<サイド・ストーリー> ガメーガン討伐戦 ②

 ラクマカ・ギルド3階東にある防具屋で、ロッサが自分にふさわしい装備を選ぶも、ロザリンドの大反対を受けて困っている頃。


 東海砂漠は、再び戦場と化していた――。


 ラクマカにいた全冒険者20000人が隊列を組んで命を顧みず、再び歩き出したガメーガンと対峙した。先の戦いで怪我を負った者も体に鞭打ち参加し、逃げ出したものは、ひとりもいなかった。


 全冒険者の、その眼前では、小山ほどの巨躯を持つガメーガンが、一歩一歩と、ラクマカへと近づいて来ている。早く動かねばならないのは弱者だけだ。強者は早く動く理由がない。


 鈍足であるが、その一歩脚が下ろされるごとに地割れが起きて、大地や空が震えていた。


 後ろをラクマカの壁、正面にはガメーガン……もう逃げ場はないこの場で、冒険者達は勝利を確信していた。


 マンヒは剣を抜いて、隊列の一番前に堂々、仁王立ちしている。


 と、いきなり迫りくるガメーガンに、単独で突っ込んでいった。


 ガメーガンが、牙をむき出し威嚇する。その歯の一本が砕けていた。


 マンヒは微笑み、


「その牙、全部折ってやるぜ」


 マンヒはそう叫んでジャンプし、ガメーガンへと一気に距離を詰める。


 ガメーガンが飛び掛かってくるマンヒ・シェルト氏を、踏みつけようと高々と巨大な前足を上げた。


 マンヒは、速攻でガメーガンの顔の前に移動する。


 そして剣を振り下ろした。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

      ガメーガン  


 LV:34

 HP :4891(4891)

 MP :  72(  72)

 攻撃力: 305

 守備力: 304

 魔力 :  53

 素早さ:  28

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 マンヒ・シェルト 攻撃力41プラス『オリハルコンの剣』150=191 プラス【盗賊の極意】効果で2倍に、=382


 78のダメージを与えた。


「ガメェェェェェェェォォォォォォォォォォォ!!」


 ガメーガンの額から血がピュルリと噴き出す。


 叫び声をあげ、ガメーガンがバランスを崩し、振り上げた足は膝から地面に落ちていった。


「す、すげぇ、なんて力だ!」

「さすがマンヒ様だぜ!」

「これならいける!」


 マンヒを元に冒険者達が一つになる。


「これが俺の力だ! ははははっ!」


 マンヒが剣を天に向かって掲げた。


 20000人の冒険者が、それに応えて雄たけびを上げる。


 すると、20000の戦意にガメーガンもいきり立ち、大口を開けて牙をむき出し冒険者たちを威嚇し始めた。


 冒険者たちが思わず後ずさりする。


「ははははははははははははっ!」


 そんな中、マンヒは高々に笑った。


「見ろ皆! 威嚇だけ! それだけで襲ってはこない! ビビってんだ! こいつはよ!」

「……ああっそうか……そうだった」

「そうだぜビビってるぜ! 前と一緒だ!」

「皆! 怖がることはねぇ! こっちは20000人いて、ついでにマンヒ様もいるんだ!」


 威嚇を繰り返すガメーガンに向かって、冒険者が鬨の声を上げる。


 そして、


「よし! 攻撃開始だ! 全員突っ込むぞ、俺に続け!」


 マンヒが叫んだ。


 ラクマカ・ギルド軍による、ガメーガン討伐戦が開始される。


 ガメーガンに向かって何列にも横に並んだ冒険者が襲い掛かった。その一列一列が波浪のように見え、さながら激しい津波のごとくガメーガンへと突撃していく。


 甲羅の森から、数千匹を数えるガメーガンの使役モンスターが、森から飛び出してラクマカ・ギルド軍に襲い掛かった。


 ギルド軍に作戦というようなものはない、 無類の強さを誇るマンヒをたよりに、全軍で総攻撃を仕掛けている。


 全軍の突撃を後衛の魔法使い部隊がホラノー(火球魔法)の援護魔撃を繰り出していた。


 戦場に広がっていた青空を真っ赤に変えるほどの火球が、ガメーガンに降り注いでいる。


 ラクマカ・ギルド軍は、三つの陣営に分かれた。


 正面部隊はガメーガンの顔に猛攻撃をかけ、左戦線ではガメーガンの右前脚に、右戦線では左前脚に。どの戦線でも大量の使役モンスターとの戦いが繰り広げられていた。


 マンヒは正面戦線にいて、モンスター達の隙をついてガメーガンの顔に突撃、切り傷を負わすことに成功する。


 たまわずガメーガンが顔を背けた。


 いけるかと冒険者達が思った瞬間、ガメーガンが大口を開け、炎の息を噴射。炎柱となってマンヒに襲い掛かる。


 マンヒは吹き飛ばされてしまった。


 そこへ、使役するモンスターが、一斉にマンヒ・シェルト氏に襲い掛かる。


 いくらオリハルコン製の装備、プラス盗賊の極意でステータスが倍化しているとはいえ、小さなダメージを受け続ける。


 炎の息に、四方八方からのモンスターの攻撃に、これではじり貧と、マンヒは後退を余儀なくされてしまう。


 左戦線、右戦線でもガメーガンの巨大な足の踏みつけ攻撃や、使役するモンスターの大群に、後退を繰り返すしかない。


 ガメーガンは一歩一歩、休むことなくラクマカの街へと移動をし続けている。


「マンヒ殿……これでは、じり貧です……ガメーガンを止める事を最優先に、足への集中攻撃を提案します」


 マンヒの近くにいた部隊長が、そう弱弱しく言った。


 マンヒは激しく睨みつけ、


「弱気を言ったな!てめぇみてぇのがいるから負けるんだよ!」

「はっ、すいません」


 部隊長が深く頭を下げ黙り込む。


「引くな引くな! 猛烈に攻撃していりゃ勝つ!」


 マンヒの命令に、全軍が、


「うおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!」


 雄たけびを上げ、後退を踏みとどまった。


「行くぞおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 マンヒの掛け声とともに、再び突撃攻撃を開始する。

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