仲の良かった美人の義妹と幼馴染から地味で不釣り合いな僕は周囲の視線に耐えられず離れていく事にしました。〜後輩美人女子が近寄ってくると二人の様子がおかしくなりました〜
鷺島 馨
プロローグ
僕、
現在の僕はというと高校三年になっても内向的な性格が改善されない、一度も誰とも付き合った事がない典型的な陰キャと言われる男子。まあ、外見も想像してもらえると分かると思う。
因みに身長は165cm、痩せているといえばモテる要素はないだろうと僕は思っている。
両親には小さい頃からそんな僕と義妹を比べられていた。
両親からしたらうちに来たばかりの
僕が中学になった頃には
女子の方が性知識には敏感だというから、血の繋がらない同い年の男子が一つ屋根の下で暮らしているその事に警戒してもおかしくないかと納得をしたのが思い出せる。
だからだろうか、中学になって暫く経った辺りから僕らは疎遠になっていった。正確には僕から距離をおく様にした。それも仕方がないだろう。二人は贔屓目に見ても魅力的な女性だった。
髪と目は実母譲りの明るい茶髪に翠眼。スレンダーな体型に控えめに主張する胸と腰。これだけでも年頃の男子には目の毒。
当時、そんな二人と僕が一緒にいるという状況を面白く思わないのは男子だけではなく女子も一緒だった。
入学当初から浴びせられる悪意ある視線、一緒に登校していた二人がそれに気づく前に僕は視線に耐えられずに登校時間を変えた。二人から問い詰められたけど『放っておいてくれ!』とはじめて強く拒否を示した。この時から僕たちは別々に過ごす様になった。
彼女達はスクールカースト上位の住人。僕は最底辺の人間。周囲のからもそれが当然という様に僕に向けられていた視線も僕から離れていった。
そんな僕は先日過ちを犯した。
「先日は助けて頂いて有難うございます。お礼をしたいのですけれど……」
その女子はリボンの色から見て二年生の女子。
目立たない子ならまだ良かったんだろうけど彼女も容姿が良かった。控えめにいっても美人。
「おい、あの子って二年の
また、あの嫌な視線が僕に集まってくる。堪らず僕はその場から逃げ出した。
「あっ、待ってください」
声をかけられた気がしたけど気にする余裕は僕にはなかった。
彼女との出会いは、駅前で落とし物を探していたところに偶々僕が居合わせた事。周りの人達は彼女を避ける様に歩いていく。それを悪い事だとは言わない。
ただ、同じ高校の女子が困っている事を見過ごす事に嫌悪感があっただけ。自己満足以外なにものでも無い。偽善だと言われればその通りだろう。
彼女の落とし物は小さなキーホルダーの付いた鍵。カバンから定期を出した際に引っ掛かって落としてしまった所を通りかかった人に蹴られてしまったとのことだった。
その話を聞いて一緒に探す事にした。なんとか日が暮れる少し前に彼女の落とし物は見つかった。
「ありがとうございます」
「もう暗くなるから気をつけて帰ってね」
これだけの関係。自己満足でやった事にお礼の言葉以上の事は求めていない。なんならお礼もなくて良いくらい。
こんな美人な子と必要以上に接するべきじゃ無い。またあの目を向けられるのは嫌なんだ。
あの日から土日を挟んで二日が過ぎた火曜日。僕と彼女が関わり合いになる事はもう無いと思っていた。それなのに今日、僕のクラスにやって来た。だから僕は逃げ出した。
あれから逃げ続けていたけど諦めてくれない。まいった……
昼休みと放課後に決まって彼女は僕を訪ねてくる様になっていた。それが面白くない男子からは刺すような視線を浴びせられて肩身が狭い思いをしている。こんな事ならあの時にちゃんと話を聞いておくんだった……、後悔先に立たずとはこういう事か。
今日は両親ともに帰りが遅くなるという事で珍しく
夕飯を食べ終わったタイミングで
「
普段の柔らかな雰囲気を微塵も感じさせない冷たい声で
なんと答えたら良いのか分からず部屋に逃げた。僕、逃げてばかりだな。
「待って、
部屋の鍵をかけてイヤホンを着けて音量高めで音楽を再生した。
◇
こんな事は今回がはじめてじゃ無い。中学生になって直ぐに一緒に登校しなくなったあの頃にも同じような事があった。あの時もこういう風に逃げ続けられた。その経験から少し時間を置く事にした。でも……
「
なんでかなあ、モヤモヤする。
◇
「
「はい、
「ここだと少し話しづらい内容なの。ついてきてもらえる?」
「はい」
私たちはこの時間、利用者の少ない図書室へと移動する。
「貴女が
「
「私と
「っ、そうですね、
「そう、それなら、無理に追いかけなくても手紙でも良くない?」
「でも、直接伝えたいんです」
「逃げてるっていう事は、相手の迷惑になってるかもしれないのよ。それでも、貴女の気持ちを押しつけるの?」
「
「そう?手紙を渡すのなら私が仲介してあげられると思うから、その時は声をかけてね」
「はい、その時はお願いします」
その後は図書室で私たちは別れた。
ふう、
私は別に
「
そう呟いた後、私もクラスに戻る事にした。
◇
私の好みが一般的でないことくらい理解している。
だって、あんな内向的で、自分に自信が無くて、女性に興味があっても手を出す事ができない。色々と理由をつけて困っている人に手を差し伸べられる優しさ、磨けば光りそうな容姿。そういう男子が私は好き。
それに、鍵を見つけてくれた時のあの笑顔に一目惚れをした。タイプの男子、それにあの笑顔、これで惚れないわけがない。
絶対、
◇
クラスの自分の席でソシャゲをしていた
◇
夕飯を済ませた後、
あんなに美人なのに彼氏もつくらないのは
「これでよし。
◇
「
まだ、幼い頃の事を思い出す。
これは
あの時、私は近所の大きな飼い犬に襲われた。普段なら鎖で繋がれているその犬は前を通る人に誰彼構わず吠える事で有名だったけど繋がれているなら、ただのやかましい犬という認識だった。
それなのに私が
恐怖のあまり叫び声も上げる事ができずにいた私を庇って
その時の事が鮮明に私の記憶に刻まれている。幼いながらに私は
「
◇
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