<サイド・ストーリー> 一方その頃、マンヒ・パーティは⑥


 彫刻の、禿げあがったおっさんの目が怪しく光る。


「……ポファル」


 禿げあがったおっさんはポファル(分析魔法)を詠唱した。マンヒ達のステータス表が禿げあがったおっさんの前に3つ並ぶ。


「ほう……お前、なかなか面白いスキルを持っているな……」


 禿げあがったおっさんはマンヒをジロリと見つめて、不気味に口角を上げ笑った。


 ノーノがマンヒの背中に隠れ、


「やばそうだよ、逃げないと! マンヒ様!」

「馬鹿、逃げるな!」


 禿げあがったおっさんがノーノに怒鳴った。


「逃げねぇよバカ野郎! お前みたいなもん、倒してやる!」


 マンヒがぐいっと歩み出て、剣を抜こうとしたが、腰には何もなくて手がからぶってしまった。慌てて素手で構え直す。スコットと、ノーノも恥部を隠しながら石板と相対した。


「盗賊の極意……パーティメンバーのスキルを奪うという代物なのに、貴様らバーティを組んでいるのか?」


 禿げあがったおっさんに問われて、マンヒ達は顔を見合わた。


「おいっ、何言ってる。それは、どういう意味だ」

「……おや、まさか、自分でも知らなかったのか。自分のスキルの効果を」

「知ってるよ、戦闘時補正で攻撃力倍、素早さも倍。常時補正で受ダメージ100以下無効に無効ダメージ分反射。全状態異常に対しての耐性、そして、レアアイテムドロップ率と発見率アップにトラップ完全回避。……ぜえぜえ、どうだ、思い知ったか!」

「ハーハッハッハ! ガーハッハッハッ!」


 禿げあがったおっさんは口が裂けんばかりに開けて、大笑いしだす。


「それはとんでもない有能な者がパーティメンバーにいたのだな……しかし、その効果、覚えがあるぞ……」

「何を言ってやがるこのモンスター……」

「馬鹿! 私は、モンスターではない。この迷宮のゴールだ馬鹿!」

「ゴールだとぉ?」

「そうだゴールだ。貴様らは、この迷宮出来て130年、ここまで辿り着いた記念すべき、攻略達成者2組目なのだ!」


 マンヒがスコットに目で合図した。


 瞬時に、スコットがポファル(分析魔法)を唱える。すぐにステータス表が表示された。


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   ゴール  110才  モンスター


 LV:100

 HP  :1010(1010)

 MP  : 120( 120)

 攻撃力 :  10

 防御力 :  30

 素早さ :  10

 魔力  : 500

 所持スキル:なし


 攻略達成冒険者: 2組 『ヒカ―・パーティ(五つ星) 永久欠番』 『マーベラス・マンヒ・パーティ(一つ星)』

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「ホントだ、ゴールです……まさかとは思いますが、やみくもに走って、ゴールに辿り着いたようです……」


 表示されたステータスをノーノとマンヒが覗き込んだ。


「じゃあ、何、外から一番遠くに来たってわけ。そんなのどうすんのよ!?」

「ああ、お嬢ちゃん、心配いらないよ。僕の石板の横の壁はね扉になってて、外に通じてるから」

「えっ、ホントにっ。やったー!」

「ぐふふふ、良いんだよ」


 マンヒがだらりと両手を下した。


「じゃあ、ホントにゴール。助かった、のか……」

「信じた?」 


 ゴールがマンヒ達を見て尋ねる。


「……おう」


 戸惑い、頭を小さく縦に振って答えるマンヒを見たゴールは、


「さて、では賞品をやろう」


 と言って、目を怪しく光らした。


 石板横の壁が音を立ててゆっくり開きだす。開いた先は宝物庫だった。


「きゃあああああっ金貨金貨!」


 ノーノは、裸なのも忘れて宝物庫へ駆け出して行く。


 中は、天井まで届こうとする金貨の山と、様々な冒険者達から奪ったものであろうの装備品等が散乱していた。


 ノーノが、金貨の山で半狂乱で飛び跳ねる。


 次いで、宝物庫の奥にある重厚な扉が開いていった。


「ああっ外ですよ!」


 スコットが駆け出していく。開いた扉の先は、青空が広がっていた。


「もう、前の達成者のハゲに、嫌がらせで迷宮の入り口隠されたせいで、誰も来なかったからキャリーオーバーでめっちゃ溜まってるよ、ラッキーだな、てめぇら」


 ゴールの目から怪しい光がなくなる。


「ではな、マンヒパーティの皆さん。またのご利用、お待ちしておりまーす」

「おいちょっと待てハゲ」


 マンヒは、ゴールのおっさんを睨みつけた。


「あん? 何だよ」


 そのまま石板の近くにまで歩いていく。


「盗賊の極意のスキルについて、意味の分からないことを言っていたな。どういう意味だ?」

「だから言ったであろう。パーティメンバーのスキルを奪う能力だとな。身に覚えはないのか?」

「うっ……」


 マンヒは、この迷宮ダンジョンで起きたことを思い返す。


「やはり、あるのだな……」

「証拠を見せろ、この目で見るまで信じられるか!」


 マンヒが怒号を飛した。


「……よかろう、見せてやろう。めんどくせー」


 ゴールがステータス表を操作する。マンヒの目の前に、自分のステータス表が現れた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

     マンヒ・シェルト  


 神歴1791年、秋の生まれ  18才  人間族  男


 LV:18

 HP :2080(2080)

 MP :  12( 12)

 攻撃力:  41

 防御力:  30

 素早さ:  71

 魔力 :   4

 所持スキル:【盗賊の極意】

 

 身長 :173ゼンジ

 体重 : 68ギロロ

 属性 :雷


 所属パーティ:マーベラス・マンヒ・パーティ (一つ星)


 好きな食べ物:牛肉、鶏肉、馬肉、リザード肉

 嫌いな食べ物:野菜全部

 尊敬する人 :父親

 趣味    :乗馬


 心病:学校での剣術試合中が、試合で対戦相手だったロッサが優勢になった時、木剣を地面に叩きつけた。それを見たロッサが「自分が勝ってはいけないんだ」と、故意に負けてきたことで、コンプレックスに。

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「すげぇな。ボファルでここまでわかるなんて、相当な魔力を持っているのか」

「当たり前だ。誰だと思っている」


 ゴールの目が怪しく光り出す。


「そして、ここからだ。普通の魔力では、ポファルで見られるのは所持スキル名のみ。だが私は違う。その効果の詳細まで見ることができるのだ」

「何だって?」


 戸惑いながら、マンヒはヒカ―が表示する自分のステータスを確認していた。


 盗賊の極意の文字が大きくなり、表示画面が変わる。


「そ、そんな……」


 盗賊の極意の効果説明が表示され、マンヒの目がその効果説明に釘付けになった。

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