第10話(1)双方の思惑
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「作戦会議ということは……もう動くということですね?」
「ああ、猶予は残されていないだろうからな」
「生徒会に殴り込みをかけるという感じですか?」
「ええっ⁉」
四季の言葉に超慈は驚く。姫乃が間をおいて答える。
「……そうだな、相手の虚をつくのならばそれが良いだろう」
「け、結構思い切り過ぎじゃないですかね……」
「相手の仕掛けを待っているほど私はお人好しではない。月並みな台詞だが……『やられたらやり返す』の精神だ」
「ば、『倍返し』っすか……」
「倍返しっす」
超慈の呟きに姫乃はおどけた様子で応える。亜門が首を傾げる。
「しかし……本当に生徒会が追撃をしてこなかったですね。お陰で助かりましたが」
「部長が種を蒔いた成果だそうです」
「種?」
四季の発言に亜門は首を捻る。姫乃は静かに呟く。
「……まあ、それは後になってから分かるだろう」
「また秘密ですか……」
「それはいいとして、部長。倍返しというのはつまり?」
爛漫が悪戯っぽい笑みを浮かべて問う。姫乃が微笑む。
「察しが良いな。そう……」
姫乃が話を始める。偶然にも、同じ時間帯、生徒会室で生徒会のメンバーが会議を行っていた。副会長の海藤が会長の織田桐に告げる。
「会長、エウゼビオさんがお戻りになりました」
「ハンラングンドモハソウトウシタ……!」
窓の外を眺めていた織田桐が椅子を回転させ、エウゼビオに向き合って声をかける。
「ご苦労だった、エウジーニョ。少し休め」
「ハイ……」
エウゼビオは巨体を自らの席にドカッと座らせる。海藤が口を開く。
「例の連中が暴れ回ってくれたお陰で、学内の秩序に乱れが生じました……小規模の合魂勢力が力を合わせ、こちらに対し反旗を掲げてくるとは……全く恐れ多いことを」
「加えて、瓦解した有力勢力の残党の一掃にも手こずりました」
駒井が首を抑えながら、生徒会室に入ってくる。海藤が冷たい視線を向けて問う。
「喜さん……一掃は言葉の綾のようなものです。まさか全員使い物に出来なくしたわけではないでしょうね?」
「ああ、その辺についてはご心配なく。しっかりと会長への忠誠を誓わせました」
駒井が皆まで言うなという風に手を左右に振りながら、自身の席につく。
「それなら良いですわ。どうも貴女はやり過ぎる傾向がありますので」
「余計な心配です。シワが増えますよ?」
「なっ⁉」
「やめろ」
駒井の言葉に海藤が立ち上がろうとするが、織田桐が制す。海藤が座り直す。
「し、失礼いたしました」
「反乱軍の組織も、残党の扇動も、あの女が裏で動いていやがるな?」
「恐らくは……」
「ちっ、まったく忌々しい奴だぜ。おかげでこちらはその対応に追われて、連中をまんまと一週間も野放しにしちまった……」
織田桐が苦々しく呟く。
「ですが、こちらの体勢も整いました。思ったよりは時間がかかりましたが……」
海藤は向かいに座る駒井にまたも冷ややかな視線を向ける。駒井が声を上げる。
「人遣いが荒いんだから! そう思うなら少しは手伝いなさいよ!」
「だから無駄な言い争いはやめろ……」
「すみません……」
駒井が頭を下げる。
「とにかく、いよいよ連中の制圧に乗り出すわけですね」
「まあ、そう慌てるな……来たか、入れ」
ノック音の後、織田桐の許可を得て、小森がスタスタと生徒会室に入ってくる。
「皆様、階段下にお集まりです」
「分かった」
織田桐は席を立ち、生徒会室のドアを勢いよく開ける。目の前にある階段下には6人の男女が跪いていた。織田桐が小森に目配せする。小森が声をかける。
「一同、面をお上げ下さい」
「……」
「合魂倶楽部代表、喜多川益荒男……」
「は、はい!」
「合魂同好会会長、茂庭永久……」
「はい……」
「合魂団団長、志波田睦子……」
「はい!」
「合魂サークル代表、水上日輪……」
「は、ははっ!」
「同副代表、深田奈々……」
「はっ!」
「合魂愛好会会長、夜明永遠……」
「はっ……」
「……てめえらの尻ぬぐいをこの俺様がさせられてんだぞ!」
織田桐の怒号が建物に響く。6人は再び頭を下げる。水上が大きな声を上げる。
「も、申しわけございません!」
「俺様が別の目的に専念出来る為にお前らにはそれぞれ一大勢力を任せていたんだ……」
「そ、それは承知しているつもりでございます!」
「それがなんだ? 部員が10人ぽっちの弱小勢力に良いようにやられやがって!」
「ま、まったく不甲斐ない限りでございます!」
「……とはいえ俺も鬼じゃねえ」
「え?」
織田桐の言葉に水上が僅かに頭を上げる。
「これから攻め込んでくるであろう、灰冠姫乃率いる『合魂部』を迎撃し、あの連中10人の内2人を俺様のもとへ連れてこい」
「2人ですか?」
「残りの8人はどうすれば?」
茂庭が首を傾げ、志波田が尋ねる。織田桐が答える。
「面倒だから魂力を吸い取ってしまって構わねえ。お前らなら容易いだろう?」
「も、もちろんです!」
「か、必ずや! ねえ、アンタ!」
「お、おう……」
織田桐の問いに喜多川が答え、深田が隣の水上の尻を叩く。夜明が問う。
「……2人の内、1人は灰冠姫乃ですね」
「ああ、そうだ」
「ではもう1人は?」
「……こいつだ!」
織田桐は床に写真を落とし、刀を思い切り突きたてる。そこには眼鏡のもじゃもじゃ頭が映っている。
「!」
「優月超慈! こいつは俺様の前に必ず引き摺りだしてこい!」
「はっ‼」
「はっくしょん! ……誰か俺の噂をしてやがんな?」
「良くない噂だと思うけどね♪」
超慈の隣でクリスティーナが笑う。2人は生徒会室のある建物の前に立っている。
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