覇王の紋章~冒険者パーティを追放された無能……なのに、えっ僕にすごいスキルが隠されてたって!? 僕は魔族の姫と共に
フィオー
パーティ追放……
取調室は狭く、汚い。
ちょび髭の警備兵は、蔑んだ目で僕を見ていた。
そうだ……どいつもこいつも、僕をそんな目で見てくる。
ついさっき、パーティーから追放を宣言された。そう僕は冒険者だ……いや、だった……。
でもわかるよ、僕の低ステータスのじゃ仕方ない。
でも、僕は冒険者にあこがれてた。どうしてもなりたかった。なんとか頑張ろうと思った。
でも低ステータスの僕はパーティではずっと雑用係。そして役立たずは、みんなからのヘイトを買い、毎日罵倒され、蔑まれ、だんだんエスカレートして、いじめを受けるようになった。
いじめを、それでも耐えたのは、やはり夢を諦められなかったからだ。いつか役に立って、やろうと思っていた。
でも今日、宿屋で、
「パパの言う事なんぞもう知らねぇ、お前なんか追放しまーす、出てってー」
「出てってー」
「出てけ無能」
とパーティメンバーが、高らかに、からかうように言ってきた。
……僕は別に何も言わなかった……。言えなかった……。
だから、何も言わずゆっくりパーティーメンバーから背を向け、部屋から出ていこうとした。
「なっ!?」
すると背後で、マンヒの驚愕する声が聞こえた。
「おい! 待てロッサ!」
名前を呼んだので足を止めて振り返ると、マンヒは怨嗟とも言うべき視線を向けていた。
「馬鹿なのかてめえ!? 迷惑かけて来た事を謝れよ! お前は一つ星冒険者である俺に! マンヒ・パーティにどんだけ迷惑かけたと思ってんだよ!」
マンヒは乱れたモヒカンを直しながら叫ぶ。
このマンヒは難攻不落と名高いダンジョンに潜り探索を進めただけでなく、レアアイテムをたくさん手に入れ献上していた事で、18才にして、一つ星の称号を手に入れた。
五つ星になると次期天帝候補となる、冒険者として最高の名誉……なぜ、そんなものを手に入れれるのかと言うと、それは全部、マンヒの固有スキル【盗賊の極意 】の賜物だ。
この特級クラスのスキルは、レアアイテムドロップ率、発見率アップにトラップ回避という、立派な盗賊としてバフが常時かかる。
おまけにだ、この特級クラスのスキルはこれ以外に、攻撃力倍増、素早さ倍増のバフの戦闘時補正が掛かり、受ダメージ一定数無効、ダメージ反射、全状態異常に対しての耐性の効果が常時補正でかかっている、分けの分からんスキルだ。
一番分けがわからないのは、そのくせ盗み成功率などは上昇しない、という何が盗賊の極意なんだとツッコみたいスキルだ。強盗の極意だろっ。
「そうよ、そうよ! マンヒ様に謝りなさいよ! 単におこぼれに預かった棚ぼた荷物運び男!」
叫んできたのは、女武闘家のノーノ。褐色肌は、いつも動きやすい薄着で露出され、巨乳を揺らしマンヒにくっついている。玉の輿を狙っているらしい……。
「ま、どうでもいいじゃない、こんなステータスの低いだけでなく、何のスキルも持ってないゴミ」
続いて黒い三角帽、黒いローブ姿の魔法使いのスコット。三角帽から覗く顔は若く、男子学生だ。全国魔法模試99位という成績を残した秀才で、その才を誇りに思っているのは良いが、才のない奴はゴミだと思っている。
「よし、無礼だが出て行くのを許してやる、だがその前にロッサ、装備を置いていけ」
マンヒが高圧的に言った。
「え?」
その言葉に、僕は呆然としてしまう。
「その装備は、俺たちパーティのものだ。お前のものじゃない」
「……そんな――」
「――ああん!? 文句あんのかゴミが!」
マンヒは剣の柄に手を置いて臨戦態勢を取った。
くっついていたノーノも僕に拳法の構えを取る。ほぼ同時に、スコットが杖の先端を向けてきた。
皆が僕の敵だった。
「……わかったよ……」
僕の装備なんて、どうせ皆のあまりもの。こいつらにとっては別にあってもなくても良いものなのに……。
僕は装備を外していく。
まずは武器の『ステュクスの剣』を机の上に置き、
防具の、僕の鼻を横に突き通していた『とがったホネ』を抜き、
毎日着ていた愛用の『カメのこうら』を脱ぎすて、パンツ一丁になると、
背中の『登り竜のタトゥー』を消し、
最後に『ステテコパンツ』を脱いで畳んだ。
パンツ一丁に亀の甲羅を背負った、どこかの民族出身でその誇りを忘れてない男として、界隈で有名だった僕の姿は今や、みっともない全裸姿となった。
「あっはっはっはっは!」
「きゃははははははは!」
「ははははははははは!」
元パーティーの皆が腹を抱えて笑っている。
……僕が夢を諦めきれなかったばかりに、こんなことになったんだ……。
これからは一人で生きていこう。
仲間との縁が完全に切れた。いや……元々、仲間でもなんでもなかったのかもしれない。今も昔も、僕はひとりなんだ……。
なんか、逆にこんなパーティから解放されてせいせいした気持ちの方がデカいや。
僕は部屋を後にする。外は夜風が気持ち良い、裸だから全身で心地よい風を感じれる。
たしかゲリラ嵐が来るとか言ってたな……いつものように世間を騒がす嵐も、今はただ心地良い風だ。嵐でもなんでも来たら良い、ああ……なんて良い風なんだ。
そうやって風を感じてたら、警備兵に肩を叩かれた。
こうして僕は今、露出魔として取り調べを受けているわけだ。
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