狙い通り、人間達を襲うガメーガン。そしてマンヒと再会……。
「リベルラ様、とりあえず大壁の方に行きましょう、ガメーガンが起きて人間達が騒いでいるところ、拝見したく存じます!」
「う、うん……」
羽が大きく羽ばたきだす。ロザリンドさんが、両腕を上げ勢いよく飛行しだした。落ちないようにがっしりと柔らかい体に掴まる。
僕らは、ラクマカの街へとスピードを上げ飛んでいった。
すると、とんでもない数の冒険者が隊列を組んでいるのが見えた。
「何でございましょう、あれ」
「とんでもない数だな。あのデカいのとやる気なのか?」
城壁の外に、万はいる冒険者達が武器を手にして、陣形を組んでいる。
「おーーーーーーーい!!」
その陣形の上を飛んでラクマカの街へ行こうとすると、なにやら下から声が聞こえてきた。
「おーーーーーーーい!! そこの飛行スキル使ってるやーーーーーーーーつ!! 降りて来ーーーーーーーーい!!」
下を見ると、両手をブンブン振り回し、爺さんが僕らに向かって叫んでいる。拡声魔法で声を大きくしているぞ。とんでもなく五月蠅い、周りの冒険者が耳をふさいでる。
「無視なさいましょうか?」
「行ってみたほうが良いよ」
「そうでございますか」
ぐぐっと急降下して僕らは、白髭を蓄え、これでもかと偉そうな厚着した爺さんの前に降り立つ。
整列してる中の一番後方、爺さんの回りだけ特別にあつらえて高くなっていた。ここからは全冒険者と砂漠が見渡せる。偉い人なんだろうか……。
「何をしてくれるのじゃーーーーー!!」
「わあぁぁ!?」
爺さんは、開口一番怒鳴りつけてきた。
「お前らのせいでガメーガンがーーーーー!!」
「落ち着いてください、あなたは誰なんですか?」
「わし以外にギルド長があるかっバカモンがーーーーー!!」
「あの……何をそんなに、怒ってらっしゃるので?」
「おーし、説明してやるから耳の穴かっぼじってよく聞けよ」
ギルド長は一度呼吸を整えて、
「あいつの名前はガメーガン。150年前に現れた時は街20個を踏み潰した所でやっと討伐できたA級モンスター。やべーじゃんって住民は皆逃げ出したよ。でも俺達、冒険者は逃げるわけにはいかねーじゃん。星4つ冒険者へ派遣依頼を出したから星持ちが来て討伐してくれるまで、俺たち全員力合わせ、眠ってるガメーガンが起きないよう祈ってたのに、おめーら起こしやがったなーーーー! どう落とし前つける気じゃーーー!」
韻を踏むのか踏まないのかどっちなんだ、このじーさん……。
「それを、てめぇら悪戯して起こしやがって見てたぞーーーってションベン臭っ、さっきの放尿に巻き込まれたな!」
「あいつのだったんですか! おぇー……」
「というよりその服! ブハッ、スッケスケでねぇか!」
ギルド長が、ロザリンドさんを指さし鼻血を出した。
あっホントだ、純白の一枚布の服だから……。
ロザリンドさんが慌てて胸を隠す。
「って、んだ事やってる場合でねぇ! 貴様のそれは囚人服でねかっ、何者だべ貴様ら!」
僕を指さす。興奮して、ヤーゴナ国の方言が隠し切れなくなってる……。そうだった、僕もややこしい服着てたんだった……。
「まさか! ラインハルト王の差し金ではなかろ――」
「――ギルド長報告であります! ガメーガンがこちらに向かって歩き出しました!」
「そっそんな……派遣依頼をした星4つ冒険者へは、まだ来ないというのに……」
ギルド長の顔が青ざめ膝をついて俯いて、しゃべらなくなった。
忙しいじーさんだなぁ……。
「……あんなの相手にやれるのか? ……違う、やるんじゃ! わし達が逃げたらこの世界はどうなる! よしやるぞい! ションベン臭のてめーらは後で用があるから、そこを動くな!」
そう呟いて、キッと目に炎を宿し、
「やるぞ、戦闘開始じゃ! 準備にかかれ!」
ギルド長は叫んで、僕らの事には見向きもしなくなる。
僕らはどうして良いかわからず、邪魔にならないところで立っていることにした。
その時、
「ロッサ」
背後から聞きなれた声で呼ばれる。
その声に愕然としてしまった。振返ると、
「マンヒ?」
やはり、間違いなく、僕の元パーティの、マンヒがそこに立っていた。あんなモヒカン、この世で一人しかいない。
すごく質の良い鋼の鎧を着て、大股で歩いては僕らの元にやってきて、
「お前を追放したけどよ、手続きがまだ仮の状態でな。戻ってくることを許してやっても良いぜ」
なんだ、急に……。
と、マンヒは片目を閉じた。
「今、ステータスを表示した。パーティメンバーの欄にはまだ、お前の名前が残っている。(仮)付きでな。今からちょちょいと操作したら、復帰できるぜ。してやろうか」
マンヒの人指し指が、クイクイッと動く。
「どうした? また一緒に冒険しようぜ。前科の事は知らなかったよ、まさかそんな大事になっていたなんてな……俺が何とかしてやるよ」
「何言って、入るわけないだろ」
「なんでだよ。入ってくれよ、な?」
「僕は冒険者なんて、しないよ」
「何言ってんだ、夢だろ。早く良いって言えよ」
「なんでございますか、この方は」
ロザリンドさんがマンヒを黙らせるように語気を強くして尋ねてきた。
「お前こそ何だこの女……良い女だなっ」
マンヒの目がいやらしい目に変わり、ロザリンドさんの、びしょ濡れでスケスケの体を嘗め回した。
「えほんっ、どなたか存じませんが、ここにいるリベルラ様は、すさまじいスキルがございます。とても、あなたのような方では釣り合うお人ではございません」
「おい、待て【覇王の紋章】について知ってるのか!?」
マンヒが、驚きロザリンドさんを見る。
「あら、【覇王の紋章】をご存じでございましたか。左様でし――」
「――ちょっと待ってマンヒ! 裏ステータスのことを知ってたのか?」
「……はははは」
マンヒは笑って、
「俺もついさっき知ったばかりよ。そうか、お前もこの20日間でいろいろあったんだな」
……20日?
「俺にもいろいろあったよ……真実を知ったよ。……そうか、ならもう戻る気はないか……」
マンヒが残念そうに、僕らから目を逸らす。
「はいっ、そうでございますともっ」
なぜかロザリンドさんが返事をした。……まぁ良いんだけども。戻る気なんてないし。
「20日って、そんなに経ってるのか?」
「……なんか混乱してるな、お前。まぁ俺もだが……。なぁ、反省してるんだよ。ノーノとスコットもそう言ってるぜ、へへへ」
「え?」
何を急に、そんなことを言ってくるなんて……。
「なぁ、一緒にパーティ組もうぜぇ」
にこやかに言ってくる。なんでも良いけど、なんてバレバレの作り笑顔なんだろう……。
「ならないよ」
きっぱり言った。マンヒはため息をつく。
「ああ、そうかぁ。ダメかぁ……」
「一体何があったんだ? そんなことを言ってくるなんて、だいたいどこで裏ステータスの事を知ったんだよ」
「それより良いのか。お前のせいで、あのモンスターは街に襲い掛かってるというのに……」
マンヒはそう言って、僕らから離れていく。
……一体マンヒの身に何が起こったというんだ……。
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