第2章 過去の足音

第16話 強引で一番乗りなお姉様

第16話


新たな転校生が後ろの奴となり、隣の奴と俺を置いてけぼりにして修羅場った放課後。


面倒な事に巻き込まれそうな気配がするので、さっさと帰ろうとしていたのだが………


「ん?RAIN?一体、誰から………」


はブロックしてるし、から来る訳もない。


なら………


「えっ、お姉様!?」


交換した覚えがないのだが………


えっ、怖い………


『駅前のカフェに来てくれると嬉しいです。好きなだけ奢りますよ?』


はっ、そんな言葉で俺が釣れるとお姉様は本気で思っているのだろうか?


そんなの………そんなの…………


「行くに決まってるでしょ!」


飛鳥少年は意外とチョロい。


特に、奢りに関しては………


☆☆☆


「此処のカフェ、カフェオレが美味しいですね。デザートも最高です。」

「好きなだけ食べても良いのよ、貴方。私は貴方が満足すれば、それだけで満たされる妻なのだから。」

「ヒモ製造機みたいな発言は止めた方が良いですよ。後、俺は貴女の夫じゃないですからね、お姉様。」

「今はそうね。所で、この紙にサインをしてくれると助かるわ。」

「今も過去も未来もそんな事にはなりませんら。後、書きませんからね?」

「そう、冷たいのね。これが倦怠期という奴かしら………?」

「やっぱり、貴女達は姉妹だよ………」


うん、隣の奴も大概強引だが、お姉様も本当に大概だ。


変な所で似ているな………


まぁ、胸の方は隣の奴の惨敗………ヒッ!?


「あら、どうかしたの?」

「今、背筋に悪寒が………」

「そう?私は謎の優越感に襲われて、幸せで溺れそうよ。これも貴方のお陰よ、旦那様。ありがとうね。」

「もう良いです、好きにしてください。」


もうツッコんだら負けな奴だ、コレ………


「つまり、結婚してくれるの?」

「しません。少なくとも、そういうのは現在進行形で考えられませんしね。」

「ふ〜ん、何かあるのね貴方様。」

「────それ以上は止めてくれますか?それと、せめて呼称くらいは統一してくださいよ、お姉様。」


これ以上は踏み込まさせませんよ、お姉様?


「そうなら、貴方様で良いわ。末永く宜しくね、貴方様。」

「ええ、いつか別れが来るでしょうが、それまでは宜しくお願いしますよ、お姉様。」


そう締め括ると、お姉様は黙り込む。


だが、少しした後………


「────私は貴方様と結婚したいわ。」

「だから、無理ですよ。」

「ええ、そうでしょうね。」

「────頑なですね。」

「ええ、これを諦めたら、私はもう生きる屍になりそうだからね。」

「そうですか………」

「────それに、私と貴方様は一緒な気がするもの。」

「あ゛あ゛?」


────何が同じ?


お姉様と、俺の何が同じだって!!?


「貴方様も諦めてるでしょ?」

「───どうして、そう思うんです?」

「だって、貴方様………」


「私と同じ目をしてるもの。」と、彼女は告げた。


俺にはそれが解らない。


───だが、何となく真実の様に思えた。


「何があったのか、今は聞かないわ。」

「────助かります。」

「でも、これだけは覚えておいて。」

「はい?」

「私は貴方様の味方よ。貴方様が望むなら、何でもするわ。」


「例えば、貴方様を殺すとかね?」と、彼女ははっきりと言い切った。


ああ、駄目だ………


「敵いませんね、お姉様………」

「────私もよ、貴方様。私は貴方様に惚れているのだもの。」


────強いな、この人は。


だからこそ………


「俺は誰も信じない。お姉様は嫌いじゃないが、これ以上は止めてくれ。お願いだ。」

「ええ、仰せのままに貴方様」


────心底、嫌になる。


続く

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