英雄は街を救う 『対ガメーガン討伐戦、終結』②
「ぼーっとするな!お前ら!」
と、聞きなじんだ声が後ろからして振り向く。
やっぱマンヒだ……。
「俺に任せろ!」
そう言ってマンヒが襲い掛かってきていたキマイラに向かって飛び、剣を振りかぶる。
キマイラが大きく息を吸い込んだ。
と、特大の火弾をその口から放出される。
「ぎゃあああああぁぁ!」
飛んでいたマンヒが回避もできずに撃墜されていった。
「あれ、マンヒ様だ!」
「えっ!?何だよ、あれ!?」
「弱っ!?」
「あれじゃだめだ!」
冒険者達が頭を抱えだす。
皆が地面へと激突したマンヒを、心配そうに見守っていると、
「ぐわーーーーー!」
叫んで、突然立ちあがり、
「何しやがる! 殺すぞ! ロッサてめぇ調子乗るなよ! 俺の力を見せてやるよ! 俺にできないもんなどあるものか!」
叫んでいる。
元気だなぁ……逃げたるんじゃなかったのか……?
「ガギャアアァァァァァァァァアアアアアアアアアァァァァァアァァァ!!!」
ガメーガンが咆哮する。
すると、使役しているモンスター達が、背中の森からうじゃうじゃと現れてきた。
戦闘に参加してなかった分かな。一体何匹いるんだ……?
「リベルラ様。余計な事をしておりましたので、ガメーガンに回復時間を与えてしまいました」
「そうだね。もう親玉から、炎竜の時みたいに一発で仕留めるよ」
「やっておくんなはれ!」
ぐっと握り拳を作る。
ガメーガンが炎の息を噴射してきた。
「そらっ」
ガメーガンの吹く炎の息を飛び越え、その巨大な顔の上、頭にある小さな角に向け、飛んだ。
ぐぐぐっと踏み込んだ右足を蹴り上げ飛んだと同時に、猛烈な風が僕の体に吹きつける。
周りの景色が猛スピードで変わって、一瞬で角へと到着した。
「よっととと」
思った以上の速さが出たのに戸惑っていたら、こけそうになる。
「ガメアアアァァァァ!」
早めにしないとっ。
頭の上に乗られたガメーガンが反応するより早く、
「おぅりゃああああああ!」
足元の突起に向け、全力で手刀を打ち込んだ。
「ガメギャグガァァァァアアアアアアアアアァァァァ!」
ガメーガンの頭が凹む。そのまま巨大な頭は下方向にぶっ飛んでいき、砂漠の砂の中にすっぽりと埋まった。
逆立ち状態になるガメーガン。その光景に全冒険者が動かなくなったのが見て取れた。
それだけじゃない。使役モンスターらが固まったのが見て取れる。戦場の時を止まった。
……倒したか……?
逆立ちのままピクリとも動かないガメーガンを見つめていると、しばらくして、
「あっ」
ガメーガンの体が薄くなっていく……。
鳥の群れが飛び立つように、凄まじい数のぼんやり光る魔球が天へと昇って消えていく。
あっという間にガメーガンの巨体は、まるで最初からそこにいなかったかのようになくなってしまった……。
巨体がなくなり、東海砂漠の広大な砂丘が見渡せるようになる。同時に何千のモンスター達が、我に返ったか、ピクリと体を動いたかと思うと、皆散り散りになって逃げていく。
「かっ、勝った……」
「勝ったのか……?」
皆、あっけにとられていた。
無理もない、僕もこんな簡単にあの巨体が消え去るとは思わず、あっけにとられている……。
「きゃあああ!さすがやでぇリベルラ様わぁ!」
ロザリンドさんが僕に抱き着いてきた。
「もう惚れてまうわ、こんなんされたらぁ」
「方言、方言出てるっ、良い加減にないとバレちゃうよっ」
唖然としていた冒険者達が、互いに顔を見合わせ、
「討伐できたぞ!」
「何が起こった、一体、急に何が!」
「モンスター達も逃げていくぞ!」
「追うな、逃げていくのはどうでも良い! 今は勝ち鬨を上げろ」
「勝った勝った!」
冒険者達が一斉に勝ち鬨を上げる。
皆が皆、抱き合い喜び始めた。
広がる砂漠には、もう逃げるモンスターの影しかない。
勝ったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます