僕はベッドから飛び起きた。
「今や、ロッサは正式なマンヒ・パーティだぜっ」
マンヒが僕に満面の笑みで微笑みかけてくる。
その顔が、急にゆがんだ。
「ちょっとお待ちくださいませっ」
ロザリンドさんが、肩に回っているマンヒの腕をつねった。そして、そっと置くように腕をどかすと、
「リベルラ様は、これからご自分のパーティを作るのでございます、申し訳ございませんが、ご辞退願います」
丁寧に頭を下げた。
「痛てーな、何しやがんだ!」
マンヒが怒鳴る。
その怒鳴り声の後ろで、いくつもの靴音が響いた。
「マンヒ・シェルト様。作戦部隊が戻ってまいりました」
ギルドの役員が駆け足でやってくると、マンヒに敬礼する。
「どうだったんだ?」
「いえ、様子を見る限り……」
役員たちの顔が曇る。
「がははははは、ではガメーガンへの攻撃を開始する時が来たか。じゃなロッサ、てめぇはここで寝てたら良い」
マンヒが役員の人と共に去って行く。
その光景を、僕はただ茫然と眺めていた。なんだか目まぐるしい……。
「リベルラ様、妾達も参りましょう!」
ロザリンドさんが叫んだ。
「わぁっびっくりしてしたぁ……って、どこへ?」
「ガメーガン退治でございましょう」
眉を吊り上げ、への字口になって、腰に手を当て睨みつけて、何言ってるんだとばかりに非難してくる。
「【覇王の紋章】ここにありと、そのすさまじさを世間に見せつけるのでございます!」
「……だからですね、前にできなかったじゃないですか。ついでにステータスからも消えてるし。まず発動条件を調べてからじゃありませんか? ……それに、僕はマンヒのパーティから抜けれそうにありません……」
「さきほどのお方に、ご家族をなんだかんだと、言われておりましたね」
「聞こえてたんですか?」
「悪い事とは存じつつも、妾は【デビル・イヤー】のスキルがありましたますゆえ……すべて筒抜け状態でございます」
ロザリンドさんが頭を下げる。
「しかし、怪しゅうございます……」
「怪しい?」
頭を上げたロザリンドさんが中指を額に当て、
「あのマンヒとやら、リベルラ様の覇王の紋章が目的とはいえ、このような方法を取っても力にはならないはず、パーティにいるだけで良いなどと、不可思議な事でございます……」
額に皺をよせ、つぶやいた。
「まぁ、そうだね……」
「リベルラ様は、あのなんとかマントヒヒ・パーティの一員として、冒険者としてご活躍なさってたのでございますか?」
「うん、まぁそうだけど……活躍なんてできなかったよ。じゃなきゃ炎竜をぶっ飛ばした時に、あんなにびっくりしないでしょ。覇王の紋章なんて一回も機能していなかったよ……」
「機能していなかった……」
ロザリンドさんが、 頭を上げたロザリンドさんが中指を額に当て、鋭い眼光を向けてきて、
「してなかったのではなく、なかったのではありませんか?」
意味深に言ってきた。
「……なかった?」
「そうでございます、スキルがステータス欄から消える、などという事は起こりません。誰かが手を加えて、リベルラ様のスキル欄から消したものと存じます」
「誰が……」
もし、ロザリンドさんの言うように誰かが消したのだとしたら……。
思い当たる節を、探す。記憶を呼び起こし、僕にそんな事をする人間……。
「今までパーティの一員としてご活躍できなかったところを見ますと、おそらくリベルラ様はずっと消されていたのでございます、それで一度も発動したことがなかったものと推測いたします」
パーティメンバーが消していた……? でも、そんなこと……。
「リベルラ様、あのマンヒとやらが、何か知っているものと存じませんか?」
「でも、メンバーが……消してどうするんです? 何の得があるんです?」
「……そこなのでございますよね……」
ロザリンドさんが首をひねる。
僕も首をひねった。
……しかし、あいつ、なぜ急にバーティに入れなんて言ってくるんだ? あんなに追放して喜んでたのに……。
……裏ステータスの事をどこかで知ったと言ってたな。それまでは知らなかったんだろう、だから追放したんだ。それで、やはり僕に、信じがたいが凄いスキルがあるのが判明して、仲間に入れようとしてる、のか……?
でもそれじゃあ脅しなんてして仲間に入れても、僕は協力なんてしない。ロザリンドさんの言うように、入るだけで良いってどういうことだ……?
まさかスキルを消すためにパーティに入れたいのか? 単なる嫌がらせ?
いや、そもそもマンヒ達にそんなスキルがあったなんて聞いたことがない……知らないだけか?
ノーノとスコットが、隠し持ってて? そんなスキルがある奴なんてマンヒは横に置くかな……。
マンヒの事は幼馴染だからよく知ってる。あいつにそんなスキルなんてない。マンヒにあるのは盗賊の極意だけだ。その効果は……。
その効果は?
覇王の紋章の効果だと、ロザリンドさんが説明したものと同じ……。
同じ……?
盗賊の極意……スキルの能力は名前から大抵推測できる……そもそも盗賊の極意というスキル名で、攻撃力倍増なんていう事がおかしいんだよ。
盗賊の極意というスキル名から推測できるのは、何かを盗むスキルということだ。
それは、アイテムの事だけなのか? 対象のスキルを盗む、なんていう効果だとしたら……。
だとしたら、マンヒが僕をパーティに入れたがる理由も分かって来るぞ。
僕がパーティからいなくなって、マンヒ自身もスキルの本当の効果に気付いたんだ。それで裏ステータスの事なんかも色々調べてきたと、そういう事なんじゃないのか?
……まさか盗んでいたのか、僕のスキルを……。
いや、まだ僕の直感にすぎない……。
確かめなくては。
「リベルラ様、何ボケっとしているのでございます!」
「へ?」
「なにわともあれ、ギルドに向かいましょう!」
ロザリンドさんが、こぶしを突き上げる。
「パーティの離脱申請してきましょう。とりあえず、あの方のパーティなどに入ることなどありませんっ」
「それもそうですね……だいたい辞めるつもりですし……それに……」
「それに?」
「ロザリンドさんなら、スキルの効果まで見れるんですよね」
「それが何でございましょう」
「マンヒのステータスを調べてほしいんです」
僕はベッドから飛び起きた。
「あっあと装備が欲しいな」
当たり前だが、僕は麻でできた1枚布の患者服姿だ。
「そうでございますね。ではリベルラ様、まずは防具屋に参りましょ」
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