!」
遠慮しておきます。
「弟子にしてください!」
「結婚してください!」
しません。
と、こんな感じだ……。
昨日出発する予定だったのが今日にズレてしまった。
「何はともあれ、出発しよう……東海砂漠の真ん中にある街だっけ?」
「はい、リベルラ様、一刻も早く行って確認したく存じます」
ロザリンドさんと同じく、魔族達が潜んで暮らしている街があるらしい。
「リベルラ様、本当に行ってしまうってのか?」
「そうだぜ、行かないでくれよ!」
「リベルラの旦那、ずっといてくださせえ!」
冒険者達がエントランスに降りてきた僕を取り囲んできた。
「これ、やめぬか!」
騒ぐ冒険者達をギルド長が一喝して黙らせる。
「リベルラ様はこれから全世界で活躍なさる者なのだ、ここに居るわけにはいくまい」
そう言うと、僕に向き直り、
「リベルラ様、私、冒険者ギルドの本部に今回の功績については広く喧伝いたします」
「ははは、ありがとうございます……」
僕は軽く頭を下げる。
「では、お世話になりましたギルド長、僕達は出発します」
「失礼いたしますわ、ギルド長殿」
僕とロザリンドさんがエントランスを横切ると、
「またいつでも俺たちの街に寄ってくだせぇ」
「そして今度こそ俺の酒で酔ってくだせぇ」
冒険者達が、深々とお辞儀をしてきた。
僕達はギルドを後にしても、見送る冒険者達のお辞儀は僕達が見えなくなるまで続いていた。
覇王の紋章~冒険者パーティを追放された無能……なのに、えっ僕にすごいスキルが隠されてたって!? 僕は魔族の姫と共に フィオー @akasawaon
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