<サイド・ストーリー> 一方その頃、マンヒ・パーティは④
ヤーゴナ国、北部――。
『怨竜の洞窟』で新たに見つかったという迷宮ダンジョン、地下3階にて。
「ふう、ふう、ふう……」
マンヒ達は迷宮ダンジョン内をやみくもに走って、地下3階にまで来ていた。
「ぜえぜえ、ぜえぜえ……」
マンヒ達は、四角い体をガタガタ揺らしながら追いかけ来た人食い箱から何とか逃げる事に成する。
「はぁ、はぁ……もう駄目だ……」
「マンヒ様、大丈夫?」
「くそっ、あの箱に、噛まれて、HPが、結構削られた……」
「もう大丈夫です、ここらで休みましょうマンヒ様」
「……よし……そうするか……くそっ」
マンヒは廊下の壁にもたれ込むようにして座り込む。自慢のモヒカンがへなへなになったマンヒの元にノーノとスコットが駆け寄った。
「なんでこんなことに!?」
マンヒは壁をヘトヘトで出ない力の限り叩いた。ダメージを受けて、もはやHPも3分の1ほどに減っている。
「マンヒ様、落ち着いてください」
「うるせぇ!」
「ねぇマンヒ様、【盗賊の極意】が発動してないんじゃない? なんでなの?」
「俺が知るかよっ! いつもと何も変わらねぇ!」
「マンヒ様、一度、脱出しましょう」
スコットの提案に、マンヒは苦い顔をした。
「チッ、しょうがねぇか……原因が分かり次第戻るぞ……痛てて……」
マンヒは噛まれた部分をさする。
「おい、回復薬よこせ。痛くてかなわん」
「持ってないよ。何言ってるの……」
ノーノは、手を出して受け取ろうとするマンヒを不可思議そうに見た。
「なんでだよ?」
「自分がいらないって言ったんじゃん」
「はぁ!?」
「そうでしょマンヒ様、回復アイテムなんて持ってくる、その精神がすでにモンスターに負けてるんだぜって、いつも持ってきてないじゃん」
「ああ……そうだった……」
マンヒが頭を抱えた。
「じゃ、1個もないのか?」
「え? ノーノは持ってきてるよ」
「よこせ! 役立たずのお前が持っていても無駄だろ!」
「だ、だめだよ。これはノーノのっ」
「なんだてめぇ! 殺すぞっ!」
マンヒがノーノをにらみつける。
「う……うん、わかったよ……」
ノーノが大きな胸の間からポーションを出した。
「はい……」
差し出したポーションを奪い取ると、マンヒはガブガブと飲み干していった。
「ああっ生き返るっ。サッ元気になったし行くぞっ」
マンヒは空き瓶を捨て、のっしのっし歩き出す。が急に立ち止まった。
「どうしました? モンスターがいたのですか?」
スコットが杖を構える。
「いんや、違う。あれを見ろ」
マンヒが指さす方をスコットが見ると、気づかなかったがそこには横道があって、宝箱が通路の真ん中にある。
「……嘘ですよね……」
「取りに行くぞ」
「ねぇ、もうやめよぉ、マンヒ様ぁ」
「何言ってやがる! レアアイテムのひとつも見つけられないで帰れるか!」
マンヒがノーノの手を引っ張り、宝箱へと向かう。
「あれは怪しくない」
何か言おうとしているスコットを、マンヒは先んじて断言した。
「人食い箱の可能性はない、だがだ」
マンヒはノーノを宝箱の前に立たせる。
「よし、ノーノ、開くんだ」
「ええっそんなっ。なんで私が同じ囮役なのよっ」
「うるせぃ、俺に万が一があったらどうすんだ」
ノーノを睨みつける。
「……うん……はい……、でも危なかったらすぐ助けに来てね」
「おう、まかしとけ。だから早くっ」
ノーノの背中を突き飛ばした。ノーノが恐る恐る宝箱の蓋に手をかける。
「ふーー、良かったー。みんな、今回はモンスターじゃないよ、ラッキーだったっ」
と安堵の息を吐いて振り向いた。マンヒが笑顔になる。
「なんだなんだそうか……」
しかし、その笑顔はすぐ曇った。
「ノーノ、後ろだ!」
「へ? きゃああっ!」
長い、何本もの触手が一瞬でノーノの体を掴み、体に巻き付く。
「こいつは、追剥モンスター!」
マンヒが剣を引き抜いた。そのモンスターは、通路を覆いつくすほどの巨大なタコみたいな姿をしていた。
何本もの触手は、ノーノの薄着をはぎとるように脱がしていく。薄着のどこに隠していたのか、ポーションや一時強化アイテムの数々が次々と触手に取られていった。
「あっノーノ! やっぱ一時強化アイテム持ってたじゃねぇか! しかもあんなに……」
「そんなこと言ってないで助けてよ! きゃあっ、もうおっぱいの間にはないよぉ! もう何もないよぉ、いやぁ!」
「ノーノ! ホントに持ってないのか! 早く出したほうが良いぞ!」
「そっちはだめぇだめぇ! そんなことしちゃダメぇ! 何で何もないのにしてくるのよぉ!いやん、こねくり回さないで、何も持ってないのにぃ!」
「ホントに何も持ってないのか? だとしたらなぜこんなにもノーノの体を調べる……」
「きゃあそんな事されたら、そんな場所触られたら、そんなにされたらっ、いやーん! ああっなにもないよぉ! 何で何もないのにぃ! 何で何も持ってないのにしてくるよぉ! やめてぇ! もうだめぇ! いやぁぁぁ!」
追剥モンスターが、ノーノが隠し持ってた金貨を3枚取った。
「あんじゃねぇか!」
その時、背後から、
「マンヒ様! 助けて! うわあぁぁ!」
スコットの悲鳴に振り向くと、スコットも触手に捕まっていた。
「何を!? 後ろに回られた!? ちくしょう、皆――ハッ!」
マンヒは自分の足を掴む生ぬるい触手の感触に気付く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます