変化
いつもより早く起きた僕は朝から
「はい、これで良いですよ」
「ありがと」
昨日、髪型を整えるやり方を覚えるまで、
これが
だから二人にはそういうところに気がついたら指摘してほしいとお願いした。小さな事だと思うけど自分一人で気づけないのなら助力を求めるしかない。
「少しはマシになったのかしら?行ってきます」
「「行ってらっしゃい」お義母さん」
忙しく働く母さんを見送ったのは何ヶ月ぶりだろうか?
両親共に平日は僕が起きる前から出勤して帰ってくるのは夜遅く。
僕は社畜にはなりたくないと改めて実感。
母さんの残したマシとは見た目の事?それとも助力を求める事にしたことを言っているのだろうか?
「いつも母さんはこんな時間に出かけてるのか?」
「そうですよ、お義父さんはもっと早いですよ」
マジか、母さんも父さんも働きすぎで倒れるんじゃないか?
僕は両親の仕事を会社員としか知らない。どんな仕事をしているのか詳しく聞いた事がない。小さい頃に聞いたのは会社に勤めているという話だけだった。
将来の事を考えるなら今度話を聞いておこう。社畜になって
制服に着替えてリビングに降りてくると
「
「そうだね」
今朝はご飯、焼き鮭、味噌汁、漬物といったもの。
「いただきます」
「はい、召し上がれ」
◇
朝食を終えた僕は
「いつも家事をして大変じゃない?僕も少しでも手伝いたいんだけど」
「そうです?もう慣れてしまって苦では無いんですけど。そうですね」
顎に手を当ててう〜んと唸っている。元がいいからこういった何気ない仕草も様になってるなあ。
「食器洗いからやってみましょうか?」
「うん、それじゃあ」
「あっ、朝はやります。夕方からでいいですよ」
「わかった」
不慣れな僕の手際が良くない事を理解している
それでも手伝わせてくれる様になっただけでも少しは認めてくれたのかな。
◇
駅までの道すがら時々立ち止まって僕を見てくる
「どうしたの?」
「いえ、改めて見違えたなと」
うんうんと頷いている。
「今の
◇
学校が近づくにつれてクラスメイトの姿がちらほら見えてくる。僕と気が付かない者が大半、僕を見て目を見開いて足を止める者や口を開けて硬直した者が少数いた。まあ、その反応は想定していた。
「おはよう」
「お、おはよう、心境の変化か?」
「うん、シャンとしようかと思ってね」
僕にだけ分かる様に小指を立てる。
「うん」
「そうか、よかったな」
「ありがとう」
「あれって
「
こんな言葉が聞こえてくるのだが結構失礼じゃないかな。
「はぁ、いい……」
「委員長、鼻血……」
あっちでは委員長が鼻血を垂らしていた。
僕の変化は少しだけクラスに困惑を招いた。
これは
思わず苦笑が溢れた。
ホームルームが終わった後、担任に教室の外に呼び出された。
「何か心境の変化があったんだろうけど頑張れよ」
入学してから今まで僕の事を見てきたからこそそういう風に感じて励ましてくれているのだろうか?
「先生、後で進路について相談したいんですけど」
「お、昼休みでもいいか」
「はい、お願いします」
「分かった。昼食を済ませてから職員室に来てくれ」
「はい」
◇
午前中は今までより集中して授業を受けた。
そんな僕に対する反応は教師によってまちまちだったけど、概ね悪いものではなかった。
いつもの様に一人で昼食を食べ終えて担任のところに向かう。
「失礼します」
職員室って何故か緊張する。
担任の姿を確認してそっちに向かおうとしたんだけど手で制された。
「進路指導室に行こうか」
「はい」
担任と移動していると
彼女は少しだけ表情の変化を見せたけど声をかけてきたりする事は無かった。
「それで、進路相談とは。進学すると言っていたが就職に切り替えるのか?」
「いえ、志望大学についての相談なんですけど」
「おお、決めたのか」
「はい、永宝大学を受験したいと思っています」
「どの学部を受けるのか決めているのか?」
「その事について相談したかったんです」
「なるほどな」
その後、担任と電子黒板に映された大学の資料を交えて相談をした。やっぱり高校生にとって大学の学部っていうのは馴染みが無いから相談してよかった。
ただ、今のままじゃあ合格は厳しいという事も理解した。
「普段の勉強も今まで以上にしていくとして、予備校に通う事も考えた方がいい。こっちは親御さんとも相談するようにな」
担任はいくつかの予備校の名前を書いて僕に渡してくれた。
「それで、どういった心境の変化なんだ?」
さっきまでとは打って変わって砕けた感じで話しかけられた。
「どうと言われても」
ここで馬鹿正直に
テンパってプロポーズしたなんて経緯が恥ずかしすぎる。
「まあ、その変わり方からすると彼女と一緒の大学に行きたいとかだろうけど」
内心を見透かされた様な気がしてドキっとした。
「二年の
「はい」
あのSNSは担任も見ているだろうから
「そうなると
「ぶはっ!?」
担任は当然、僕と
そして、僕の周りにいる女性というと
「違いますよ。
「違うのか?義妹とは結婚できるんだぞ」
初めて知ったけど、その情報は知らなくても良かった。
「
「ん?こんな冗談、
「ソウデスカ……」
少しは教師らしいところを見せたと思ったのにこの先生は……
「そろそろ教室に帰れよぉ」
呆れていると担任はノートPCを終了させて電子黒板に繋いでいたケーブルを外し始める。話は終わりという事だろう。
「はい」
僕は席を立つ。
「まあ、また何かわからなければ相談して来い」
「分かりました。失礼します」
進路相談を終えた僕は教室に戻る事にした。
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