第18話 私は何もしないよ?
第18話
「はぁ、疲れる………」
「あれ、大丈夫なの転校生君?」
「ああ、隣の奴か………」
あの転校生、鍵閉めなきゃ1000%俺の部屋に入って同衾するつもりだったぞ。
その攻防で寝不足な上に、朝食まで作らせやがった………
まぁ、今日の夜と明日の朝はアイツだから、部屋への侵入の阻止以外は楽できるので、多少はマシなのだが………
ちなみに、その張本人は用事とかで遅れるという始末だ。
「いや、お前のお姉様と転校生が強引というか、積極的過ぎてな。滅茶苦茶疲れてる。」
「そうなんだ、お疲れ様………」
そう言って、隣の奴はナチュラルに俺の頭を撫でてくる。
はぁ、疲れ過ぎて、拒絶や抵抗する気力も湧かねぇよ………
────いや、そんな事はどうでも良い。
良い機会なので、一つだけ彼女に問うてみる事にした。
「なぁ、隣の奴。」
「朱雀だよ!で、何かな転校生君?」
「俺は鈍感じゃない。お姉様や転校生のせいでなし崩し的に解ったが、お前は俺が好きなんだろう?」
「うん、そうだよ♪君が私のお願いを断った時からずっと♪」
断るんじゃなかったかな、アレ………
いや、後悔しても今更か。
「じゃあ、お前は何をするんだ?正直、先に教えて貰った方が、俺には心象的に楽なんだが………」
「何もしないよ?」
────えっ、コイツは今何を言った?
「私は何もしないよ、転校生君。」
「お前、それで良いのか?惚れられてる俺が心配するのも何だけど、典型的なWSSで泣く女子その物だぞ?」
その問いかけに、彼女は微笑った。
そして、満面の笑みで………
「私、確信してるもん。転校生君は私だけの物、私の愛を受け取れる唯一の人になってくれるって。だから、私は何もしないよ?」
────ああ、コイツは本気でそう思っているんだ。
何て、奴だ………
転校生の言う通り、傲慢だよお前………
怠惰で傲慢なんだ………
────本当に気持ち悪い。
「あはっ、やっと少しだけ見てくれた♪」
「なっ!?」
今、俺は何を………
「私は何もしないよ。しいて言うなら、私は君の隣にずっと居る。ずっと君の隣の奴で居つ続けるよ。隣で転校生君と同じ景色を見続ける。唯、それだけ。」
本当に中学生が怪しい妖艶な笑みで、隣の奴は俺を見据える。
そして、優しく俺の頭を抱きかかえ、耳元でそっと優しく………
「君を逃さず、ずっと隣に居るよ?ずっと、何処までも、永遠に。そうすれば………」
「何もしなくても、君は私を愛してくれる様になるからね♪」と、勝ち誇ったかの様に彼女は締め括った。
─────ああ、油断していた。
一番油断ならないのはコイツだった。
深淵を覗く時、深淵もまた此方を覗いているというのに、俺はバカだった。
「はっ、やれる物ならやってみろ。」
「うん、やってみるね♪」
────そして、今の俺はこんな負け惜しみを言う事しか出来なかった。
はぁ、本当にしてやられたよ………
続く
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