文化祭の出し物
話しかけてくるクラスメイトが増えた以外には代わり映えのない日々を過ごしていた。そんな中でもイベントは発生する。
うちの高校は二学期のイベントを一学期に前倒しにしているものがある。
その中の一つであり、一番大きなものがこの後控えている。文化祭。
スケジュールは結構タイトで期末試験後の一週間が準備期間と開催日。月曜日が振替休日で火曜日に片付けを済ませて、水曜日が終業式で一学期が終了となる。最初は驚いたけどもう慣れた。
体育祭と文化祭が交互に行われているこの高校。
一年時と三年時に文化祭が回ってくるという、まあ、微妙な感じ。
一年時は要領がわからずクラスの盛り上げ役が空回りした感じで終わったと記憶している。そして三年時の今年は受験がひか控えているため進学を視野に入れている者達は文化祭より受験勉強を優先する。
それでも盛り上げたいと考えるのがカースト上位にいて成績にも余裕のある者達。青春の彩りとしてこれ以上のものはないんじゃないかな。
どうしてこんな事を考えているのかというと、今まさに出し物を何にするかという議論がなされている真っ最中だから。
候補は執事喫茶、ロシアンたこ焼き屋、お化け屋敷に絞られて来たところ。
僕の推しはロシアンたこ焼き。
一番の理由はメニューを限定する事で必要となる食材、調味料を減らせる事。それと教室全体を飾り付けるのに比べると部分的でいいと思われるから受験勉強を優先する者も参加しやすいだろうと考えたから。
僕も水曜日はリモートで週末は直接会って
少しは成績も上向いているという実感は持っている。それでもまだ足りない。
僕としてはこれ以上は決まったものに従うだけと思って、参考書に目を通し、昨日勉強したところを復習していく。
「それでは、文化祭の出し物は決定しました。男子はホームルームの後、採寸するからねぇ」
「…………」
「それでは詳細を詰めていきましょう」
再び議論を繰り広げ始めていく。
そうして決まったのは、
・ホットプレートは持ち寄り。
・衣装は有志による製作。
・男子による外観作り。
・資材は部室棟に置いてある今までに使用して解体されているものに塗装する。
と至極真っ当なものだった。
「まあ、とりあえずは今回はここまでで良いだろう。委員長はまとめて報告な」
「はい」
「よし、じゃあ、ホームルームは終わり」
担任の声に教室内の雰囲気が弛緩する。
「男子〜、こっちに来て〜」
数人の女子が手を振っている。
「順番に採寸するからねぇ」
「部活のある人優先でいい?」
わいわいと騒がしくも順調に採寸は進んでいった。
「必要な生地は型紙を起こしてからだねぇ」
「あ、もう男子解散していいからね」
「作業開始は明日からになると思うからそのつもりで。じゃあ、解散です!」
「あ〜い」
「おつ〜」
「またな」
口々に挨拶をして教室を出ていく。
衣装班はこれから型紙作り。なんか楽しそうにしているなあ。
そこに混ざった委員長も普段は見せないような笑いを湛えていた。
「あれは、見たらダメなやつだな……」
僕は見なかった事にして教室から出た。
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