第21話 義妹の涙

第21話


「────それは、お前の父親や母親に聞けばいい。泣き落とせば、教えてくれるさ。」


───と、心にもない事を言う。


これじゃ、唯卑怯に逃げて押し付けてるだけだろうに………


「あの人はママと結婚したけどね、私の、私のね、パパじゃないよ。それにね、ママは嘘つきだもん。」


はっ、ざまぁみろだ、クソ親父………


────だが、三葉の母親が嘘付きか。


くくっ、確かにな………


あの人は大嘘付きだ。


正論を吐きながら、本音を隠そうとして、逆に人を傷付ける。


どうしようもない、酷い人だった………


「そうか………なら、お姉ちゃん達に聞くと良いさ。あいつ等なら、よ〜く教えてくれるだろうからさ。」


────をな。


「やっぱり………」

「ん?どうした、三葉?」


三葉が考え込む様な姿を見せる。


そして、恐る恐る上目遣いで………


「どうして、そんななの?」

「そんな?」

「だってね、お兄ちゃんはね、お姉ちゃんをね、名前で呼んでたよ!なのに、今はね、呼んでないもん!」


────しまったな、やらかした。


しかし、よく見てるなぁ、三葉は………


思わず、関心しちまった。


と一緒に成長を見守りたかったんだけどなぁ………


「そうだな………そうだったよ………」

「うん!お姉ちゃん達もね、お兄ちゃんが居なくなってね、可笑しいんだよ!」


アイツ等が?


ないない、何かの間違いだろう。


そんな訳が………


「お姉ちゃん達も、嘘付きなの!ずっと、嘘付いてるって解るもん!」


泣きそうになりながら、三葉は俺に抱き着いてきて………


「お願い、帰ってきて………」


「無理だ。」…………


この子以外の他の誰かが来てたなら、こう即答していただろう。


だが、この子にはそれが難しい。


全く、これが幼さという武器か………


だから、俺も………


「ごめん、三葉。今は帰れない。」

「………そうなの?」

「ああ。でも、必ず帰るから。」


心にもない事を、バカバカしい嘘を付く。


我ながら、反吐が出るな………


本当に気持ち悪い大嘘付きだ。


─────帰る気なんざ、最初から皆無だというのに。


「そうなんだ………なら、待ってるからね!三葉ね、三葉の所に、帰ってきてね!」

「ああ、勿論。」

「約束だよ?」

「………約束だ。」


と、指切りげんまんをする。


はは、針千本を飲まされるのは確実だな、コレは………


こんな約束────最初から守る気など皆無なのだから。


「じゃあ、帰るね♪」

「服は良いのか?」

「うん、お兄ちゃんに会えたもん♪」

「そうか………」


そう言うと、彼女は離れていく。


ほんの少しだけ寂しい気もしたが、多分気の所為だろう。


そんな事を考えてると………


「お姉ちゃん達にはね、お兄ちゃんに会った事ね、ナイショにするから!」

「えっ………ああ、助かるよ三葉。」

「だから、約束守ってね!大嘘付きな私の大好きなお兄ちゃん♪」


────と、爆弾を残して彼女は帰っていった。


おいおい、マジかよ………


「バレバレだったかぁ………」


────はは、俺はあんな幼女にも敵わないのか。


続く

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