<サイド・ストーリー> 一方その頃、マンヒ・パーティは⑦


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 盗賊の極意 レベル1

[パーティメンバー中、最も強いメンバーひとりのスキルを全て奪う。その際、効果は最低レベルにまで落とされる]


 今、奪っているスキル一覧

・スキル技 【力溜め】 【瞑想】 【格闘の心得】

・戦闘時バフ効果 攻撃力20%アップ 会心率5%アップ 素早さ5%アップなし

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 今、奪っているスキル一覧? 書いてあるの、これはノーノのスキルじゃないかっ?


「……マジか……? そんな……」


 これが、このダンジョンで、何かおかしかった理由なのか……。


「わかったな。ではな。おつかれちゃーん」

「待て待て待て!」


 マンヒが苦い顔をして、頭を抱える。


「なんだよ、もう……」

「おかしいぞ、これがホントなら、盗んでいた相手はロッサしか、いない……。しかし、あいつはスキル非所持だ」

「それじゃ、裏ステータスだな」


 ゴールがあっけらかんと答えた。


「なんだそりゃ……」

「まっ久々の会話だし、色々教えてやろう。それにさっきお前が盗賊の極意の能力だと、つらつらと語った勘違い能力。私にはひどく覚えがある……」

「覚えだと」

「そうだ、おそらく【覇王の紋章】だ。そいつは、あのハゲの生まれ変わりかも知れない……私をこんな目に合わせたバカだから、代わりにちょっと小突いといて」

「良いから早く話せ!」

「はいはい、えっとね……」


 しばらくして、マンヒが苦い顔をしたまま、ノーノとスコットがはしゃいでいる宝物庫へと歩いていく。


「どうしたのマンヒ様ぁ、そんな暗い顔してぇ」


 金貨を抱きしめている裸のノーノが、幸せにとろけた顔で尋ねた。


「おい皆、王都に戻るぞ」


 スコットが、散乱している冒険者の装備品の中から、よさげなのを拾って着替えていたのを中断し、


「この金貨を献上してきましょう、ランクも上がりますよ」


 と笑顔で上機嫌でマンヒに相槌を打って、最高級シルクの黒ローブを着込んだ。


「そうだな。そして皆、よく聞いてくれ、このダンジョンでの、俺の不調の理由が分かったぞ」

「えっ分かったのですかっ?」

「そんなの、もうどうでもよくなーい?」

「よくないっ。ノーノも早く着替えるぞ馬鹿。着替えながら話してやる。信じられない事と思うが事実だ」


 マンヒとノーノがスコット同様、よさげなのを拾って着替えだす。


 スコットは黒いローブに三角帽子。ノーノはビキニアーマー。マンヒはオリハルコンの鎧。どれも特級防具という身なりで整え、落ちていた大袋に金貨を詰めていった。


 ついでにマンヒは、オリハルコンの剣も見つけ装備する。どれも攻撃力と防御力をプラス150という、とんでもない代物だった。


 詰め終わり、迷宮ダンジョンを後にしようとしてマンヒは、ノーノとスコットに向かって、


「という事で、ロッサ抜きでは俺の能力がガタ落ちだ。このパーティでは五つ星まで行けない。ロッサが必要なんだ」

「でもさ、あいつは牢屋じゃないの?」

「そこでギルドへ行く。今回の俺たちの功績を使い、報酬としてあいつを釈放してもらう」

「せっかくの報酬を、そんな事のために使うなんて……」


 スコットが渋い顔をした。ノーノも渋い顔をして不満をあらわにする。


「あいつのスキルを奪う必要があるんだ、そしたら栄光は全て俺達のものだ。何、すぐに新しい報酬に巡り合えるさ。今回は我慢だ」

「しかし、ロッサはまたパーティに戻って来るでしょうか?」

「そうよね。嫌がると思うなぁ」


 マンヒはグッと拳を握った。

 

「もし、ロッサが仲間に入らないと抵抗するなら無理やりパーティメンバーにする! メンバーにして監禁状態にしてやれば良い。ロッサのスキルを奪えれば良いだけなんだからな!」


 そうだ……あいつを脅すには家族が有効か?


 マンヒは、どんな手でも使ってやる決意を固めていた。


「ロッサも、裏ステータスなんか絶対知らないでしょう、気づかれていたらそうする必要がでてきますが……」

「まさかロッサが、そんなすごいスキルを持っていたなんてねぇ。優しくしてればよかった。今からでも間に合うかなぁ」


 ノーノが意味ありげに、胸を寄せ微笑む。


「まぁそれも良い、女で釣るのも手だ。ロッサをパーティに入れ直すには、リーダーである俺のステータス操作だけで簡単にできる。しかし、そのあとロッサが離脱手続きをされると終わりだ。ものすごくめんどう事になる」

「ロッサは常に監視ですか」

「はーい、じゃあ私が骨抜きにしてあげちゃうっ。あいつ童貞でしょどうせ、カンタン、カンタン」


 マンヒがニヤリと笑った。


「よし、確認終わり。さっ行くぞ、金貨を持て!」

「はーい」

「了解しました」


 マンヒ達は迷宮ダンジョンを後にする。


   ◇ ◇ ◇


 王都へと馳せ戻ったマンヒ達は、ギルドで手に入れた大量の金貨を献上し、報酬としてリベルラ・ロッサを釈放させることに成功する。マーベラス・マンヒ・パーティも二つ星にランクアップした。


 すぐにロッサを迎えに警備局に赴いたマンヒ達だったが、


「すでに出た後ですね」

「はぁっ? どういうことだよ!」


 マンヒは警備兵に掴みかかった。


「いえ、記録では、そうなっておりまして……」

「勝手にんなことしやがって、くそっ、ロッサはどこだ!」

「……釈放した僕らに何もなしとは……」


 マンヒが警備兵を突き飛ばす。


「探すぞ! まだ遠くに入ってないはずだ!」


 しかし、ロッサは見つからなかった。


 探し出して、10日後……。


「もう王都から出たのかもしれません……」


 捜し歩いて疲れ切ったスコットが、ため息をつく。


 宿屋の一室に、3人が疲れた様子でソファに座っていた。


「じゃあ、これからどうやって探すの?」

「探す当てはある。あいつは冒険者になるのが夢なんだ」


 心配そうな顔をするノーノに、マンヒがテーブルを叩きながら言った。


「きっとどこか俺らのいない場所で冒険者になってるさ」

「ギルドのある街を探しますか。まずどこへ行きますか」


 スコットの質問に、


「いや、手分けして探すことにしよう」


 マンヒ達は別れ、それぞれ別の街へと向かう。


 マンヒはひとり、大城壁が聳える東海砂漠の大拠点、ラクマカの街へと赴きロッサを探した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る