山梨家で
「私、着替えてきます。先輩はここで待っていてください」
彼女はそう言って僕にリビングの席をすすめ、麦茶の入ったコップを置いて出て行った。
なんとなく頬に赤味が差していた様に見えたのは気のせいだろうか?
「お待たせしました」
「ううん、大丈夫だよ」
教科書やノートなどの勉強道具一式を手にリビングに戻って来た彼女の姿は刺激的すぎる。
ホットパンツにゆったり目のTシャツ。
胸元が意外と広く開いたTシャツからはブラの紐がチラリと覗いていた。
これ、言った方がいいのかな?
意識してドキドキしていると隣の席に彼女は腰をかけた。
ノートと教科書を開いて、「ここが分からないんです」そう言ってきた。
これはドキドキしてるのがバレないようにしないといけない。
ん、んん。僕も真面目に教えないとな。
彼女の開いた教科書に目を向ける。その上で解きかけになっているノートを確認すると関数の問題で躓いていることが分かる。
「
疑問に思った事を問いかけてみた。
なんと無くだけど理解できないでいるうちに授業がどんどん進んでいって、ついていけてない。そんな印象を受けた。
「実は、五月に体調を崩して暫く休みました」
それでか、先生がよく『分からないところは聞きに来るように』とか『復習しとけ』とか言うのってその続きに『そうしないとすぐに授業についてこれなくなるぞ』という意味があると僕は思っている。うちの様な進学校は特にその傾向が強いと感じている。
「分からなくなったところを先生に聞きに行ったりはした?」
「いえ、その間のノートを写させてもらったりする方を優先させていました」
成程、それで理解できていない状態で授業がどんどん進んでいってどこから分からなくなったのかが分からなくなったということか。
「それなら、休む前の所から復習しようか?」
「はい、すみません」
どこまで理解できているのか。その確認のために休む前まで戻る。
これは、他の科目も確認した方がいいのかな?
遡って確認すると休む前の所までは理解できている様な感じかな。
でもこれでどこから手をつければいいのかは確認する事ができた。
丁度、これから夏休みを迎えるから授業がこれ以上進む事は無い。
「これから休む前の所から復習していこう。今、やってる所まで追いついたら予習もしておいた方が授業での理解が深まると思うからそれもしよう」
「はい、頑張ります」
そう言って問題に取り掛かった彼女を横目にして僕はドキッとしてしまった。
今までは教科書とノートに意識を集中していたのだけど、気が緩み広い範囲を意識した。そうすると彼女の姿を捉える事になる。つまりですね胸元の開いたTシャツから覗く彼女のブラジャーが見えたんです。
慌てて視線を外すとそこにはいつの間にか帰ってきていた
胸元に視線がいってた事バレてる。
「夕飯も食べていくよねぇ」
にこやかに告げられたその言葉に逆らえそうに無い。
「はい。ご馳走になります」
僕は速やかに『夕飯はいらない』と
真剣に問題を解いている
「それで、君は
「美人だとは思っています」
「それだけ〜?」
揶揄いを含んだ声での質問。いくら僕が鈍くても好きかどうかといった事を聞いているのだという事には薄々勘づいている。
「付き合ってる人がいるので」
「あら、そうなんだ」
それでこの話題には興味をなくしたのか話題が変わった。
「食べれないものある?」
「特に食べれないものはないと思います」
「ん、分かった」
そんな会話を
振り返ると
「先輩がお母さんを狙ってる……」
とんでもない事を言うんじゃありません!?
彼女の隣に戻ると更なる追撃が待っていた。
「先輩は歳上が好きなんですか?」
このなんとも否定できない質問。
「どうなんですか?」
「嫌いじゃないです」
「やっぱり、お母さんを狙ってる!?」
驚愕の表情で僕を見るのはやめて!?
「あらあら、私、狙われてるの?」
「えっ、あの、その、違います!?」
「ん、んん。問題は解けた?」
「話を逸らした」
「逸らしたわね」
「すいません、ゴメンなさい。勉強に戻らせてください」
「仕方がないわねぇ」
最初から揶揄うだけだった
◇
ある程度勉強が進んだところで夕飯の準備が出来たと言われた。
テーブルの上を片付けて料理を運ぶ手伝いをする。
オムライスにハンバーグ、大皿に盛られたサラダにコーンポタージュ。
「お口に合うといいんだけど」
これがラノベとかだと見た目はいいけど味が悪いってオチなんだろうけど実際にはそんな事はないだろう。見た目がいいって事は調理スキルが高くないとダメだと僕は思っている。「いただきます」を唱和して早速オムライスを口に含む。
「おいしいです」
「良かった〜」
「お母さん、心配しなくても料理上手じゃない」
「料理はね。好みがあるから、初めて振る舞う時にはドキドキするのよ」
それもそうかと納得のいく話だったけど、目の前の料理は確かに美味しくて、つい箸が進む。
この後、食後のコーヒーと共にちょっとした雑談を三人で交わしてから僕は帰る事にした。
「今度までに僕からの宿題済ませておいてね」
「はい、頑張ってやります」
宿題と次の勉強会の予定も決めて席を立つ。
「
「先輩、有難うございました」
「はい、ご馳走になりました。
「名前で呼んであげないと分からないわよ〜」
「ん、んん。れ、
「はい……、おやすみなさい……」
恥ずかしさを誤魔化すように踵を返して僕は家路についた。
◇
家に帰った僕を待っていたのはジト目で見つめてくる
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寝落ちして更新予約入れ忘れていました。
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