第9話(4)バディ組んでみた

「……なんやかんやで一週間経ちましたね」


「ああ」


 四季の言葉に姫乃が返事する。


「今日は最終日ですが……そろそろ何を見極めたか教えてもらえますか?」


「そうだな……全員、集まってくれ」


 姫乃が声をかけ、各々訓練中だった合魂部の皆が姫乃のもとに集まる。


「……集合しました」


「うむ……」


「では、お話頂けますか? 見極めたものを……」


「ああ……先週も言ったが、今後対する相手は1人で戦うのは厳しい。その後の生徒会との戦闘で嫌でも感じたと思うが……」


「……」


「よって、バディを組むことにする」


「なるほど、ということは……」


 四季の反応に姫乃は頷く。


「ああ、この一週間の特別トレーニングを通して、各人のそれぞれの相性を見ていた」


「ふむ……」


「10人いるからな、5組に分ける。状況はその都度変化するだろうからなんとも言えないところもあるが、基本は今から発表するバディで行動してもらおうと思っている。いいな?」


「はい!」


 姫乃の問いかけに全員が揃って返事する。姫乃は満足気に頷く。


「良い返事だ……まずは一組目だが、釘井ステラと礼沢亜門!」


「は、はい!」


「……はい」


 ステラと亜門が前に進み出る。四季がふむふむと頷く。


「2人とも前の方に出て戦うことも、後方で支援に回ることも可能ですね」


「そうだ。まあ、その辺のバランス取りは貴様らに任せるが……出来るな?」


「ま、まあ、出来ると思いますけど……」


「……自分の魂旋刀と先輩の糸魂蒻ならば、ある程度距離を取って戦うことも出来ますね」


「おおう……早速の冷静な分析、さすが……」


 ステラが感心したように亜門を見つめる。姫乃が釘をさす。


「礼沢、戦況とは必ず思う様に進むものではないぞ?」


「ご指導頂いたように、接近戦に関しても様々にシミュレーションを行っています」


「それは結構」


 亜門の答えに姫乃が笑みを浮かべて頷く。ステラが右手の親指をグッと立てる。


「とにかく決まった以上はよろしくね、礼沢っち!」


「礼沢で良いですよ……」


「さて、次のバディだが……竹村四季と外國仁!」


「……はい」


「は、はい!」


 四季と仁がそれぞれ前に進み出る。姫乃が語りかける。


「四季は飛び道具のようなものだ。守るというよりは、外國、貴様が相手のリズムをかき回して、四季から注意を逸らすような戦い方の方が良いだろう」


「は、はあ……」


「私もそれがベストとまでは言わなくてもベターだと思います」


 四季が姫乃の案に頷く。仁が首を傾げる。


「注意を逸らすですか……結構難しいですね」


「何でもいいぞ、魂棒をくるくる回すとか……」


「宙に投げるとか……」


「口に含むとか……」


「両耳にぶら下げるとか……」


「制服の胸ポケットにさりげなく差し込んでおくとか……」


「ちょ、ちょっと待って下さい、俺のことなんだと思っているんですか、お2人とも!」


「ほんの冗談だ」


「軽いジョークです」


「はあ……まあ、とにかく考えてみます」


「外國君、よろしくお願いします」


「は、はい、よろしくお願いします!」


 四季と仁が握手をかわす。


「次の組み合わせだが……桜花爛漫と鬼龍瑠衣!」


「は~い」


「はい!」


「爛漫、貴様に戦い方は任せるが、鬼龍の機動力を活かさない手はないと思うぞ?」


「それは同感です」


 姫乃の問いに爛漫は頷く。四季が眼鏡の縁を触りながら呟く。


「思った以上に攻撃特化の組み合わせになりそうですね」


「ふふっ、戦い方のイメージが結構湧いてくるよ~」


 爛漫は不敵な笑みを浮かべる。姫乃も笑う。


「それはなんとも頼もしい限りだな」


「よろしくね~鬼龍ちゃん」


「ええ、よろしくお願いしますでござる!」


 瑠衣が頭を下げる。


「続いてだが……私、灰冠姫乃と朝日燦太郎!」


「お、おう!」


 燦太郎が前に勢いよく進み出る。四季が小首を傾げる。


「これは意外ですね……『私にバディなど不要だ、単独行動を取らせてもらう』とおっしゃるかと思っていましたが……」


「そんなわけないだろう、どれだけ協調性が無い人間だと思っているんだ?」


「皆さんもそう思いませんでした?」


「……」


 四季の問いかけに全員が頷く。姫乃が戸惑う。


「ぜ、全員一致だと⁉」


「良くも悪くもエゴイズムが強い方だと思っていましたので……」


「と、とにかく! 燦太郎! お前は余計なことは何も考えずに突っ走れ! フォローやアシストは私がする!」


「おう!」


 姫乃の呼びかけに燦太郎が力強く応える。


「骨は拾ってやる!」


「おうよ!」


「い、いや、それはダメでしょう⁉」


「脳筋バディじゃないか? ……不安だな」


 姫乃と燦太郎のやり取りに仁は思わず突っ込み、亜門が目を細める。


「最後の組み合わせだが……中運天クリスティーナと優月超慈!」


「はい♪」


「は、はい!」


 クリスティーナと超慈が前に進み出る。姫乃が語りかける。


「優月、クリスのダンスはバフもデバフも期待出来る。そのあたりを上手く使い分けろと言いたいところだが……貴様はあんまり小難しいことは考えんで良い。考えるだけ無駄だ」


「ひ、酷くないっすか⁉」


 超慈の反応を無視して、姫乃がクリスに話しかける。


「クリス、細かい判断は貴様に任せる」


「OKで~す♪」


 姫乃の言葉にクリスティーナは笑顔で頷く。四季が頷きながら呟く。


「クリスのバフで、超慈君の火事場の馬鹿力にも一層磨きがかかるかもしれませんね……どうしてなかなか、悪くない組み合わせです」


「馬鹿ってはっきり言わないで下さいよ!」


「組み合わせは決まったな……続いて作戦会議に移る!」


 姫乃は高らかに声を上げる。

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