<サイド・ストーリー> 一方その頃、マンヒ・パーティは⑤
ヤーゴナ国、北部――。
『怨竜の洞窟』で新たに見つかったという迷宮ダンジョン、地下4階にて。
「ふう、ふう、ふう……」
マンヒ達は追剥モンスターに襲われて、身包みを剥がされるうちに迷宮ダンジョン内を、地下4階にまで来ていた。
この時、知らず知らずのうちに、マンヒ達はランダム形成ダンジョンの最下層にまで辿り着いていた。もう迷宮のゴールはすぐそこだという事に、マンヒ達は気づいていない……。
「……パッカ」
スコットが、パッカ(発光魔法)の呪文を唱える。辺りを光の球が現れ辺りを照らし出した。
「ちょっと、こっち見ないでよ」
照らされたノーノは、胸と股間を両手で隠した。マンヒとスコットも、明るいのが恥ずかしくなって股間を両手で隠し、うなだれる。
タコみたいな追剥してくるモンスターは、マンヒ達を身包み剥がすと、そそくさと立ち去って行った。今はメンバー全員が下着まですべて奪われ、真っ裸になって迷宮ダンジョンの隅に退避している。
「くそっ、なんでこんなことに!?」
マンヒは股間を隠しながら、もう一本の手で壁を力の限り叩いた。
「あなたのせいでしょ……」
ぼそりと、スコットがつぶやく。
「スコット!」
「へ、聞こえてましたっ」
「あん? お前、魔力ロープも奪われたのか?」
「ああ……はい。見てのとおり魔力ロープも奪われてしまいました」
「何やってんだ! 役立たず!」
マンヒが怒号を飛ばしてくるのに、スコットは怒りが出てしまった顔を咄嗟に隠した。
「マンヒ様、そんなことより、どうやって帰るのさ。ロープなしでここから出られるの?」
ノーノの質問に、誰も答えられない。
「とりあえず、こっちだ」
マンヒは歩き出した。股間を隠さなければならないので歩幅が狭い。
「ちょっとマンヒ様、適当で良いの?またモンスターに会っちゃうじゃん」
「黙れ! この役立たずが! お前がヘボいから、俺がこんなに苦労してるんだろうが!」
「そ、そんな!」
「あああっ! うるせい! うるせい! だったらついてくるな!」
マンヒがひとり、歩いていく。
ノーノとスコットは、黙って後をついていった。
出口を探して歩き回る。
「ちょっとマンヒ様、警戒しなくて良いの? またモンスターに会っちゃうじゃん、私達、丸腰なのに」
「お前は素手で行けるだろ」
「裸だから戦えないよ」
と、マンヒが立ち止まった。
「どうしたの? まさかモンスター?」
「違う、この先は通路じゃないんだ。広い空間に出る。部屋か何かだ」
「マンヒ様、どうしましょうか、僕の魔法もMPの都合上、節約すべきと考えますが
……」
「……そうだな……よし、ノーノ、先に行け」
「ええっそんなっ。だからなんで私が同じ囮役なのよっ」
「うるせぃ、俺に万が一があったらどうすんだっ」
マンヒがノーノをにらみつける。
「僕も何かあったらパーティに大打撃です。唯一の魔法使いですよ、僕は」
「そうだそうだ、ノーノが適役だ。早くいけ」
「……うん……はい……、でも危なかったらすぐ助けに来てね」
「おう、まかしとけ。だから早く行けっ」
マンヒはノーノの背中を突き飛ばす。
通路の先は、マンヒの言ったように広い空間になっていた。
広い空間に出たノーノは、注意深く様子を窺いながら一歩一歩進んでいく。
やがて、
「ふーー、良かったー。みんな、今回はモンスターいないよ、ラッキーだったっ」
と安堵の息を吐いて皆に振り向いた。
「なんだなんだそうか」
マンヒが笑顔で、振り返って迎えるノーノの元へ行く。スコットも後に続いた。
「しかし、僕らがモンスターとエンカウントしないのを喜ぶなんて……いったい何が起こっているんでしょう、僕も【ターゲット回避】があるのに、触手に襲われるなんて……」
「……完全回避ってわけじゃないだろうが。しかし、そうだな、骸骨戦士の能力だとしたらおかしい……この俺が人食い箱のトラップにひっかるなんて」
2人は顔を見合わせる。
「マンヒ様、リベルラがいないのと何か関係あるのでしょうか……」
「それはどういう意味だ?」
「今までの違いと言えばそれしか、ない、とおもうんです」
「意味の分からないことを……」
マンヒはため息をつくと、ノーノの元に駆け寄っていった。
「なっ俺が選んだ道で間違いなかったろ?」
「さっすがマンヒ様っ」
スコットを無視して話し出す。
「ふふふっ、それもそうか、そんなわけないかっ」
スコットが、あほらしっと笑った。ゆっくりと、通路から出てマンヒ達の元に行く。マンヒ達が光源を持っているスコットを待っていた。
と、その時、
「やかましいな……寝ているというのに……」
腹の底にズンと響く様な声がして、マンヒ達は固まる。
「ん、今なんか聞こえたよな? なんだ?」
「きゃああっ! あそこ見て!」
ノーノの悲鳴に、全員がふり向く。
そこには骨と皮だけの体の、おどろおどろしい生き物が彫刻が施された石板があった。光球に照らされた、彫刻が動き出し、その両目がマンヒ達をとらえる。
「やっと来たか! もういつまでかかってんだ!」
彫刻の、禿げあがったおっさんが牙をむき出し、怒鳴った。その額には「ゴール」と彫られている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます