夏遊び
約束通りに
そこは車を止めた場所から少し離れた獣道を下っていく必要があるけど僕ら以外の人がいない貸切状態だった。
道路側から見ると茂った木々で川原が見えない。
「紅葉のシーズンになるとこの辺りはとても見応えあるわよ」
「その頃は流石に受験勉強に追われてますね」
「そうですね」
「そっか、残念……」
「そのうちまた来たらいいわよ。あなた達にはまだまだ時間はたくさんあるんだからね」
「「「はい」」」
僕と
その場所は二つの三メートル越えの岩に挟まれていて道路側からも完全に死角になっているし僕がいるところからも見えない様になっている。
「あそこはね、元々強い流れが当たって岩の間が掘れているんだよ」
「そうなんですね」
「あの大きな岩も元はひとつの岩が割れたっていう伝承があったはずなんだけど、なんだったかな?」
う〜んと唸る
「やっぱり思い出せないや、興味があったら自分で調べてみて」
「時間ができたら……」
「あ〜っ、それ、調べないヤツぅ」
「うっ……」
「まあ、今は受験勉強もあるしね」
「そういう事にしておいてください」
「あははっ、そうしておくよ」
バーベキューコンロを設営している間に二人が川に入っていた。
バシャっという音に振り返ると流れの緩いところで遊んでいた。その水着の破壊力にドキリと心臓が弾む。
やま、
どちらの水着も胸と腰まわりの体型が隠されているはずなのに、想像力を掻き立てられる。
「
「あ、でも、いいんですか?」
「うん、いってらっしゃい♪」
「
「
「
慌てて
「けふっ、あっ、大丈夫です、足を滑らせただけです」
「
「……っ、それ!」
「ひゃっ!」
そんな風に遊ぶ
とか考えていたら二人に両側から水をかけられた。
「ぷわっ!?」
「スキあり」
「油断大敵ですよ」
「ふ、ふふっ、やったな……」
二人の間に向かって駆け込む。バシャバシャと水を跳ね上げてそのまま淵に飛び込んで後ろから二人に水をかける。
きゃー、きゃーと声をあげて逃げる二人。
「あっ、そっち行ったら……」
制止するよりも早く深い方に逃げた
「きゃぁ!?」
叫び声と大きな水音と共に
僕は慌てて
もがいている
「
慌てている事が伝わらないように努めて声をかける。
「あ、あっ、はい、だ、大丈夫です……」
「はぁ、よかったぁ」
「
「せ・ん・ぱ・い、右手が幸せそうですなあ♪」
右手?なんの事?疑問に思いつつ右手に意識を集中すると「んっ……」という声が
えうっ!?これって、もしかして……、右の掌に感じる柔らかな感触。
「もう……、離して、ください……」
消え入りそうな程にか細い声で訴えかけられて状況を把握した。
「ご、ごめん!わざとじゃないんだ!咄嗟に!」
僕が慌てて手を離したことで
三人が川から顔を出しお互いに笑い合う。
「あ〜、ビックリした」
「どさくさに紛れて
「あっ、あれは、その……」
しどろもどろに返答ができずにいる
「あれは、わざとじゃなくって、咄嗟の事だから!」と答えてみても
「ん〜、そういう事にしておきましょうか。そ・れ・に、触りたい時は私に言ってくださいね♡」
ビキニの胸を強調するようにして僕を揶揄ってくる。まったく、川に遊びに来てテンションが上がりすぎてないか……
「はい、はい、その時はよろしくねぇ」
「むぅ〜」
おざなりな返事に不満げな
そのあともう少しだけ川で遊んでからバーベキューを楽しんだ。
事前に食材の準備はしていたので火をおこして焼いていくだけなんだけど、こういう自然の中で食べるといつもと違って特別美味しく感じられる。いや、
焼くのは主に
「
「あうっ」
母娘の微笑ましい会話を聞きながら焼けたお肉を頬張る。うん、美味い。
「
「お、お嫁さん……」
「そうだ!時間の空いてる時でいいから
「お、お母さん!?」
「は、はい」
「はい!決まりぃ」
今のって、
「食材とかの費用はこっちで出すからね。あとで連絡先の交換しよ!」
「はい」
結局、勢いに流されて
何故か
バーベキューの後片付けをしてからもう少しだけ川で遊んだ。
意外な事に
(今まで僕達の通う学校に水泳の授業がなかった)
僕は泳ぎに苦労した事がなかったから気づかなかったんだけど、
時間いっぱい練習をしてどうにか息継ぎができるくらいにはなった。
「また今度練習しましょうね、
「はい……、お願いします」
なんだかんだいって、この二人、案外相性がいいのかな?
帰りの車内、後部座席で二人が肩を寄せ合って眠っている。その姿を助手席から振り返って確認すると微笑ましい気持ちになった。
「
「はい、今日はありがとうございます。うちは両親共に仕事が忙しくてこうやって出かける機会がなくって楽しかったです」
「普段、料理は
「はい、恥ずかしい話ですけど家事は任せっきりです。僕が手を出すと余計に仕事が増えるって言われて……」
「なるほでね。でも、できるところは手伝ってあげないとダメだぞ」
「そうですね。甘えっぱなしってわけにもいかないですもんね」
(まあ、それが嬉しいって事もあるんだけどね)
二人の関係については
そうしないとますます入り込む余地が無くなりそうだと感じたのは内緒。
(
今はまだ情報の無い、
それに二人にもまだチャンスはあるかもしれない。何も相思相愛になる事だけが恋愛じゃない。たとえ片想いに終わったとしても後悔の無いように頑張って欲しいと思う。
「がんばれ、三人とも……」
「ん?
「ん、なんでもないよ。
「はい、少しだけ眠らせてもらいます」
「は〜い、おやすみ」
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ご無沙汰しております。
花粉症でぼうっとした頭で入力してたら誤ってデータ削除……、書き直したりしているうちに随分更新が遅れました。
春の花粉は大して酷くならなかったから油断してたら秋はかなり酷い状態で、長引いています。
作中ではまだ夏休み……
夏は花粉がなくて良かったなあ……
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