優璃の気持ちと発熱
悶々とした気持ちのまま部屋の中で恋愛小説を読んでいた
「この本読んでると、どんどん意識しちゃう……」
クラスメイトに勧められて少し強引に押しつけられた小説。
その借りた本の内容は端的に言うと姉と義弟の恋。
高校になった義弟は普段は素っ気ない姉の事を女性として意識し始めていて、姉も薄々そういった義弟の雰囲気に気がつき始めている。
今読んでいる時点では姉には恋人がいる。けれど、義弟の向けてくる好意に戸惑いながらも嬉しく思っているというあたり。
なるべく意識しない様にと思って読んでいるのだけど、どうしても自分と
作中の姉の恋人には
このまま義弟と姉が惹かれあっていけば姉の恋人はフラれてしまう。
そして義弟と姉が結ばれてしまうのだろう。作中の二人にとってはハッピーエンド。でも、フラれた恋人は?その事をどうしても考えてしまう。
「ダメダメこんな事を考えてたら。
私が
「ドキドキは、しない。かな」
これでドキドキでもすれば私は
そう考えてもモヤモヤするのはきっとこの小説のせい。
「私を惑わす悪い本なんだから……」
今日はこれ以上読むのを辞めて寝よう……
◇
「あの
僕が
「やっぱり女子の考えてる事は分からないなあ……」
受験の為に参考書を開いて勉強していたんだけど機嫌が悪いままで部屋に戻っていった
「何に対して謝りたいか分からないのに謝ってもなぁ」
幼い頃の僕はそれで一度失敗している。
何が原因で怒らせたのか今となってはもう思い出す事もできないけど、あの時も機嫌を損ねた
今思えば誠意のこもってない上辺だけの謝罪。そんなもので謝罪になるはずがなくて余計に機嫌を損ねたことが思い出される。
「理由を聞いても余計に機嫌を損ねるだろうし、ここは生還するしかないか」
無難な方法で切り抜ける事を考えて参考書に視線を戻す。
◇
その晩、何年かぶりに
幸い高熱というほどではなかったのだけど、思考がうまく働かない程度には熱が出ていた。
それは夜中に起きた出来事。
発汗により喉が極端に乾き台所まで水を飲みに行った戻りの事。
フラフラする足取りで階段を登り、扉のノブに手を掛けた。いつもと違う方向に向いている事など気づく事もなく部屋の中に入り、目の前のベッドに倒れ込むように突っ伏した。
「ぐぅえっ」
変な音がしたけど、それを気にする余裕はなく、発熱のせいで掛け布団をかける気にもならなかった。
「汗で気持ち悪い……」
そう呟いて
◇
翌朝、僕はいつもより遅い時間に目を覚ました。
いつもならこの時間より早い時間に
そしてタイミングの悪い事に両親共に出張中という間の悪さだった。
スマホを取ろうとしていつも置いている所になくて手で布団を弄った。
しっとりとして柔らかくて熱っぽいものに触れる。フニフニと触ってみてもその感触に思い至る物はない。
「なんだこれ?」
手の方に顔を向けるとパジャマをはだけた
「
呼びかけて、肩を揺する。
「
潤んだ瞳で
「額、触るぞ」
「はい……」
額に触れた手はやはり熱い。
「体温計を持ってくるからそのまま寝とけ」
「すみません……」
「いいから」
「今日はもう休む様に連絡しておくぞ」
「
「母さんも居ないのにそういう訳にいかんだろ」
「でも……」
「いいから、先生には夏休み中に顔を出すって伝えとくから」
「はい……、すみません」
「ん、そのまま寝とけ。要る物が有れば買ってくるけど」
「スポーツドリンクが欲しいです……、けど、今は手を握っていて欲しいです……」
「分かった。眠るまで手を握っておくよ」
「ありがとうございます……」
程なくして
寝息は安定しているから寝てれば良くなると思うけど、今日は一日ついていないとな。
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