<サイド・ストーリー> ガメーガン討伐戦 ①

 ラクマカ・ギルド3階東にある防具屋で、ロッサが自分にふさわしい装備を選んでいる頃。


 ラクマカ・ギルド、1階エントランス――。


 いつもなら冒険者達でごった返すここも、がらんと静まり返っていた……。


 ギルド長含む各部隊隊長らは集合し、作戦成功の吉報を待っている。しかし皆の顔は暗い。


 と、乱暴な音を立てて、ラクマカ・ギルドの扉が開かれる。


 倒れこむようにして入って来た血みどろの冒険者は、装備している鎧が砕かれいいて、痛々しい姿だった。


 ギルド長含む各部隊隊長らの顔が曇る。


 血みどろの冒険者は大きく息を吸い込み、


「第一作戦が失敗! ガメーガンも動きだしてしまいました! こっちに向かってだ! もう抑えられない! 早く対処を! 早く……うっ……」


 叫んで、その場に倒れ込んでしまった。


「そんな……寝ているところを毒薬で暗殺しちゃえ計画が……完璧と思ったのにぃ……」


 そう呟いて、ギルド長の顔が青ざめる。


 各部隊隊長らも、全員が青ざめてしまっていた。皆が茫然と立ちつくして、ギルドの時が止まる。


 ……もう、やはりマンヒさんに戦ってもらうしかいない。


 ギルド長がそう考えた時だった。


 堂々とした声で、


「ギルド長、俺が戦いに参加しよう!」


 マンヒが言い放ち、エントランスに入ってくる。


「ああっマンヒ様っ! 助力していただけるのですか!? ありがとうございます!」


 ギルド長がマンヒに頭を直角に下げた。


「おい、マンヒパーティが戦ってくれるらしいぞ!」

「それなら騎士団なんて待たなくて済むんじゃないか!?」

「マンヒ様、頼みます!」

「マンヒ様、この街を助けてください!」


 周りの部隊隊長達もマンヒのセリフに希望を取り戻していく。


「もちろんよ! 天帝陛下から期待されている俺が、街の危機を見過ごすなんてできるわけないだろう!」


 任せろと、強く胸を叩いた。


「毒薬での暗殺は、やはりうまくいかなかっただろ」

「はい、ガメーガンの足をバタバタさせるぐらいだったみたいです」

「がはははは、初めから俺に任せりゃ良いんだ!」


 ギルド長は傍に控えていた役員に血みどろの冒険者を指さし、


「こやつを治療室へ連れていってやれ。部隊長諸君、再び陣形を作り、ガメーガンへの攻撃を開始するぞ。急げ! 冒険者達を招集するんじゃ!」

「よし皆、マンヒ様に続け!」

「マンヒ様と共に!」

「そうだ、やるぞぁ! おーーーー!!」


 部隊隊長達らが、こぶしを掲げる。


「マンヒさん、これをガメーガンにポファルをかけましたものですじゃ」


――――――――――――――――――――――――

      ガメーガン  


 神歴1699年、種が地中にて栄養摂取し始める  110才  オス 


 LV:34

 HP :4891(4891)

 MP :  72(  72)

 攻撃力: 105

 守備力: 304

 魔力 :  53

 素早さ:  28


 所持スキル:なし


 サイズ :700ベーボーメドル

 体重  :39000ドーン

 属性  :木


 性格:引っ込み思案で争いごとが嫌い。

 好きな異性のタイプ:堅実で安定志向の人

 趣味:昼寝。

 好きな色:ピンク


 魔界に対する郷土愛はかなりのもので、帰りたいと望んでいる

 使役モンスター達からは、のんびり屋で非常におっとりしている事から管理人としての責務がなってない。隣人同士のトラブルはすべて自分たちで解決しなくてはならない、と不満が出ている

――――――――――――――――――――――――


「HPが異様に高いぜ、守備力300越えの大台に乗っているな」


 マンヒの顔を引きつる。


「最高ランク冒険者が相手してやっとじゃ」

「そうだな」


 そのステータスの高さに、マンヒの顔が曇った。


「しかし、俺を噛んで歯が砕けた相手だ。このオリハルコンの装備があれば、奴の攻撃を俺は耐えれるだろう」

「そうです、少しずつでも削っていければ……ラクマカ・ギルドにいた20000の冒険者の力を合わせれば、このHPも守備も削り切れると考えたのじゃ、……それがじゃ……」

「使役モンスターまで相手をしなくてはいけなくなった……」


 ギルド長は頷く。


「その数5000は超えております」

「シビアな戦いになるぜ。だが、やってみせようじゃないか。冒険者の誇りにかけて」


 と、そこに、


「すいまーん、冒険者パーティから離脱したいのですが、どこでするのでございましょうか」


 女性の声が響いた。


 なんだと、全員が振り向くと、いつの間にか巨乳の女性が立っている。


「あっ、あんた。たしかロッサの」


 マンヒがロザリンドの方へと歩み出た。


「あっ、なんとかマントヒヒ・パーティの人、ちょうど良うございました」


 ロザリンドが軽く会釈をする。


「マーベラス・マンヒ・パーティだ! 何度言わせ――」

「――スキル発動、デビール・アイ!」

「うわっ」


 怒鳴るマンヒに、ロザリンドさんは手で眼鏡を作り叫んだ。その美しい両瞳から放射状に怪しい光が放出され、マンヒの体に照射される。


 マンヒはいきなりの放射に、驚いて後退した。


「何しやがる!」


 怒鳴るマンヒを、ロザリンドさんは無視して、表示されたマンヒのステータスを凝視する。


「なんだよ、俺のステータスなんてもの見て」

「ちょっと、どんなものか、見たく存じまして」

「へへへ、照れるなぁ」


 ギルド長が駆け寄ってきた。


「マンヒ殿、ガメーガンとの戦闘準備を早くお願いします!」

「えっ? ああそうだったそうだった、早く向かおう」

「部隊長らも隊列を組むんじゃ。ガメーガンは今も一歩一歩こっちに向かっとるぞ!」


 皆は、ギルドから戦場へと赴いていった。


 ガメーガン討伐戦が、開始される。

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