第10話 普段の隣の奴

第10話


普通の女の子、どういう意味だろうか?


あの柔らかそうな身体つき、無駄に高い声、ちょっとだけ膨らんだ胸と、地味に主張が強い尻。


………うん、やっぱりアイツは女だよな?


「何か気持ち悪い事を考えてない?」

「いえ、別に。」


冷静に判断し、その要素を反芻してただけですよ、隣の奴のお姉さん。


「………はぁ、何かやりにくいわね。流石、あの妹がメスの顔を見せる訳だわ。」

「普通の女の子では?」

「そっちもよ。まぁ、そのどちらも私からしたら異常事態なのだけど。」


へぇ、アイツは家だと内向的なのかな?


所謂、内弁慶ならぬ外弁慶とか?


「………此処じゃ話しづらいわね。場所を変えようかしら。」

「ええ、もしかして強制ですか?」

「勿論よ。まぁ、お姉さんが奢ってあげるけど、どうする?」

「ええ、行きますよ!行きますとも!さぁ、早く行きましょう!場所は何処にします?回らない寿司屋でも行きますか!!」

「普通にカフェよ。」


☆☆☆


「いや、ありがとうございます!」


いやぁ、カフェだとしても奢ってもらうのは良い事だ!


「この男、ナチュラルにこの店で一番高い物を頼んだわね。周りの人にそれで今まで迷惑かけてきたんじゃないよ?」

「いえいえ、昔は質素で甘え知らずな上に我儘を言えない良い子でしたよ。まぁ、その反動ですね。」

「そう………嫌な時期に出会ってしまっと思って諦めておくわ。」


おお、大人。


そこに痺れる、憧れるぅ!


「ええ、それが良いと思いますよ。隣の奴のお姉様。」

「だから、隣の奴って何なのよ!というか、何かお姉さんからお姉様にランクアップしてない!」

「貴方の妹が隣の席だから隣の奴です。何か名前呼んだらウザそうだし。後、貴方は俺に奢ってくれました。信用も信頼も全くしてませんが、敬意は向けれるからお姉様です。」


いや、本当に良い人だ。


奢る事に対しては全くと言っていい程に、悪意も打算も感じなかった。


多分、この人は良い人だ。


信じるのは無理でも、関わる事自体は問題ないだろう。


まぁ、あの隣の奴のお姉様なので、面倒くさそうな所もあるのだろうが………


「はぁ、勝手にしなさい。………話がかなり逸れたわね。」

「ですね。お姉様の妹、隣の奴が普通の女の子してる姿が異常事態なんでしたっけ?」

「隣………まぁ、そうよ。あの子は常に、けど、の。」


笑ってるけど、笑ってない?


「あの子は全てを見下してるの。全ての存在が自分の言う事を聞いてくれると思ってるのよ。」

「そんな我儘な子供みたいな………」


親に甘やかされて育てられたクソガキ思考じゃん。


面倒にも程があるぞ?


………だから、俺にお願いを断られて泣いたのか?


「………子供か、確かにそうなのかもね。アイツは全てに甘えてる。それなのに、周囲には私以外にはどうしようもなく好ましく、可愛らしい存在に見えるのよ。貴方だって、何回もお願いを聞いてきたのでしょ?」

「いや、断ったけど………」

「そう断ったの………断った!?」


おお、凄いリアクション。


ていうか、お姉様さ。


少し隣の奴を過剰評価し過ぎなんじゃ………


………そう思った瞬間!


「やっと見つけた、私の王子様♪♪♪」

「………………………………………はぁ!?」


続く

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