第30話 釣り釣られ

第30話


「転校生君………」

「貴方様………」

「ダーリン………」

「言うな、断われなかったんだ………」


物凄い重い視線を大人しく浴びながら、黙り尽くす俺。


そして、そんな俺の先には………


「待っててくださいね、恩人さん。貴方とついでに同居人の人達の為に魚料理を振る舞いますからね♪」


はい、何故かあの財布拾ってくれた女が俺の家で料理を作ってる。


あの3人のアホどもは自分を棚に上げて、何連れ込んでんだと避難してるのだろう。


「何で知らない女の子を連れ込んでるのかな?かな?」


ほら、案の定だ。


「これ以上、ペットは要りませんよ?」


人をペット扱いするな。


というか、流れ弾で俺がそんな変態野郎になりかねないから止めてくれ!


「ダーリン………どんな魚料理が食べれるんだろうね?楽しみだなぁ………」


おっと、此方は純粋に楽しみにしてるらしいぞ!?


まぁ、本音を言うと、俺もお前らが居なければ普通に楽しみなのだが………


「はい、出来ましたよ。カレイの煮付けに、ちょっと早いですけど秋刀魚の塩焼き、それに色とりどりの刺し身となります。お好みで大根おろしもどうぞ!」

「こりゃ凄いな………お前ら、言いたい事とか色々あるだろうけど、今は………」

「「「「いただきます!」」」」


☆☆☆


「美味しかったな………」

「ふふ、どういたしまして♪」


彼女に振舞われた料理を食べ終わり、彼女を送る事になった俺。


あの3人は最初文句を言いたげだったが、隣の奴が早々に諦めたのを見て、最終的には見送ってくれた。


「鼻血を拭く為のティッシュを渡しただけなのに、こんな豪華なお礼をしなくても大丈夫だろうに………」

「いえいえ、私には充分な恩でしたよ?」

「そうなのか………?」


変な奴だな、コイツ………


「あっ、私の家は直ぐそこなので、ここら辺でもう大丈夫です!」

「解った。───今日はありがとうな。アイツ等にも振舞ってくれて。」

「いえいえ、恩返しですから。では、また会いましょう!」


と、元気よく走っていく彼女。


おいおい、また転けなきゃいいが………


「ぎゃふん!?」


あっ、思った側から………


「おい、大丈夫か!?」

「えへへ、また転けちゃいました。私、少しドジなんですよね、えへへ。」

「それは何となく見ただけで解る。てか、また鼻血出てるじゃないか、ほら。」

「あっ、ありがとうございます!」


あれ?これって、また………


☆☆☆


次の日。


「はい、ルアーです!また昨日の恩返しにやって来ました!」


ええ………


「転校生君?」

「貴方様?」

「ダーリン?」


はは、返す言葉がない。


「では、今日もパァっと魚料理を振舞って差し上げましょう!他にも頼みたい事があれば何でもしますよ!」


女の子が簡単に何でもとか言うなよ………


「えっ?普通に何でもですよ。」


そう言って、彼女はスカートを捲って、可愛らしい下着を見せつけながら………


「私は餌ですからね、私を食べても良いんですよ?」


何だ、コイツもあいつ等の同類か………


「んな事するか!」

「きゃん!?」


何で俺の周りの女の子はこんなのばかりなんだろうか?


────三葉だけが癒やしだな、もう彼女の所に戻るつもりは皆無なのだが。


続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る